未来を試す

第0回 「みらいファッションラボ」イベントレポート

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設楽 洋さん(株式会社ビームス 代表取締役社長)
市川 渚さん(ファッションコンサルタント)
北川 竜也さん(株式会社三越伊勢丹ホールディングス 情報戦略本部 IT戦略部 IT戦略担当長)
林 信行さん(ITジャーナリスト兼コンサルタント・ifs未来研究所 外部研究員)
川島 蓉子(ifs未来研究所 所長)

2016年9月23日(金)、三越伊勢丹ホールディングスとifs未来研究所が一緒に立ち上げた「みらいファッションラボ」の第0回イベントを開催しました。
このラボのテーマは、「デジタルは、ファッションを幸福にできるか。」。「ファッションって、恋」を合言葉に、様々な業界の方が意見を交わし、カタチ化するきっかけとなる企画を行ないます。
 
初回となる今回、ゲストにお迎えしたのは、株式会社ビームス 代表取締役 設楽洋さんと、ファッションコンサルタントの市川渚さん。
それぞれの立ち位置での「ファッション×デジタル」への関わり方や想い、リアル店舗のあり方についてお話頂きました。

★ ★ ★
 
●「こう来たか!」というきっかけの作り方
 
川島蓉子(以下、川島): ifs未来研究所 所長の川島蓉子です。いろんな分野のことが混ざって、面白そうなことがたくさん起きてくるような場所を作りたいという想いで、この未来研を立ち上げて3年が経ちました。林信行さん、通称ノビさんには、その外部研究員として参加してもらっています。
 
当初からノビさんとは、「デジタルとファッションで繋がったらもっと面白くなるのに、なかなか繋がらないね。」という話をしていました。そこで、考え方だけではなく、売り場なり商品なり、カタチに繋がるところと一緒に取り組みたいと、三越伊勢丹ホールディングスの北川竜也さんに声を掛け、伊勢丹と未来研がチームを組んだのが、「みらいファッションラボ」です。
 
未来研が、2012年から伊勢丹と進めてきた「みらいの夏ギフト」というイベントがあります。今年、1階の「ザ・ステージ」は、「みらいの魔法を贈ろう」をテーマに掲げ、ファッション✕デジタルについて、ノビさんがキュレーションを行いました。
 
ビームスの設楽社長にも見ていただいたのですが、ノビさんの企画を「面白いね」と言ってくれて。「じゃあ、みらいファッションラボのイベントに来てくれませんか?」と、お願いしちゃったのです。
 
設楽洋(以下、設楽): アナログ代表、デジタルを全くわからない代表として参りました、株式会社ビームス 代表取締役社長の設楽洋です。
でも逆に、わからない人の視点が必要だというところもあるのではと思っています。僕は基本的にデジタルに弱いのですが、ファッションと恋に関してはプロ中のプロなので、そのお話もさせていただこうかと(笑)。
 
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今、若い人たちが、ファッションよりもゲームやアプリに興味を持っているので、ファッションの勢いが弱くなりつつあるのではないでしょうか。そこでBEAMSでも、様々な新しい技術を取り入れたトライアルに取り組んでいます。例えば、モノの売り方であったり、お客様をリアル店舗に呼ぶ方法であったり、モノ作りであったり、素材であったり。
 
僕は今65歳ですが、自分が生まれた1951年を中心に、1930年代から1970年代までの20年間分のVOGUEやHarper’s BAZAARをコレクションしているんです。それらを見ると、ファッションやデザイン、素材、タイポグラフィや建築など、全部出尽くした感がある。
 
ファッションは、その繰り返しの中でやってきたけれど、今までにはなかったような、物凄く新しいモノが、デジタルとファッションの融合によって生まれるのではないかと思っています。
 
川島さんからこのラボの話を聞いたとき、「デジタルの要素に、もっとファッション性を入れないとカッコ悪いよね。」と、アナログ派の素朴な思いとして感じたのです。逆に、ファッションやデザインにデジタルの要素を入れる、という視点もあると思います。
服は、みんなもう充分持っている。「こう来たか!」というアナザーアングルがないといけないと思うんです。
 
ファッションには、ワクワクドキドキ、ハッピーな要素の部分がありつつ、コミュニケーションのツールだと思っています。そこに、デジタルとの関係が生まれることで、新しいコミュニケーションのツールになると思うのです。
 
ネットやアプリ、SNSなど、デジタル上の繋がりに、もう少しアナログの要素を加えることがファッションだと思うので、そういうコミュニケーションのツールにハッピーの要素が加わるといいなと思っています。
 
林信行(以下、林): 市川さんはまさにファッション業界の人なんだけれども、デジタルの最前線、ファッション×デジタルのど真ん中にいらっしゃるわけですよね。
 
市川渚(以下、市川): 私は、元々ファッション業界の人間で、デザインを勉強した後、ラグジュアリー系のブランドでPRを担当していました。その後1社挟んで、3年前からフリーランスで活動しています。
 
最近よく耳にする、デジタルのコミュニケーションの部分やウェブに関しては、10代の頃から興味があって、自分でサイトを作ったりしていました。
私が社会人として培ったファッション業界の経験と知識と、ずっと好きだったウェブやデジタル、テクノロジーが、数年前からどんどん近付いて来ています。
 
私は、その両方のプロトコルがわかる人材として、IT企業やファッションブランド、ファッション関連企業をクライアントにコンサルティングをしたり、アドバイザーとしてお仕事をさせていただいています。
 
そうした需要が出来てきたこと自体に、私としてはびっくり。ファッションとデジタルの両方を仲良く繋げる役割を今後もやっていければいいなと思っていたので、「みらいファッションラボ」の今後が楽しみと思っています。
 
北川竜也(以下、北川): 私が現在、IT戦略部に席を置いていることで、「新しいことをたくさんやる人」というイメージを持たれることが多いのですが、決してそうではなく、私がやりたいのは原点回帰なんです。
 
百貨店が本来持っていた、お客様との深い関係を築くことや、ファッションの素晴らしさをお客さまに伝えるツールとして、デジタルを使っていくのが私の仕事。
 
今朝も、シリコンバレーとサンフランシスコ出張から帰国したばかりです。
新しい技術を探すためにシリコンバレーに行っているのではなく、「我々が考えていることを具現化するために最適なツールは何なのか」、「どうすれば、会社にとってコストがかからずに済むのか」ということを考えていく。
 
僕の仕事の9割は、百貨店がこれから100年どういう価値をお客さまに提案していくのかを考えること、残りの1割がどのツールを使って、価値を伝えるかを考えることです。
 
シリコンバレーの中心地、スタンフォード大学から歩いて行けるくらいのところに、「b8ta(ベータ)」という未来型店舗があります。お店にはいわゆるIoT商材が並んでいて、天井に設置されたカメラが、店内にいる人の人数や、どこでどのくらい滞留しているのかを計算し、それをアルゴリズム化して、スペースごとに値段を付けているんです。
 
例えば、ここは人が長く滞留するから1,000ドル、こちらはあまり人が来ないから500ドル、と値付けがされているといった具合。スペースをオンライン上で申込み、勝ち取った人がそこに商品を置くことができるという仕組みです。
 
つまり彼らは、「場の価値」ということに、とても真摯なわけです。感情ではなく、テクノロジーを活用し、それらの価値を計算しています。非常によくできていて、今400社もが待ちの状態だそうです。
 
でも、このお店ではモノを1つも売っていない。「b8ta」に来たお客様は、いざ買いたいと思ったら、横にあるタブレットから、その商品を取り扱う会社のEコマースサイトに行って購入するという仕組みです。
 
「b8ta」では、なんと店員さんがモノを一切勧めてきません。店頭に立っているのは、商品の会社の人ではなく、「b8ta」のIoTオタクの人なんです。だから、モノが売れてもマージンが入らず、売る責任も無い。自分が好きなモノを好きなように説明するので、お客様は負担が全く無い。つまり、ダメなものは淘汰されていく、いいモノは残っていくという、極めて合理的なお店です。
 
これは顧客サイドから見ても、物凄く合理的で、既存のビジネルモデルで頑張っていた店舗はどうなるんだろうと考えてしまう。こうしたビジネスモデルを見ていると、ファッションのあり方や、勧め方も変わってくるなと感じました。
 
全て顧客のために考え直して、顧客のためにだけビジネスを作って、今までのビジネルモデルではない方法で儲けちゃう。広い意味でいうと、お客様にとってどういうモノが必要なのか、ということに対して貪欲な人たち。そこと、我々百貨店はどう戦っていくのかを考えていかなくてはならないと思います。
 
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もう1つ例を挙げてお話します。「Flickfit(フリックフィット)」という、自分の足のサイズと、靴の内側のサイズを測ることで、オンライン上でバーチャル試着ができるビジネスを手掛ける日本の会社があります。
 
従来であれば、「Flickfit」と伊勢丹が提携し、伊勢丹が提供するアプリの中でのみ使ってもらうという考えが普通だったと思うのですが、そんなことをやっていてはダメなんです。
 
なぜなら、お客さまからすれば、BEAMSでも伊勢丹でもどこでも、そのサイズデータを使えた方がいいからです。それがインターネットの原理原則であり、インターネットの本来の姿です。シリコンバレーでは、そうした思考でビジネスを手掛ける人がたくさんいます。
 
つまり、テクノロジーはそのくらいオープンなもの。新しいテクノロジーが開発されたら、「一緒に使いましょう!」と、どんどん開いていくことで、お客さまの満足度も上がっていくのではないでしょうか。
 
林: 日本のテクノロジー業界は、まさにそれで失敗した過去があり、僕もオープンに繋がっていくといいと思っています。
 
例えば、ブルーレイと対抗馬のHD DVDというのが、わずか0.5mmほどの厚みの違いで合意ができずずっと規格争いをつづけていました。そこにAppleがやってきて、「映画をみるのに、そもそもディスクはいらないのではないか」とオンラインで映画の販売を開始してしまった。
 
日本は、業界の中でもコンペティションが非常に強くありますね。
 
川島: そういう横に繋がるオープンネスが、伊勢丹にはあるということですか?
 
北川: いや、まだまだです。これから取り組んでいきます。
  

●キワを越えた仕掛けを作る
 
川島: 設楽さんはそのあたり、どうお考えですか?
 
設楽: 今回、BEAMS JAPANを立ち上げ、TEAM JAPANと称した応援団に様々な業界の人に入ってもらい、三越伊勢丹ホールディングス 代表取締役の大西社長にもメンバーになって頂きました。
 
同じ新宿の地区にいる百貨店と専門店という小売販売が結び付く画期的なカタチですが、今までだったらちょっと考えられないことです。
 
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業界自身が、競合とかなんとかいうよりも、他のジャンルともそうだし、同業の中での結び付きも、全く異なる質に変化してきたと思います。新しい時代の考え方というのは、そこと協業することに意味があるのではなく、どう協業していくかということに意味があると思っています。
 
また、先ほど北川さんから「b8ta」のお話がありましたが、私も全く店で売らない、試着だけの店を考えたことがあります。なぜかと言うと、ファッションに興味を持つ若い人たちが減ってきて、「食育」ならぬ「服育」をしなくてはならないと考えているからです。
 
例えば、店頭には「販売員」ではなく、「スタイリングアドバイザー」がいて、まずはいろいろな服に袖を通してもらう。複数の人数で試着ができたり、普段買えないようなモノを着ることで、InstagramなどのSNSに写真を掲載してもらう。モノと情報に溢れた現代は、プッシュ型の情報提供が必要と思うのです。
2013年に楽天と取り組んだ実験も、そうした考えがきっかけです。
 
楽天の三木谷社長から、BEAMSの楽天出店のお誘いを頂いたのですが、オンラインでの販売は、AmazonもZOZOTOWNも自社サイトも既にやっているから、普通に楽天に出店してもつまらないと思ったんです。
 
それで、楽天は約1億3,000万点の商品を取り扱っていると聞いて、「ウチは元々セレクトショップなので、その中からBEAMSに商品を選ばせてください」と提案しました。
 
そこで立ち上がったのが、「Rakuten meets BEAMSハッピー隊」。楽天×BEAMSというカタチで、「BEAMSハッピー隊」と称したバイヤーやショップスタッフがキュレーションしました。
 
これからは、そういうキワを越えたことをやって行く時代。特にデジタルが入ると、新しいビジネスモデルが売り方でも出て来るんだろうなと思います。
 
林: 市川さんは、ファッション業界の壁を越えた融合が起きていると感じますか?
 
市川: 融合したい人たちはたくさんいると思いますが、融合できているかと言ったら多分まだまだ。でも、それは日本だけの話ではないようです。
 
先日、ニューヨークでファッション系スタートアップを立ち上げて活躍されている方に「ニューヨークって、その辺りは進んでいるんじゃないですか?」と聞いたら、「ニューヨークでも、未だに隔たりがある」と言っていました。繋げてあげる役割を担う人や、お互い分かり合えるような仕組みができないと難しそうだなと感じています。
 
また、単純に私は女性でファッションが好きという目線から見て、デジタルと融合したファッションと、そうではないファッションを並べてみて、前者を選ぶケースがほとんどないって思うんです。
 
単純にファッション商品として、「あ、これいいね!」と言えるようなモノが出て来ない限り、まだまだだな、という感じはしています。
 
林: BEAMSさんもそういったところを超えようとして、取り組んでいらっしゃるんですか?
 
設楽: デザインも品質も良いブランドは、だんだんとファッションフェチの人たちだけのものになっています。そうではない人に、ちょっとファッションに興味を持ってもらったり、新しい気付きを与えるには、クオリティの良さだけでなく、「こう来たか!」というきっかけ作りが必要だと思います。
 
林: 極めて本質的な話で、テクノロジーとファッションがなかなか融合しない1つの大きな理由はそこにあると僕は思っています。ファッションに強い方々や、興味のある方々にテクノロジーをいじくってもらわないと融合していかない。
 
例えば、iPhoneもポンと出しておくだけでは、インターネットができるただの携帯電話に過ぎないけれど、世界中の人がいじくりまわして、何十万、何百万というアプリを作って、その中で使われるものが淘汰されて、初めて今のデジタル化時代ができあがっているのと同じことのような気がします。
 
ファッションの方々が、「これ触ってみたい!」とか、「これで何か作ってもらいたい!」と思えるようにしていかなければならないと思います。
 
川島: そうしたことをする人たちがもっと増えていくことも大事。いじくりたくても、どれが一番自分にフィットしているかとか、どんなことができるのかよく分からないので。そういう役割を担っている方が、まだ少ないのではないでしょうか?
 
市川: あまりいないんじゃないかと思います。私は今32歳ですが、20代前半の子たちは、もはや「デジタルとファッションを繋ごうよ」とかいう話ではないんですよ。デジタルは生活の中に普通にあるモノなので、それは当たり前のこと。
 
それこそ、服作りに3Dプリンターを応用しましょうとなったときに、「3Dプリンターで作った服なんです!」ということはアピールポイントにならないんです。当たり前に、布があります、革があります、ということと同じで、3Dプリンターというものが当たり前にあって、それを使ってみましたというだけの話ですから。これからは、若い世代から、そういう服がどんどん出てくるだろうと思っています。
 
川島: つまり、過渡期としては必ずやそういう時代が来るから、暫定的な繋ぎをどうするかということなんですね?
 
市川: そういう気がしますね。
 
川島: その意識の乖離を、組織の中でも業界の中でもどう埋めていくかという感じですね。
 
市川: そう思います。私のような仕事は、10年くらい経ったらもう無いと思っています。
 
川島: この業界が良くなるために、その10年をやっていただけると(笑)。
  

●「その会社が最も大事にすること」を具現化するテクノロジー
 
北川: 今までの話はお客様側の話だけれど、一方で僕が強く感じているのは、「システムはこれまでにないレベルで会社の未来を大きく左右する存在になってしまった」ということ。
 
商品管理システムやCRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)は、1つ導入するだけで莫大なコストがかかるんです。また入れ替えようと思っても、そこにまたコストと時間がかかる。
 
我々の会社(三越伊勢丹ホールディングス)ほどの規模があっても、営業利益は売り上げの約3%の状態なので、システムで大きな失敗をしてしまうと本当に会社がおかしくなってしまうんですね。
 
テクノロジーサイドにいる人間は、店頭の皆さんが稼いでくれたお金を、どれだけ効率的に皆さんに返していけるのかをきちんと考えて組み合わせ、最適・最小で作っていくのが仕事で、ファッションというより経営的な文脈になっちゃうんですけれど。
 
設楽: 間違えないようにするには、どうやって判断すればいいんですか? いつも悩むんですよ。
 
北川: まだ答えは無いと思っています。僕が、最近つくづく思っているのは、「アナログの皆さんの世界にあるものを、徹底的に出すこと」。
つまり、店頭にいる方の「あれをやりたい」「これをやりたい」という希望を、徹底的に議論しようと思っています。そしてまずは、上位にある3つだけを完璧に実現するシステムを作ろうと考えています。
 
川島: その3つはどうやって選ぶんですか?
 
北川: それはたぶん、BEAMSと伊勢丹では違うと思います。要するに「その会社が最も大事にすること」。それを具現化するだけで、他のことは、後から付いてくると思うんです。
 
林: 本来、テクノロジーって、裏方であるべきですよね? 一番やらなくてはいけない本質をサポートする役割。コストを削減したり、効率を上げたりするのがテクノロジーのあり方なのに、いつの間にかテクノロジーが出しゃばりつつありますよね。
 
川島: いや、もっと出しゃばっていいのかもしれない、と今日みなさんのお話を聞いて思っていて。どっちが本質とか、もうあまりなくてもいい時代になっているのかな、という気がしました。
 
でも大事なのは、設楽さんの話にあった「こう来たか!」というきっかけ作り。それは、どんな時代でも、世代が変わろうが、絶対忘れちゃいけないこと。私は最近、ファッション業界がつまんなくなっているような気がするんです。どうでしょう?
 
市川: それはやっぱり、服が売れない時代になって来ているから、売れるものを作らなくてはいけないというのも大きい気がしています。それこそシステムの部分で何かを効率化して、全体の利益率を上げるなりして、面白いものを作れるようになる仕組みを作れるようになるといいのかな。
 
北川: その意味では、最初にお話した「b8ta」というお店が面白いのは、「店員さんが売っていない」というところなんです。「リアル世界のGoogleアドセンス」と言われていますが、それだけでは面白くない。ポイントは店員さんが、IoTが好きなオタクだということ。
 
「この商品、どうなんですか?」「面白いんですか?」と聞くと、「ここが面白いんだよ」と売りつけようとはせずに教えてくれる。こうしたコミュニティが、もしかしたらこれから、ファッションでもできるんじゃないかな、と思ったんです。
 
設楽: 純粋にファッションが好きな人、ファッションフェチ、それから、フィギュアが好きな人、ゲームが好きな人…と、ハッピーの選択肢がとても多くなったんですよ。
 
そうすると、ファッションフェチの人たちにとっては、今までの接客やサービスが有効なことになるでしょうし、フェチ以外の人にとっては、何らかのフックが必要になってくると思いますね。
 
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例えば、「ファッションが好きな人」というのは、BEAMSを支えてくれている上顧客のみなさんですが、その次の「一般のマスのミーハー」は、今、他のジャンルに取られつつあります。
 
昔は、自分も含めて、ミーハーな人たちは、人気ブランドの新しい服やスニーカーをいち早く手に入れて、自分で楽しむというより、人に自慢したいという想いを持っていました。それが、人を動かすとても大切な要素だった。
 
それが、今はほとんど、無料か安いものに取って代わっちゃったんです。ミーハーで早いもの好きな人たちが、ファッションではない、全く別のジャンルに取られている。そうだとすると、そういう人たちを動かす何かフックがなければ、わざわざ店には来ないし、Eコマースにも辿り着かない。
 
こういう時代にあって、どうやってBEAMSが存在感を示すか、というのは大変なことです。それがポイントだと思いますね。
 
北川: そういう方々が求めている情報を、どれだけ我々が提供できるかを考えていて、僕は弊社のスタイリスト(販売員)たちと真剣に話してみたいと思っています。先ほどお話した「b8ta」を例に挙げて、「これからの販売員の役割って何なんだ?」と。それをきちんと提案していくことが、BEAMSなり伊勢丹なり、ファッションの先端を走っているという自負を持っている人たちの責務である気がしているからです。
 
スタイリストたちの「こういう接客をしたい」「お客様とこういう関係性を作りたい」という想いを聞いた上で、私のような役割を担う人が、「だったら、こういうテクノロジーを活用するといい」と提案することが、本来の筋のような気がします。
  
●「リアル店舗が果たす役割
 
川島: みなさんにちょっと聞いてみたいことがあります。買い物は、どんどんネットに移行していくとも言われていますが、その中でリアル店舗ってどうなっていくんでしょう。リアルなお店が果たす役割は何だと思いますか?
 
市川: 現状で私は、いろんな意味での「触覚」かなと思います。それは単純に着るということもそうだし、肌触りというのもあるし、あとは、人と関わり合うというのも触覚に通じるのかなと思います。
 
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川島: 人と関わりを持つことが触覚に通じる…。哲学的ですね。
 
市川: 人とのコミュニケーションって、画面を通じてとリアルとでは、明らかに違うものじゃないですか。やはりリアルには温度感がある。それは肌で感じられるものです。
 
設楽: 市川さんは、ネットで買うことが多いんですか?
 
市川: ネットですね。心地良い触角を感じるお店があまりないので。
 
設楽: ヤバイですね(笑)。
 
市川: 海外のEコマースサイトで購入することも多いです。あとは、作り手の熱量を感じられるので、展示会でオーダーすることもあります。それは、リアル店舗にも通じると思うけれど、やはり熱量を感じことができると、説得力が増すなぁと。
 
川島: イジワルな質問ですが、お店のどこかでもそういうことをしてくれたら、そのお店には行きますか?
 
市川: とりあえず、行ってみるかもしれないですね。そこでどういう体験ができるのか、どんな触覚を感じることができるのか。
 
林: デジタルになればなるほど、アナログの部分が大事になってくる。「b8ta」にしても、やっぱりアナログなんですよね。
 
設楽: おそらく「スタッフ(販売員)が店でやっているお客様とのおしゃべり」以外の全てのサービスは、Eコマースでもできる時代になっちゃうと思いますね。
 
その商品の歴史だとか背景だとか、デザイナーやコーディネイト、試着、返品など、ほとんどのことが、Eコマースでできる時代。じゃあ、リアルはどうするかというと、体温が伝わったり、あるいはこの仲間に入りたいと思ってもらうこと。
 
BEAMSはスーパーブランドでもなく、ファストでもない、いわば中間。でも、今までになかった「コミュニティブランド」になりたいと思っているんです。
 
BEAMSは、ブランド名でも会社名でも店名でもなくて、「なんかおもしろいことやりそうな集団」のコミュニティの名前。その仲間に入りたい、スタッフになりたい、ブレーンになりたいと思ってくれる人たちと一緒に遊ぶ仲間になりたいんです、いろんな形で。
 
だから、”外遊び”にまつわる様々な情報を発信するコンテンツ「HAPPY OUTSIDE BEAMS」など、様々な人たちが集うことのできる瞬間を一生懸命作っています。そういうもののコミュニケーションツールがファッションだよ、ということを伝えるコミュニティブランドになっていかないと、リアルはダメになるだろうと思っています。
 
お店が「コミュニティをどんどん具現化していく場」になっていくと、これからの店舗のあり方のひとつになるかもしれないですね。
 

設楽 洋さんプロフィール(写真左)
1951年 東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒、1975年 株式会社電通入社。プロモーションディレクター・イベントプロデューサーとして数々のヒットを飛ばす。
1976年 「ビームス」設立に参加。1983年 電通退社。自らをプロデューサーと位置付け、その独自のコンセプト作りによりファッションだけでなく、あらゆるジャンルのムーブメントを起こす仕掛人。セレクトショップ、コラボレーションの先鞭をつけた。個性の強いビームス軍団の舵取り役。
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1997年  ニューヨーク ADC 賞  金賞    受賞
2004年 デザイン・エクセレント・カンパニー賞 受賞
 
BEAMSオフィシャルホームページ
設楽 洋twitter

 
市川 渚さんプロフィール(写真右)
ファッションデザインを学んだ後、海外ラグジュアリーブランドのPR、有名クリエイティブエージェンシーのコミュニケーションマネージャーを経て、2013年に独立。ファッション、ラグジュアリー、IT関連企業を主なクライアントに、ファッションとテクノロジー、デジタルを繋ぐ、フリーランスのファッション・コンサルタントとして活動。他にも、Digital Technology x Fashionに特化した日本初のウェブメディア「DiFa(ディーファ)」の立ち上げや、京都精華大学非常勤講師、コラム執筆、ファッション関連サービス/ウェブサイト/キャンペーンのクリエイティブディレクション、セミナー講師など活躍は多岐にわたる。

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