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【11月2日 「atelier shimura」トークショー】第2回 みんなにウェルカムされる、川の流れのある場所で。

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「atelier shimura」トークショー
●登壇者:株式会社ATELIER SHIMURA 代表取締役 志村昌司さん
株式会社サン・アド アートディレクター 葛西薫さん
株式会社ほぼ日 代表取締役社長 糸井重里さん
ifs未来研究所 所長 川島蓉子
●開催日:2016年11月2日(水)
 
第1回記事はこちらから

 
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第2回 みんなにウェルカムされる、川の流れのある場所で。
 
●どんどん繋がる、アトリエシムラとのご縁。
 
川島蓉子(以下、川島): ifs未来研究所 所長の川島蓉子です。今日はそれぞれが不思議なご縁でここに集まっていますので、そのお話から。
 
糸井重里(以下、糸井): 「ほぼ日刊イトイ新聞」の糸井重里です。僕は活動の範囲が狭いので、自分の散歩できる範囲の人たちと付き合っています。今日も、すぐそばに事務所があるので歩いてきたんです。
僕が月に何日か過ごす家が京都にあって、ご飯を食べに行った先のおかみさんが志村さんを紹介してくれたことが、出会いのきっかけでした。
 
川島: 何年くらい前ですか?
 
糸井: アルスシムラができる直前だから4~5年前だと思います。志村ふくみさんは教科書にも出ている人なので、もっと仰ぎ見ようと思っていたら、まあ、小柄な方で。洋子さんもいらっしゃって、「こんにちは」と。
 
僕は、実はそんなに詳しくなかったんだけど、着物が好きなカミさんが一緒だったので、ものすごく喜んでいるのがわかって。すぐにどんな人なのか知りたくなりました。
そこで当時、京都の岡崎でやっていた展覧会に行きました。着物と、ふくみさんが書いた文章と、洋子さんが書いた文章があったんですが、両方良かったんですよ。
 
それで、ご挨拶したときはただ仰ぎ見ただけだったけれど、面白いなあ、と思って…。着物を見てから、やっぱり心に響いた。それから、ご近所付き合いが続いています。
 
川島: 実際に昌司さんと顔を合わせて出会ったのは?
 
志村昌司(以下、志村): うちにいらっしゃったときに。
 
川島: 葛西さんもご縁があってということですが、どんなことがきっかけだったんですか?
 
葛西薫(以下、葛西): 6~7年前に手掛けた、とらやの栗蒸羊羹の仕事がきっかけです。
 
2_葛西さん
川島: ちょうど今、季節ですね。
 
葛西: それは季節羊羹シリーズといって、竹の皮で包まれている羊羹ではなくて、紙のパッケージに入っているんです。
その紙のパッケージに何らかの柄を印刷するんですが、スタッフの一人から、そこに志村ふくみさんが織った柄か、或は小裂(こぎれ)を合わせたような柄を起用してはどうだろう、という提案があって。
果たして、そんなことは実現できるのか、と思っていたのですが、スタッフ本人が直接ふくみさんに会いに行って、許可を頂いて実現したんです。
 
川島: 栗蒸羊羹のパッケージは、小裂のデザインだったんですか?
 
葛西: 今はデザインが変わりましたが、当時は小裂を複写したデザインだったんです。
それが、ふくみさんと僕との最初の出会いでしたが、去年の春から夏頃、突然糸井さんからメールが入って。
何かと思ったら、実は志村ふくみさん・洋子さんと、ある新しいことをやろうとしているんだけれど、その仕事を手伝ってもらえませんか?という内容だったんです。
 
もちろん、喜んでと思ったんだけれど、ちょっとびっくりして、そのときはどうなるのか全く分からなかった。それが、今回のきっかけなんです。
でも、なぜそのときに僕の名前が出てきたのかは、実はよく分かっていなくて。
 
川島: 葛西さんにラブコールを送ったわけを聞いてみましょうか?
 
志村: 葛西さんのお名前は前から知っていて、スタッフからも葛西さんのデザインは素晴らしいということを聞いていました。
うちが取り扱うのは草木染の商品なので、そういうものに合う有機的なデザインというか、そういったデザイナーの方ってどなたかな?と僕たちも思っていたので。
それが、糸井さんとお話したことで繋がった、ということだったんです。
 
葛西: そこで、糸井さんがすかさず僕にメールを。
 
糸井: 僕は「これはできるぞ」という方向が見えたら早いんです。
志村さんたちが遠慮がちに、「一番憧れていてお願いしたい人は葛西さんなんだけれど…」、とおっしゃっている。
それならば、やっぱり一番好きな人にお願いするべきだと思ったので、僕は葛西さんに暫く会っていなかったけれど、頼むことはできると思って、メールを送りました。
 
志村: いやあ、嬉しかったですねえ。
 
川島: とてもステキなご縁ですね。
 
葛西: 志村さんたちは、僕にとって遠いというか畏れ多い方だったのが、この話を頂いたおかげで、こんなにもすぐ近くで一緒になって活動できたことに、喜びでいっぱいです。
 
川島: ステキなものが世の中にデビューするのに関わられたわけですもんね。
今回、アトリエシムラの全商品展示販売会が、なぜ未来研での開催に至ったかというと、ちょうど1年前に糸井さんとご縁を頂いたことがきっかけです。
糸井さんの話をみなさんに聞いてもらう場を設けたくて、絶対無理だろうなと思いつつ、飛び込みで「おしゃべり会」への登壇をお願いしたんです。そうしたら、なぜかわからないけれど糸井さんが引き受けてくださって。
 
糸井: うちのオフィスと未来研は、近いから(笑)。
 
川島: 近いからって…そんなつまらない理由で寂しいんですけれど(笑)。
昨年10月末に未来研サロンで糸井さんとおしゃべり会をやり、その後しばらくして、ここで志村さんたちと一緒に何かができないだろうか、というお話を頂きました。
 
糸井: そうですね、川島さんは腹蔵なく話の出来る方なので。志村さんたちは東京で何かするとき、いつも場所のことで悩んでいたんだけど、その悩んでいる時間はもったいないなあ、と思って。
 
みんなにウェルカムされる良い場所で、新しいお客さんとも出会えて…という、そういう川の流れのある場所でやった方がいいんじゃないか、と思ったとき、オシャレで素敵な川島蓉子さんという人を思いついたんです。
 
2_糸井さん
川島: そこに、葛西さんも登場して。
 
糸井: 葛西さんは、もともと川島さんを知っていましたからね。
 
葛西: 「人と人とを繋ぐ」ということが川島さんの一番のモットーで、それがまさに繋がるという川島さんのカタチづくりが、今ここにあるんじゃないですかね。
 
川島: 本当にその通りで、夢が叶った感じがします。
 
●学ぶ、作る、教える、出会う「工房」
 
川島: 話を聞いたからには、志村さんのところに行かないわけにはいかないと思い、早速飛んでいって取材させていただいたんです。京都の工房がまた素晴らしいんですよね。それについて、別荘がご近所の糸井さんからちょっとお話を。
 
糸井: ご近所だから、通りすがりに会うことも増えて。
言い方は悪いけれど、昌司さんと僕は、それぞれ中小企業のオヤジなんですよね。例えば昌司さんが、この人数の会社をどうやって回していこうかということを考えているのと、僕が会社をやっているのとでは、やっぱり悩みの種類が似ているんですよ。
 
そんな話をお互いにしていて、それでやっぱり僕が魅力を感じたのが、学校に踏み切った勇気。伝えるということ、着物のある生活、着物を作る生活、着物からの美意識、そういうものを全部、教場という形で伝えるという。それを受け止める気持ちのある人が日本中から来て。そして、その人たちが「これからどういう風に生きていったらいいんだろう」、ということまで考えるから、あの学校は成り立つんですね。
 
ここでお弟子さんだった人たちはどんどん、一人前の織り手になっていく。こうやって文化そのもの全部を育てていくという構想が、ものすごくカッコイイな、何か手伝えることないかな、と思いました。それで、「それはこうしたらいいんじゃない?」と、お尻を叩いただけなんです。
 
アトリエのみなさんがとてもいい感じで。常に学んでいる、作っている、教えている、それから外の人に出会っている。こうやって外のイベントではお弟子さんたちが働いています。織った人たちが説明してくれるのって、お客さんにとってはとてもうれしいことだと思います。
 
川島: 確か去年TOBICHI2で、織った人たちが自分の織った着物を直接お客様に届けるという場を、糸井さんが設けられたんですよね。
 
糸井: そうです。僕は着物の世界はそんなに詳しくなくて、問屋さんのしきたりとかあるんだろうなと思っていたから、なるべく遠慮しようと思っていたんです。
でも、シムラのみなさんが、そうじゃない道も作ってみたいという気持ちを持っていて。そこで、新しい出会いをどんどん作るような動きを手伝いたい、と伝えました。
 
TOBICHI2では、ミナペルホネンの皆川さんが作ってくださった帯と、アルスシムラの着物のお見立て会をしました。京都の真ん中でやる以上に、東京でやった方が新しい出会いがしやすいということもあり、とってもいい場になりました。みなさんが育っていくのを見ながら、付き合っていけるのが楽しいですね。
 
川島: 私も工房に伺ったときに、こぢんまりとした一軒家で糸を染めて、それを繊細に楽しそうに、そして軽やかに織っている姿が、いい光景だなと思いました。私は不勉強でこの素晴らしい世界を知らなくて、こんなに綺麗なものがここから生まれているんだ!とびっくりしました。
 
2_川島蓉子
糸井: やはり現物に触れてから驚いて、改めてすごいな!となっていく人はものすごく多いですね。
 
川島: 不勉強だったのを反省して、もっと取材したいと思ったんです。
葛西さんは、確か先週工房に行かれたばかりでしたよね?
 
葛西: 申し訳ないことになかなか行けないでいたのが、ようやく行くことができたんです。それまでにも、いろんな著書を読んだり、お会いして直接お話を伺っていたことで、頭の中はどんどん膨らんで、ある種のイメージができていたんですよ。
 
工房に伺った日、とても天気が良くて。川島さんもおっしゃられているように、小規模だなあ、と、いい意味で思いました。畑にも案内してもらいましたが、いかにも、ではなく、みんなが見ているような風景のすぐそばから、あのような美しいものが生まれていくというのを目にしました。僕は職人が大好きなので、「働いていることが生きている喜び」みたいな、こんな嬉しい汗水ないんじゃないかな、という印象を受けて。
 
さっき昌司さんが将来の目標をお話されていましたが、そういう発想になっていく気持ちが分かるというか、「いいぞいいぞ」と思いながら聞いていました。素晴らしいですね。
 
糸井:  壮大じゃないんですよね。
 
葛西: そう。本当にそういう風になるんだろうな、と思いましたね。
工房に伺った際、久しぶりに外に出て、志村洋子さんと小さな道を歩いたんですが、遠足みたいで楽しかったですね。ここで記念撮影したんですよとか、糸井さんはここに座ったんですよ、とか聞いていると、まるで子どもみたいな気持ちになった。
 
●アトリエシムラの三原則
 
川島: 山も近いし、緑も豊かだし。
今日は、ここに着物が飾ってあるのとともに、様々な商品が並んでいますが、どういう経緯で作られたんですか?
 
志村: 祖母の代から続く、うちのモノ作りに対する考え方の三原則である、①蚕から紡がれた絹糸、②植物染料、③手仕事・手織りであること。基本的には、そのラインに沿って、モノづくりを進めています。ここに並んでいる着物も全部それに従って、絹糸で、植物染料で、工房の人達がみんなで織ったものなんです。
 
作家 志村ふくみ・志村洋子の都機工房と、アトリエシムラは同じ作り方で作っていますが、今後の大きな課題は、「作家」と「ブランド」の違いです。
デザインの問題になるかと思いますが、日本の文化には「型」という考え方があり、それは普遍的なもの。ふくみと洋子は、そういう中で何十年と織り続けているので、シムラの「伝統」というか、「型」を抽出できるのではないかと思っています。
 
才能ある方が、個々の作家として活躍できる場に加えて、もう少し工芸の裾野を広げて、「型」の中で各々が独自性を発揮することができる場があると、より多くの人が関わることができるのでは、と思います。
 
今回の展示販売会では、「学び」にも力を入れています。ここにある商品は、染めから工房でやっていますが、染めについてより理解して頂けるように、「染色カード」を作りました。例えば、茜で染めている商品をご購入頂いたお客様には、茜がどういう植物なのかを記載したカードを一緒にお渡しします。
 
着物は、少しとっつきにくい部分もあると思うんです。染めに使う「夜叉五倍子」(やしゃぶし)など、聞き慣れない言葉も多いので、もっと身近に感じてもらえるよう、背景のストーリーを知ってもらいたいと思っています。
 
第3回に続く

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