未来を試す

第2回 「みらいファッションラボ」イベントレポート 前編

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登壇者:株式会社THE GUILD 代表 深津貴之さん
ライフスタイルアクセント株式会社 代表取締役 山田敏夫さん
ファッションコンサルタント 市川渚さん
ITジャーナリスト兼コンサルタント ifs未来研究所外部研究員 林信行さん

2017年2月24日(金)、三越伊勢丹ホールディングスとifs未来研究所が一緒に立ち上げた「みらいファッションラボ」(以下、ラボ)の第2回イベントを開催しました。
「ラボ」のテーマは、「デジタルは、ファッションを幸福にできるか。」。
今回からは、資生堂もコアメンバーに加わり、ファッションやビューティーにデジタルが掛け合わされることで、どんなビジネスが生まれるのかを研究・発信していきます。
 
今回、ゲストにお迎えしたのは、株式会社THE GUILD 代表 深津貴之さんと、ライフスタイルアクセント株式会社 代表取締役 山田敏夫さん、ファッションコンサルタントの市川渚さんです。
 
未来研外部研究員の林信行さんのナビゲーションで、メイドインジャパンの工場直結ファッションブランドFactelier(ファクトリエ)の運営の話や、「人にどう行動してもらうか」をデザインする深津さんによるUI/UXデザインを事例にあげ、「デジタルは、作り手と受け手をどのようにつなげるか」をお話頂きました。

★ ★ ★
川島蓉子: ifs未来研究所 所長の川島蓉子です。「みらいファッションラボ」は、ファッション業界とテクノロジー業界の人たちの接点があまりないので、もっと繋がることができたらいいんじゃないかという、林信行さんと私の議論から始まりました。
そして、デジタル×ファッションということになっているけれど、それにこだわらずに議論できたらいいね、というところを伊勢丹の北川さんにお話したところ、「一緒にやりましょう」ということになり、立ち上げたのです。
 
そして、つい最近、資生堂の永井さんに声を掛け、今回から三越伊勢丹ホールディングスと資生堂、そして伊藤忠ファッションシステムの3社で主催しています。
このイベントも、昨年(2016年)から続けています。何か答えを導き出すものではありませんが、みなさんと楽しい会話をして、繋がることができればと思っています。
 
林信行(以下、林): ifs未来研究所 外部研究員の林信行です。
「みらいファッションラボ」では、2~3か月に1回のペースで、こうした対談イベントを開催しています。これまであまり接点の無かったデジタル側とファッション側の人たちをくっつけることで、どんな「みらいファッション」が出てくるのかを考える会。
このプロジェクトをきっかけに、一緒にモノやコトを生み出していきたいと、ラボメンバーたちといつも話しています。
 
ウェアラブルを始め、様々な形でデジタルとファッションの融合が行われているけれど、その場限りのモノが多い。実際に、デジタルとファッションが繋がることで、どういう風になって行くのかというのを考えるのが、みらいファッションラボです。
企業の枠も超えて、新しいファッション×テクノロジーの提案をしていこうというのが、この場になっています。
 
山田敏夫(以下、山田): メイドインジャパンの工場直結ファッションブランドFactelier(ファクトリエ)を運営する、ライフスタイルアクセント株式会社 代表取締役の山田です。
 
今日、日本製の服を着ているという方はいらっしゃいますか?(会場、挙手。)多いですね。こうやって質問をすると、「どこ製の服なのか、分からない」「そもそも、そんなことを気にしたことがない」という方が大半です。
確かに、デザインやサイズ感が重視されるもので、生産国などの背景は、着る人にとってはあまり関係のない話だと思われていました。
 
ところで、日本の縫製業が、現在どういう状況なのか、みなさんご存知でしょうか。
実は、2014年頃、日本国内で生産された服は3%まで減少していました。こうした状況は日本だけではなく、アメリカも約2%、フランスでは1%台まで減っています。
こうした状況を受け、Factelierでは、「そもそも、先進国にとって、服作りは必要なんだっけ?」というテーマと向き合っています。
 
Factelierの特色は、大きく分けて2つあります。まず、すべての製品に、工場の名前を付けていること。そして、工場が販売価格を決めていることです。それは、コスト削減ではなく、価値を上げていくという考え方である必要があると思っているから。私たちは、まずはきちんと価値を上げることを目指しています。
 
それによって、工場側もどんどんとポジティブになっていきますし、みなさんにもFactelierのコンセプトに共感してもらえたり、日本製の服に袖を通すことでその良さを実感してもらえたら嬉しいです。
 
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市川渚(以下、市川): ファッションコンサルタントの市川渚です。私の今までのキャリアは完全にファッション業界なのですが、そういったバックグラウンドがありつつ、テクノロジー業界やデジタル界隈の方と同じ土俵で会話できる人材がなかなか存在しないなかで、フリーランスのコンサルタントやアドバイザーとして2つの業界を混ぜるような役割を担っています。
仕事内容は、ファッションブランドやIT関連企業、ベンチャー企業などのプロジェクトに企画段階から参加させていただき、コンテンツやプロダクトを作ったり、メディアへの寄稿も行っています。
 
ファッションの側面でいうと、私は今、若手ファッションデザイナーの支援をしていきたいという想いがあって、株式会社CAMPFIREが運営するファッション特化型クラウドファンディングプラットフォーム「CLOSS」のアドバイザーなどを通して、業界の若手支援に注力していきたいと考えています。
 
深津貴之(以下、深津): THE GUILDの深津貴之です。僕の仕事は、いわゆるUIデザイナー、UXデザイナーと言われる分野です。これは、使いにくいモノを使いやすくしたり、繰り返し使ってもらったりと、ユーザーの行動をデザインするモノです。このような設計を、主にウェブで行っています。
THE GUILDは、ちょっと特殊なフリーランスの集合体で、プロジェクトごとにチームを作って動く形式のクリエイティブファームです。
 
僕が最近手掛けた仕事でいうと、日本経済新聞のアプリケーションの基礎設計や監修、ハンドメイドマーケットのminne(ミンネ)のアプリケーションの改善などです。元々は、カメラのアプリケーションをいじっていたのですが、今は企業の中に入って、企業のサービスやアプリをどう使いやすくするか、ということをやっています。
 
サイドワークとして、「THE GIANT MAP」という、床一面にGoogleマップをプロジェクションして、センサーを仕込んだ巨大インタラクティブ・マップを作りました。これは、子どもが走ったり歩いたりすることに反応して、床の地面が爆発したり揺れたり、子どもがゴジラみたいに暴れられる作品です。
 

メインは、「人にどう行動してもらうか」をデザインすること。今日はそのあたりで、何か面白い話ができればと思っています。
 
林: 今の時代、多くの会社でアプリを作っているけれども、どうやったらより効果が発揮できるかを考えて、カタチにしているのが深津さんの仕事です。そんな深津さんから見て、Factelierをもっとより良くする方法というのはありますか?
 
深津: Factelierは、「何が特別なのか」を見えるようにするのが大事だと思います。例えば、さっき山田さんが話していた、製造工程をどれだけお客さんに見えるようにするかというのがひとつ。
それから、モノづくりは、「自分が参加する部分があると急激に愛着が湧く」ということ。
ほんの少しの触りの部分でいいので、「自分がひと筆入れた」という体験を、服を作る体験の中に入れられると、愛着がすごく上がっていくんじゃないかな、と思いました。
 
例えば、ジーンズをオーダーで作る場合、自分が染めたジーンズの布を、Factelierがパンツに仕立ててくれるということが実現できたら、とても喜ばれると思う。
日本中で、藍染などで布を作るワークショップが開催されているので、「その布を使って、あなたにピッタリの洋服を作ります」というオーダーメイドだったら、手にした人はものすごく大切にしてくれると思う。みんなにとっても、特別な体験になるんじゃないかな。
 
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山田: Factelierの課題は、品質とお金のバランスへの納得感ですが、今のお話は、それとは少し違う切り口で面白そうです。単純なオーダーメイドだけではなくて、来てくださったお客様自身にやってもらうくらいに巻き込めたらいいな、と思います。
 
林: Factelierは、実店舗も運営されていますよね?
 
山田: はい。今、銀座、横浜、名古屋、熊本(本店)に店舗を持っています。ウェブサイトも同様ですが、店舗でも、お客様が最初に何を見るのかなどをよく見ています。そうすると、こちらが発信したいモノは、実はみなさん全然見てくれていないことが分かるんですよね。それが衝撃でした。
 
私は、熊本市内の創業100年の婦人服屋の息子として育ったこともあり、「リアルな接客に勝るものはない」と思っています。Factelierでは、すべての工場に約1分間の映像を作っていて、「誰が、どんな想いで作った服なのか」を知った上で購入頂く、というカタチを取っています。
映像には、糸を生地にするところから、生地がどう裁断され、どうパーツとして組み立てられていくのかを観ることができます。
 
また、ウェブサイトでは各工場の情報も詳細に掲載しています。これまでアパレル業界では、工場情報をオープンにするというのはタブーのひとつで、工場はウェブサイトを持っていませんでした。それをFactelierでは、工場名や所在地、電話番号などをすべてオープンにしています。
 
林: ファッション業界のデジタルでの表現って、写真や映像を使うことになりがちですが、どうしたら表現をもっと変えていけるんでしょうか。
 
深津: 結局、写真や映像を使うことにはなると思いますが、それらをどう見せるかということだと思います。
例えば、今お手伝いしているminneで僕がやろうとしていることは、「モノを列挙することをやめましょう」ということ。minneはマーケットプレイスなので、モノをたくさん売っているんですが、「モノじゃなくて、物語を売るようにしてください」と伝えています。
 
モノがどういう風に作られているかを知った上で、作家さんとユーザーが一緒にモノを作る。そうした裏側を全部見せるようにすることで、カタチになるまでのストーリーや、「こうした過程を経て生まれたモノを、あなたが持っていることが価値」「モノは、その価値の象徴として、最後に手に入る結果」という世界観に転換させることができると思っています。
 
林: Factelierのウェブサイトは、すべて山田さんご自身で監修しているんですか?
 
山田: いえ、デザイナーたちも一緒です。他にも、エクステリアデザインのチームを作って、店舗やウェブサイトを見ることも行っています。そこに必ず僕が入って、アンケートなどの定性データは、全部一緒に見ています。僕が一番着目しているのは、自由回答で、お客様の生の声を知ることができるところなんです。
 
深津: 僕も、お客様の生の声を聞くのは大好きですが、仕事上「お客様の言うことを聞くな」と、よく言っています。それは、「お客様の言うことをそのまま信じるんじゃなくてお客様のやったことを信じなさい」ということ。
 
お客様は、割とフィーリングで仰ることが多いので、要望のままに作っていても、買ってもらうことはできない。それは、改善したい何かを自分なりに考えた解決方法や、他のブランドでやっているのを見たモノだったりするからです。
そうした要望よりも、「裾が長すぎて、釘に引っかかって生地が切れちゃったよ」とか、「子どもが転んじゃった」という、実際のエピソードの方が興味深いですね。
 
市川: 深津さんのTwitterや、今のお話を聞いていてもそう感じるのですが、深津さんは「そもそも論」を突き詰めている人だと思っています。
だから、企業が「アプリを作りたい」と言ったときに、「なんで、アプリを作る必要があるの?」というところからスタートするんですよね。
 
深津: そうですね。「御社は、アプリ作っている場合じゃないですよ」「こっちをやるべきです」って、他の会社を紹介して終わっちゃったりすることもあります。
 
僕が企業のアプリを手掛けるときに最初にやることは、例えば、お知らせページを消滅させること。なぜかというと、いろんなことを発信したいのは企業側だけで、ユーザーは知ったこっちゃないからです。みなさんも、実生活で自分の会社以外のお知らせページって、ほとんど見たことないと思います。
 
そうしたところから斬り込んで、入力フォームは極限まで小さくしていきます。職業や年収や居住地を知りたければ、統計やGoogleの解析もあるし、外注のアンケートで解決することもできる。
 
そもそもお客様がそんなに見ていないという事実は受け止めないといけない。求めるウェブページにしか興味が無いし、そのページに早く飛びたいと思っているので。
 
市川: 私は、ファッション系企業の方とお話する機会が多いのですが、アプリやウェブというものを、魔法のように思っている方が多い。
「それは、必要であればやるべきだけど、まず、今は必要なものが何なのか、それが何故必要なのかを突き詰めて考えて、それに対しての最適解を導き出す」という作業がすごく大切。
なので、深津さんみたいな人にどんどんファッションの分野に進出していただければ、不毛なプロジェクトがなくなってくれたり、あるべき姿のプロジェクトとして帰結してくれたりするのではないか、と思ったりしますね(笑)。
 
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山田: Factelierでは、アプリを作ってはいませんが、スマートフォンからオンラインショップを見たときにも、買いやすい状態にはしたいです。
当たり前のことですが、僕らが伝えたいことが、お客様にちゃんと伝わるということと、お客様が購入するときにストレスを感じない状態にするということを目指しています。
  
後編に続く

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