未来を試す

第2回 「みらいファッションラボ」イベントレポート 後編

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登壇者:株式会社THE GUILD 代表 深津貴之さん
ライフスタイルアクセント株式会社 代表取締役 山田敏夫さん
ファッションコンサルタント 市川渚さん
ITジャーナリスト兼コンサルタント ifs未来研究所外部研究員 林信行さん

 
レポート前編はこちらから
 
★ ★ ★ 
深津: 今日のこのイベントで、僕はテクノロジー側の「行動をコントロールする側」の立場でもありますが、「ファッションにお金をほとんど使わない人」でもあります。その理由は、「お店に行くことがしんどい」「服を選ぶことがしんどい」から。そうしたところが楽になるなら、きっと僕も服を買うようになると思う。
 
僕は、スティーブ・ジョブズのように、同じ服をまとめて買いたいタイプだし、靴下も同じ色を1年分買っちゃう、みたいな買い物をしてる。でも、そういうときに買う、いい服ってあまり無いんですよね。だから結局、一番安いお店で、10着まとめて同じ服を買ってしまう。
 
なので、自分で選ぶ必要も、お店に足を運ぶ必要もないけれど、「いいモノがあなたに届きますよ」というようなサービスがあったらいいな、と思う。
 
市川: 海外には、そういった考えを持った男性向けのサブスクリプションコマースが結構あるんですけどね。5年くらい前に流行ると言われて居ましたが、日本ではサブスクリプション自体が思ったより浸透しなかったですよね。
 
深津: 僕は、「月額なんぼで商品が届きます」「レンタルができます」というサブスクリプションは、宝の山だと思っています。IT系の人にとっては、そこを誰が抑えるかということに興味津々。ファッションに限らず、需要があるモノなので、ファッション業界の人があまり手を付けていないのを見ると、すごくもったいないと思います。
 
林: 宝の山、とは?
 
深津: 僕がサブスクリプションに注目している理由の一つは、お金が先にもらえること。先にキャッシュがあるので、キャッシュフローがとてもいいんです。
もう一つは、タイムバリューが長いこと。一度加入して、使いやすいと思ってもらえれば、営業などをしなくても、数年間使い続けてくれるんです。
 
ファッション特有のこととして、百貨店には外商員の方がいますよね。「生活まるごと支えます」という御用聞き。外商とサブスクリプションを上手く組み合わせることができれば、「外商全自動化」みたいなこともできるかもしれない。
これは、スタートアップの小さな企業だけでは手掛けることが難しいので、百貨店にしかできない、面白いIT有効化になると思います。
 
男性: 私は、伊勢丹のバイヤーをやっています。以前から、サブスクリプションには興味があったのですが、今のお話を聞いて、ますますやってみたくなりました。
実際に、我々がサブスクリプションを活用して提案をするとなったとき、どういうところから具体的にビジネスに落とし込んでいくといいのでしょうか?
 
深津: AI(人工知能)の機能は、ハマるまで価値の分からないモノなので、それを入口にするのはすごく難易度が高いと思います。
だから、お客様に売る部分でAIを使うのではなくて、まずは「初月無料」など、分かりやすい価値を入口にする。そこから入ってきてくれたお客様が、無料の体験期間に「AIによるコーディネートって、オシャレ!」と感じてくれることで定着させる。
 
野球で言うと、打線を組むときに、バントをする人なのか、塁に返す人なのかを考えるような。つまり、機能ごとに仕事を分けるとやりやすいんじゃないかと感じています。
 
山田: でも、伊勢丹には、既に強力な外商員の方々がいるじゃないですか。
 
深津: その方々が薦めてくれるというのはいいと思います。契約してくださると、毎月様々なソムリエが選んだ世界のワインが届きます、みたいな。
AIはその裏側で、送ったワインの消費率や満足度をチェックして、「このお客さんには、こういうワインポートフォリオで打線を組んで送ると満足してもらえる」というところを導き出すのに活用するんです。
 
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林: AIの活用という面でいうと、例えば、有名なデザイナーがデザインしたモノと、コンピューターが生み出したモノが並んだとき、人間はどう感じるんでしょうか。
 
市川: コンピューターが生み出す新しい何かが人間の全てを食っていく、みたいな話、私はナンセンスだと思っています。
 
深津: そうですね。僕はどちらかというと、テクノロジーを可能性を広げるためのツールとして使う方が楽しいと感じています。
 
市川: 例えば、デザインって絵心がないと難しいですよね。私もファッションデザインを勉強していた時期もあったんですけれど、絵を描くことが苦手で。
 
だから、モノグラム柄のテキスタイルがあったらいいなと思っても、描けないんです。テクノロジーが、クリエイターじゃない人たちの可能性も広げてくれるというか、ノンデザイナーやノンクリエイターでも、モノを生み出すことができるようになりますね。
 
深津: 扱いやすいシステムを開発して、気軽に「あなたが自分でデザインしたモノを服にします」と提案することができると、オートクチュールの新しい形としては面白いと思います。
 
男性: 今日この場ですごく聞きたかったのは、みんながテクノロジーラインをどこに設定しているか。そこがズレていないことが一番大事な気がしているんです。
 
テクノロジー側の人にとっては、「テクノロジーというのはこうだ」という定義があるかもしれないけれど、人によっては、携帯電話をテクノロジーだと思っていたりと、どこからがテクノロジーというラインは定まっていないですよね。根本のテクノロジーは、もっと馴染みやすくて、浸透しやすいものではないかと思っています。
 
深津: まさにその通りで、僕はお客様にはテクノロジーの話は1ミリも見せない方がいいと思っています。
テクノロジー云々というのは、テーマパークの裏側の話。本来は、そういうことが1ミリも見えないようにするということをお客様に保証するためにも、テクノロジーを扱う人はものすごく詳しくないといけないと考えています。
 
つまり、「ドリルを買いに来るお客様が本当に欲しいのは、ドリルではなくて穴。」ということ。だから、お客様にドリルそのもののことを語るのではなくて、きれいな穴を開けられることを約束すべきなんです。
 
林: 企業としては、「テクノロジーをやらなきゃ」というプレッシャーがあるんじゃないでしょうか。北川さん、いかがですか?
 
北川: 三越伊勢丹ホールディングス IT戦略部の北川です。今はすぐ、「PVがいくつに上がったか」「2年で何倍成長したか」みたいな、スピードの話をしがちですが、果たしてファッションってそういうものなんだろうか、じわじわ感じるところに本当は長く続くファッションがあるんじゃないの?ということを感じてきています。
 
だからこそ、「大企業がやるべきなんじゃないの?」と。時間をかけてやることはベンチャーにはなかなかやりづらいから、それに耐えられる大きな企業がやるべき部分が大きいと思っています。
 
じわじわ感じていきながらファッションを好きになるとか、テクノロジーを好きになる。あるいは、テクノロジーなんかどうでも良くて、結果的にテクノロジーの恩恵に預かるということが、我々がこのラボでやるべきことだと感じています。
 
深津: 個人的に、最近、ファッションの価値の3~4割くらいが、全然違う角度からやって来た、InstagramやFacebookなどのSNSに食われていると感じています。人にちょっと褒めてもらえるとか注目してもらえるといった体験が、SNSに掲載するご飯の写真などに奪われている。
 
何万円も掛けて服を買うよりも、5,000円くらいで友達とバーベキューをした方が「いいね!」と言ってもらえて、注目してもらえて、交流が生まれて…と、以前ファッションが持っていた、社会の潤滑油としての機能を持っていかれている状態にあると思います。
このままでは、服を一着買うよりも、カフェでオシャレなドリンクを買って写真を撮る方がいい、となってしまう。
 
そこと戦っていくためには、「ファッションって、超いいよ!」ということを、強く言い張れるような、新しい価値や見せ方を発明しないと、ファッションが持つ「ドリーム」の部分がどんどん削られる。ファッションが、ただのモノになってしまう
 
市川: アパレルとファッションというのは同列で受け止められがちなんですが、私は全然違うものだと思っています。ファッションは現象的なもので、アパレルは製品の話なので、今の深津さんのお話で言うと、食われるのはあくまでアパレルなんですね。
 
持論だけれど、ファッションって、SNSなどメディアの数が増加する前は、メディアが「これが正しいんだよ」「これが今いいんだよ」と一方的に提案してくるトレンドを追わなきゃいけない、追いかけなければダサい、という時代だったのが、情報ソースが多様化したことで、ある意味そういった呪縛から自由になったと思うんです。
 
なので、元々は、みんなと同じモノを追わなきゃいけないと思っていた子たちが、「興味なくてもいいんだ」と思い始めたり、「だったら私、服には興味がない」と思う子も出てくるのは当然。必ずしもアパレル(衣料品)ではなく、旅や食といったモノやコトで自分なりのファッション感を表現する子もいたりとか。
 
一方では、服も大好きで、ひたすらファッショントレンドを追い続けて、それらを纏った自分をInstagramに投稿して、「どう?カッコイイでしょう?」ということが好きな子もいるわけです。
 
ファッションに関しては、このように情報がフラット化したからこそ、すごくファッション性の高いところと、全くゼロのところ、というように差がついていくのはごく自然なことなのかなと。だから衣料品だけを作っているアパレル企業にとっては、なかなかしんどい時代だろうなあと思います。
 
林: ありがとうございました。
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