未来を試す

第3回 「みらいファッションラボ」イベントレポート 前編

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登壇者:資生堂 イノベーションデザインラボ 山崎賢さん
三越伊勢丹ホールディングス 情報戦略本部 北川竜也さん
ITジャーナリスト兼コンサルタント ifs未来研究所外部研究員 林信行さん

2017年5月17日(水)、三越伊勢丹ホールディングスと資生堂、ifs未来研究所が共に運営する「みらいファッションラボ」(以下、ラボ)の第3回イベントを開催しました。「ラボ」のテーマは、「デジタルは、ファッションを幸福にできるか。」。
今回は、「CES、サウス・バイ・サウスウエスト、ミラノサローネで見た 2017年デジタルライフスタイルの最前線」と題し、イベント出展者と参加者の目線で、トークを行いました。

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林信行(以下、林): ifs未来研究所 外部研究員の林信行です。「ifs未来研究所」は、4年ほど前に立ち上げられた、伊藤忠ファッションシステムの川島蓉子が所長を務める研究所です。私も立ち上げ当初から、外部研究員として様々なプロジェクトに関わっています。
 
ifs未来研究所と、三越伊勢丹ホールディングス、資生堂の3社で取り組んでいるのが、「みらいファッションラボ」。昨今、ファッションとテクノロジーの融合を示す「ファッションテック」という言葉が非常にブームになっています。テクノロジー主導の提案は、確かに便利そうだけれど、それを部屋に置きたいかどうかを考えると、ちょっと首を傾げてしまうものが多い。
 
なので、このラボでは、“テクノロジー”主導ではなく、“ステキさ”を主導にしたファッションやライフスタイルはどのようなモノなのかを話し合って実現していこう、仲間を集めていこう、といった趣旨で進めています。
 
そして、みらいファッションラボの合言葉は、「ファッションって、恋。」。テクノロジー目線では、なかなか出てこない言葉だと思いますが、ウキウキするような目線でファッション×テクノロジーや、ライフスタイル×テクノロジーを語っていこう、という会です。
 
いつもはゲストをお招きするんですが、今回は、この「みらいファッションラボ」の主体である3社で、今年前半に行われた大規模な3つのイベント、コンシューマ・エレクトロニクス分野の世界最大の見本市「CES(Consumer Electronics Show)」、世界最大のクリエイティブ・ビジネス・フェスティバル「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」、世界最大の家具見本市「ミラノサローネ」を訪れた話を、我々「みらいファッションラボ」目線で紹介します。
 
そして、本日は、実際にイベントに出展した方々もいらしているので、出展者側の目線でのお話も聞いてみたいと思います。
これら3つのイベントのどれかに、実際に行かれた方はどのくらいいらっしゃいますか?(会場、挙手。)結構いますね。CESは17.5万人、SXSWのインタラクティブ部門だけで10万人、ミラノサローネは40万人と、いずれも数万人規模のイベントです。
 
日本で開催されているイベントはと言うと、「Interior Liftstyle Tokyo」が3万人、「CEATEC JAPAN(Combined Exhibition of Advanced Technologies)」でも15万人と、まだまだ世界規模とは言えない状態です。
ちなみに、「Paris Fashion Week」でも5万人規模ということを考えると、いかにこの3つのイベントの規模が大きいかを実感して頂けると思います。
 
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さっそくこの後は、三越伊勢丹ホールディングスの北川さんにCESの話をしてもらおうと思います。北川さん、お願いします。
 
北川竜也(以下、北川): みなさん、こんばんは。三越伊勢丹ホールディングスの情報戦略本部 IT戦略部 デジタル化推進担当長の北川竜也です。
 
百貨店の人間がCESを語るっていびつな形のような感じもするんですが、実は私は、2015年から3年連続でアメリカ・ラスベガスに行っています。本日は、「CES」でどういうことが行われているのか、そこからどんなことが読み取れるのかということをお話しようと思います。
 
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「CES」って、恐らくみなさんあまり馴染みが無いのではないでしょうか? CESは、年に1度ラスベガスで、新年気分も抜け切らない1月上旬に4日間ほど開催されるもので、17.5万人が来場し、ラスベガスの街をジャックするような規模のイベントです。
 
元々は、ビデオカメラやプラズマテレビなどの、いわゆる家電の発表の場で、日本語では「世界最大の家電見本市」と訳されていました。しかし、私がCESに初めて三越伊勢丹の人間として訪れた2015年が、大きな転換点でした。
 
2015年に、多くのIoT商品が発表されたことを皮切りに、2016年に「人工知能」や「ディープラーニング」というキーワードが挙がり、2017年には、早くもそれらの技術が搭載された一般向け商品が出てきたのです。
 
世の中の流れが速くなり、新しいテクノロジーを活用したサービスや商品が短いスパンで提供されるようになっているので、それほどのタイムラグは無いとはいえ、CESで話題になったことが世間で話題になるのは、約半年から1年後。最新のテクノロジーが一堂に会する世界規模のイベントが、CESです。
 
CESのエリアは、ラスベガス通りに即して「Tech East」、「Tech West」、「Tech South」と、街全体をジャックするように、大きく3箇所に分けることができます。
Tech West」を開催するSands Expoの1階は登竜門のようなエリアで、世界中から様々な企業が出展しています。そこから勝ち残った企業がSands Expoの2階へ、更に勝ち残ると、SONYやTOYOTA、SHARPといった世界的な企業も出展している「Tech East」のLas Vegas Convention and World Trade Center(LVCC)へ出展します。また、「Tech South」は、ARIAというホテル全体を使って、小規模展示や部屋ごとに商談を行っています。
 
2015年頃には、PCの終焉やIoTの本格化、ドローンや3Dプリンターの一般化などが話題でした。ちょうど、「ファッションとテクノロジーの融合の開始」と言われ始めた時期です。
 
「テクノロジー業界が、こんなにもファッションファッションと騒いでいるのに、我々は普段、ファッションの視点でテクノロジーを使っていない。そこに何のギャップがあるのか?」という疑問が、この「みらいファッションラボ」を立ち上げたきっかけでもあります。
 
今年、2017年にはVRやARが大流行。どこを見ても、いかにも欧米の方々が好きそうな雰囲気のモノばかりで、それらが席巻していました。
 
また、我々がきちんと知っておくべきポイントは、「コネクティビティ」です。自動車の自動運転もよく耳にするようになってきましたが、世の中のあらゆるデータが、あらゆる側面から取られるようになり、全部が繋がってきています。
 
例を挙げると、外にいてもスマートフォンを使って自分の家のお風呂を沸かせるというのも、コネクティビティのひとつ。こうしたことが進んでいくと、住宅業界や自動車業界などが大きく変わっていきます。
もしかすると、車の中が買い物を楽しんで頂くショッピングエンターテイメントの一つの場になるなど、我々のような小売業界も変わっていく可能性があるんです。
 
我々(三越伊勢丹ホールディングス)は、今まで“モノ”を販売してきましたが、全てのモノがインターネットで繋がるという前提で考えると、恐らく“モノ”そのものの価値は無くなり、その後の“サービス”で月額課金していくようなビジネスが大きく広がっていくことが考えられます。
 
そうなったとき、百貨店のように、これまで差益で儲けて来た小売業界はどのよう価値を提供していくのかを考えるヒントが、ここにあると思っています。
 
ちなみに、IoTガジェットブームはかなり落ち着きました。ウェアラブルデバイスなどは、コモディティ化したと言うこともできます。ドローンは、もはやラジコンカーのようなイメージにもなっていますよね。
 
一方、「ファッション×ヘルスケア×テクノロジー」は、引き続き進化を続けています。Sands Expoでも、ホテルの一画にブースが設けられていました。
健康市場は、データが非常に重要なので、テクノロジー側の企業があらゆるデータを取ることのできる商品を作ってきていることを目の当たりにしました。
 
本日は、まさに我々が思い描いていた「あの頃の未来」をテクノロジーを使ってカタチにしている企業の方がいらしているので、マイクを渡します。
 
阪根信一: 「世の中にないモノを創り出す技術集団」と自称し、「リアルなイノベーション」を起こすことを目指す会社、セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社 代表取締役社長の阪根信一です。
我々は、人工知能を使った機械を作ることで、機械と人間の関係を変えたいと思っています。特に、我々が大切にしているのは、テクノロジーワイズという、人々の生活を豊かにする技術で、B to Cに寄ったモノを創っています。
 
今日は、衣類・ファッションに関係する、「/laundroid(ランドロイド)」を紹介します。
ランドロイドは、世界初の全自動衣類折りたたみ機です。我々は、人生に新たな時間を創造できるテーマとして2005年から取り組んでおり、当社でも一番歴史あるプロジェクトです。これまで12年の歳月をかけて開発を続け、今年やっと発売することになりました。
 
ランドロイドを支える技術は、「人工知能」、「画像解析」、「ロボティクス」の3つ。北川さんから「コネクティビティ」というワードが挙がりましたが、ランドロイドもインターネットに繋がらなければ、動かすことができないIoT機器です。
 
大きな冷蔵庫のような外観をしたランドロイドに、乾いた衣類を30枚程度入れると、ロボットアームが衣類に最適な方法でたたみ、仕分けてくれます。
仕分け機能は、「アイテム別」と「家族別」の2種類。「家族別」仕分けモードでは、事前にアプリを使用してメンバーの登録をする必要がありますが、その後は、ロボットアームが1枚ずつ写真を撮影し、人工知能が衣類の特徴を覚え、画像解析技術で衣類を認識し、アイテムごと・持ち主ごとの棚に分別することができます。
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当面、ランドロイドは衣類の折りたたみに集中し、ゆくゆくは介護施設や病院向けにも普及させたいと思っています。数年後には、洗濯乾燥機と一体型の「ランドロイド・オールインワン」の発売を目指しているのですが、我々が特許を取っているのはたたむ技術のみで、洗濯乾燥技術を持っていないため、2015年にはPanasonicと提携をし、その開発を進めています。
 
そして、衣類をランドロイドからクローゼットまで運ぶという行為を無くすために、仕分けた後に、自動で各部屋のクローゼットまで運んでくれる、「ランドロイド・ホームビルトイン」という機能も持たせようと思っています。これを実現するためには、ハウスメーカーと組む必要が出てくるので、大和ハウス工業とも提携をしました。
 
ランドロイドは、2005年からシークレットで10年間独自に開発を進め、2015年に完成したプロトタイプを、CEATEC JAPANで初めて発表しました。4日間で約1万4,000人の方にデモをご覧頂くことができ、初出展新記録樹立をするほどの大きな反響を受けました。
 
その1年後の2016年のCEATEC JAPANでは、約500~600人が入る広いブースを用意したのですが、各回のデモンストレーションに約1,000人、トータルで約1万9,000人の方がお越しくださったのです。
 
今年は、CESに出展し、初めて海外でライブデモンストレーションをしたところ、非常に多くの方々に注目して頂き、ランドロイドに関するニュースが世界中駆け巡るという嬉しいことも起こりました。
 
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また、ランドロイドの新しいプロモーションを実施したいと、テクノロジー×レストラン、ランドロイド×カフェをテーマにした「/laundroid café」を今年3月にオープンしました。
我々はランドロイドのティザーモデルを設置するショールームを運営し、飲食店運営会社とコラボすることで、「家の中でランドロイドを使ったら、こういう雰囲気になる」ということを食事をしながら体験してもらう、という戦略のプロモーションです。
 
ランドロイドという”テクノロジー”が、“ファッション”と掛け合わされることで、新しいサービスを展開し、リアルなイノベーションを起こしていけるよう、頑張っていきます。
 
北川: 実は、僕もランドロイドの記者発表の現場にいたのですが、日本の企業が世界最大規模のイベントでものすごい反響を受ける姿って、メチャクチャ嬉しいです。
 
CESでは、「CES TODAY」という冊子が毎日配布されるのですが、コネクテッド・ハードウェア(IoT)の企画、開発、販売を行うCerevoという会社が表紙を飾ったりと、日本企業が海外で強い存在感を放っていることを肌で感じることができたのが、本当に嬉しかった。ぜひ、これからも頑張ってください。
 
<レポート後半に続く>

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