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【5月23日 ifs未来研究所 4周年記念イベント】おしゃべり③ 「女はとっくに輝いてる」

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おしゃべり③ 「女はとっくに輝いてる」
篠田 真貴子氏(株式会社ほぼ日 取締役 最高財務責任者)

 
★ ★ ★
 
●子育てが教えてくれた、「予測不可能」なことの面白さ
 
篠田真貴子(以下、篠田):  株式会社ほぼ日 取締役 CFO(最高財務責任者)の篠田真貴子です。今日はよろしくお願いします。
 
川島蓉子(以下、川島): こちらこそ、よろしくお願いします。私は、どうしても篠田さんとおしゃべりをしたいと思っていて。
 
篠田: 怖いですね(笑)。
 
川島: 怖くないですよ(笑)。「とっくに輝いている」と言うと、ちょっと言い過ぎかと思ったのですが、これって、女性にとって割とリアルな感覚。世間から見ても、素晴らしく輝いている篠田さんのお話を聞きたいなと思って、お誘いしました。
 
早速ですが、ほぼ日のCFOとして大活躍をしている、篠田さんの経歴をお話頂けますか?
 
篠田: ほぼ日の前身である、東京糸井重里事務所に2008年に入社し、今年で9年目です。
元々、ちょうどバブル期に就職活動をし、男女雇用機会均等法の恩恵を受けて、日本長期信用銀行(現・新生銀行)の総合職として入行しました。
約4年で退社をしてアメリカに留学した後、外資系のコンサルティング会社やメーカーで中間管理職を務め、その間に子どもを2人産んで。
 
川島: 仕事は、ずっと続けていたんですね?
 
篠田: はい。それなりに悩める30代を過ごしていた終盤、偶然にも、読者でファンだったほぼ日とご縁があって。どのくらいお役に立てるかわからないけれど、折角の機会だからと、お引き受けしました。
 
川島: そんなに素晴らしいキャリアなのに、どうして転職しようと思ったんですか? 私は100万回くらい転職のことを考えたけれど、とうとう転職せずにここまで来ちゃったんですよ。
 
篠田: 私は、そもそも転職慣れしていることもあったのですが、外資系企業のキャリアパスが合わなかったことが大きいです。外資系の大企業にいると、仕事が評価されると、分かりやすく職位が上がるんです。
上がるんですが、それって、部下が増える・予算が増える・物理的に見る範囲が増える、これしか変わらない。
 
川島: でも、職位が上がることで、できることが増えたりもするじゃないですか。世間からちやほやされるし。
 
篠田: いいえ、それはあまり重要ではないんです。私の場合は、「新しい課題やテーマに、どんどん取り組むことができること」に仕事のモチベーションがあるので、サイズはどうでもいい。
でも、そういうことをどうでもいいと思ってしまう自分は、組織人として失格なのではないかと、悩みは深かったです。
 
川島: どのくらい悩んだんですか?
 
篠田: 4~5年ですかね。もう一つの悩みは、子どもたちの乳幼児期、夫が育児にあまり参加してくれなかったこと。私の夫は同世代の大企業サラリーマンです。時代も職場の雰囲気も、子どもが生まれても「イクメンになる」イメージは無かったんです。
 
川島: 全く手伝ってくれなかったんですか?
 
篠田: 夫にきけば、いろいろな思いがあると思うんですけれど、乳幼児期は、やはり私が主力にならざるを得ず。
 
川島: それは大変でしたね。
 
篠田: 出産するまで、仕事上では半ば男化して、競争社会の中で勝ち上がっていくことを考えてきました。今思えば、自分を過剰に最適化していたのですが、子どもを育てることは、全く逆のモード。仕事は、先を見越してプランニングして、その通りに遂行し、時間もピッタリ入れるようなものなので。
 
川島: 子育ては、予測不可能ですよね。
 
篠田: そう、受け入れるしかないじゃないですか。育児を通して、仕事とは全く違う、いわば「ケアするモード」が自分の中に徐々に入ってきました。
 
川島: 予測可能なことをガンガンやっているのは、楽しくないかもしれないと気が付かせてくれたのは、子育てだった?
 
篠田: 私の場合はそうでした。育児を通して、知らず知らずのうちに自分の考え方が変わってくる一方、会社からは「もっと競争社会に最適化しなさい」と、期待と要求が強くなる。そこが私の悩み、葛藤の元だったんだと思います。
 
●ワークとライフは、分けないからこそバランスが取れる
 
川島: ご縁とタイミングが合って、ほぼ日に入社されて、どうでしたか?
 
篠田: 第一印象は、よくこれで会社まわしているな、と思いました(笑)。
 
川島: どういうことですか?
 
篠田: 当時(2008年)、社員は約40名いて、個々の力量もすごくあったのですが、組織としてはバラバラ。私は、出来上がった組織しか経験がなかったので、それまでに勤めた会社には当たり前にあるモノが、ほぼ日には全く無かったんです。
 
それでも、その40名が、毎日『ほぼ日』のコンテンツを更新し、商品を販売し、売上を伸ばし、利益も出ている。一体どうなってるのコレ?、と(笑)。
 
川島: カルチャーショックを受けたんですね?
 
篠田: 受けましたね。社長の糸井も、散歩ついでに愛犬をオフィスに連れてきて、社員たちも犬と遊んだり。時には、子どもがいる女性社員が、小さな子どもをオフィスに連れてきて、子どもと同じ空間で仕事をしたりと、そうした環境に「ラクだなぁ」と、居心地の良さも感じました。
 
川島: 前の環境では出来なかったことですよね。
 
篠田: 外資系企業だったので、もしかすると日本の伝統的な企業よりは、多少緩かったのかもしれません。だけど、子どもが体調を崩したときに会社を休んで、海外にいる上司と電話会議をしているとき、隣で子どもがギャー!と泣き出すと、声が入らないように慌てて子どもの口を押さえるような配慮をしなくてはならなかった。
そういう意味で、ほぼ日は「人間的な暮らしを日々営みながら、ちゃんと仕事もできるな」と。
 
川島: 素晴らしいですね。篠田さんは、ワークとライフのバランスをどのように取っているんですか?
 
篠田: バランスというか、それらは常に混ざっていますね。夕方になると、職場にいながら冷蔵庫の中にある食材を思い出して、夕食のメニューを考えたり、逆に帰宅して夕食の支度をしながら、「いいこと思いついちゃった!」となることもある。
そういうときは、弊社商品の「ホワイトボードカレンダー」という、素晴らしいモノを使いまして…。
 
川島: 宣伝が入りました(笑)。
 
篠田: 紙製なのに、ホワイトボードのように何度も書いたり消したりできるカレンダーでして、それを冷蔵庫に貼っているんです。その空欄に、思いついたことをワーッと書いて。だから有難いことに、精神的なバランスも取れています。
 
川島: どういうことですか?
 
篠田: 要は、家庭も職場も、仕事とそれ以外、と無理やり分けなくてもいい環境だから。私たちは機械じゃないので、スイッチ一つで、「はい、仕事!」「はい、家庭!」って、切り替えられないじゃないですか。
 
川島: ならないですよね! 人間が人間らしく働ける仕事って、どんな仕事なんでしょう?
 
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●「好き」な仕事をする
 
篠田: さっきの、ワークとライフをきちっと分けないという感覚に近いのかもしれないけれど、職場でも家庭でも、仕事を機能で分けない方がいいと思っています。
 
ちょっと話が飛躍しますが、そういう問題意識を持ったのは、家庭での出来事がきっかけ。我が家には子どもが2人いるんですが、夫が「上の子の面倒は俺が見て、下の子は君が見る。この分業はどうだ?」と、提案してきたんです。
 
川島: それは、ないよねえ。
 
篠田: 私は「え~?」と思ったのですが、夫は「俺って、頭いいだろ?」と言わんばかりの、「超ナイス提案!」という態度(笑)。でも、当時は「何を言っているんだろう?」と思いながらも、その違和感を上手く表現できなかった。
 
子どもの面倒を見ることを、親が分担して行うことの、何にそんなに違和感を感じるのかと考えていたんですが、しばらく経って、やっと答えが出たんです。篠田家は4人家族で、4人の全体性があるのに、それが無視された提案だったから嫌なんだ、って。
 
川島: カッコいい!
 
篠田: すみません、理屈っぽくて(笑)。なぜ、夫はあんなにも自信満々に分業の提案をしてきたのかなと考えると、答えは会社にあった。夫は、日本の大きな金融機関で仕事をしていたので、「機能別分業」は社会人になって覚えた、賢い仕事の方法なんです。
 
夫の会社も、会社全体のことを見ているのは社長くらいなもので、直下の副社長をはじめ、全社員は機能別に分かれている。そうすると、それらを統合する人の苦労たるや…と、思いを馳せてしまいました。
 
川島: すごい! それで、家庭内での機能別分業はやってみたんですか?
 
篠田: やってみたというか、夫がノリノリで、勝手に分業になっていました(笑)。
でも、分業を続けると、時々コミュニケーション不全が起こるじゃないですか。その度に、「あなたが面倒を見ている上の子は、私の子どもでもあるんですけれども?」と。
 
川島: 結果的には、どうなったのですか?
 
篠田: 大まかに言うと、子どもの勉強は夫が見ていて、料理は私が作る。これは、お互いがその作業が好きだし向いていて、その結果、恐らく上手だから。
 
川島: 好きな人がその仕事をする感じが、ほぼ日の職場にもある。
 
篠田: ありますね。自分の仕事を放っておくことはもちろんダメですが、逆にそこを全うしていれば、他に自分が興味を持っている物事に関わることを良しとする社風なんです。
 
例えば、『カロリーメイツ』という、ほぼ日の大食い三人女があちこち食べ歩くというコンテンツがあるんですが、メンバーの一人は、経理の担当。彼女も、決算の繁忙期には行きませんが、「経理チームだから、コンテンツには関わらない」とか、そういうことはない。
 
一方で、多くの企業、特に大企業では、機能的に細かく細かく分業をしていますよね。その中の人が家庭を持ったとき、家庭内での夫婦のあり方に、少なからず影響をしているんじゃないか、という仮説を持っています。
 
川島: なるほど。先ほどのお話に挙がった、旦那様のように。
 
篠田: 仕事と家庭、とバシッと明確に分けることは、人間的に不自然。仕事では、機能別分業で個々の役割が狭く決められている一方、家庭ではとにかく何でもやる、という状況では、切り替えも難しいんじゃないかと思っています。
 
川島: それが、ほぼ日ではできているんですね。
 
篠田: そうですね。私も経営陣の一人なので、会社の人数が増えても、そこは踏ん張りたい。短期的な効率性は若干落ちるかもしれませんが、長期的な目で見たときには、こっちの方が良いと思っています。男女関係なく、働く人の力が自然と発揮されやすい環境だとも思うので、頑張りたいです。
 
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●仕事で感じる、幸せと喜び
 
川島: 「女性が輝く」という言葉、私はなんだか変だなと思っていて。働いていて「幸せを感じる」って、どんなときなんでしょう?
 
篠田: 自分の健全な目標や希望、野望に向けて、一歩でも近づくことができたと思えれば、嬉しいし幸せも感じる。もしかすると、川島さんや私が若い頃って、「女」が野望を持つことを禁止されていたようにも思うんです。
 
川島: どういうことですか?
 
篠田: 例えば、私よりも遥かに勉強ができた大学の同級生の女性は、私が総合職で入行した銀行に、一般職で入ったんです。彼女が一般職を選んだ理由は、「一生、この会社にコミットする」という約束をする自信が無かったから。
 
ある時期までは、「女性だから」というだけで、目標を持つことを暗黙のうちに許されていなかったんですよね。それだと、どんなに頑張っても、自分の目標に向かって進むことにはならないから、仕事で幸せを感じることは無かったと思う。
 
川島: 私は、女の目標ってそんなに大きなモノではないんじゃないかと思うんです。「10年後、どうなりたいか」と言われても、ちょっと困ってしまう。
 
それよりも、「明日どうしたいのか」「1ヶ月後に何をしたいのか」「このプロジェクトが、どうなったら嬉しいのか」という感覚に近いんです。そして、それが実現できると、とても嬉しくて。
 
篠田: 確かに、時間で区切るよりも、「このプロジェクトが、こうなったら」とか、「この仕事で。こういう風に喜ばれたら」とか、そういう目標を持ちますね。
 
川島: 喜んでもらえるというのは、私も嬉しいです。例えば、チームで手掛けた商品を買ってくれた人がいて、美味しいね、と言ってくれたとか。仕事の中で、そういう場面があることが、とても嬉しい。
 
もう一つは、一人よりも、チームでやる方がいいということ。私が物書きとして仕事をするときには、担当者と編集者はいても、ほぼひとりぼっちなのですが、チームでは、「良かったね!」と、一緒に言い合える楽しさがあります。
 
篠田: ありますよねえ。それも、男女差なんですかね?
 
川島: よく、キャリアプランを書きなさいって言われますよね。
 
篠田: 言われます。あれは、何なんでしょうね? 
私も、これまでの経歴をインタビューしてもらうことがあるのですが、ほぼ日のCFOになるために、論理的にキャリアを積んできたように読めちゃうんですよ。
 
川島: それは、ライターさんが悪いのでは?
 
篠田: そうではないんです。起承転結の都合もあると思うのですが、人の理解ってそんなもの。自分がどんなに悩みながら紆余曲折を経て、たまたま今があるとお話したとしても、受け止める側は、一貫性のある話として受け止めたいから、そう聞いちゃうんだと思います。
そして、そのインタビューを読んだ若い人が、自分の未来について考えたとき、ロールモデルとして暗黙の内に思い描いちゃう。
 
川島: 世の中、そんな簡単にはいかない。1秒先だって読めないですよね。
一方で、私が今の会社で30年以上も過ごしてきたのは、その時々に自分が判断をしてきたから。予想通りになった訳ではないんだけど、そうした面白さもあると思いますね。
 
篠田: そうですね。私はこれまでの経験で、自分に不必要だったと感じていることは無いんですが、今に繋がっていないことを都合よく忘れているだけかもしれません。
 
川島: あっという間のおしゃべりで、もう時間なのですが、最後にひとつ。冒頭に「わかっている男」と「わかっていない男」に向けて、私からメッセージをお伝えしましたが、篠田さんが、男性にこうして欲しいと思うことってありますか?
 
篠田: ちょっとしたことでも、「ありがとう」って言ってもらえると嬉しいですよね。
 
川島: でもそれって、本当に「ありがとう」と思って言っているかどうかってわかりますか?
 
篠田: わかります(笑)。本当に思って言っていないのは、逆効果の100乗。
でも、一見どうでもいいように見えることでも、本当に心から「ありがとう」と言ってもらえると、「更に100メートル走りまっせ!」という気分になるんですよね(笑)。
 
川島: あるある。100メートル、全力疾走できちゃいますよね。素敵な言葉を掛けてもらえれば、それだけで嬉しくなっちゃう。
篠田さん、楽しいお話をありがとうございました。
 
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>>未来研4周年イベント「おしゃべり感謝会」レポートは、こちらから。

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