未来を試す

第4回 「みらいファッションラボ」イベントレポート 後編

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登壇者:前 株式会社ケイズデザインラボ・現 株式会社DiGINEL 代表 原雄司さん
ファッションデザイナー 天津憂さん
ITジャーナリスト兼コンサルタント ifs未来研究所外部研究員 林信行さん
*肩書は登壇時のものを記載しております。

 
レポート前編はこちらから
 
★ ★ ★ 
林: 原さんのお話を踏まえて、天津さんがこれから作ってみたいモノはありますか?
 
天津: 3Dプリンターでは、柔らかいモノも作ることができるようになりつつあるので、洋服を作る上でも使いやすくなると感じています。実際に、ニットの網掛けを3Dで作ることができたりと、3Dの活用もどんどん広がっていくんだろうと思いますし、僕もそういうニットを作ってみたいです。
 
林: 天津さんのお話を聞いて、原さんはどのように感じましたか?
 
原: 高解像度スキャナーがファッション業界で使われていることが意外で、まったく想像していなかったです。3D業界からすると、高解像度の画像にまで気を使うことがないので、「なるほど」と思いました。
 
天津: 一方で、リアルであればあるほど売れにくい、という面もあるんです。抽象的だと着やすくなって一般受けもするのですが、あまりにもリアルだと、数字には繋がりにくいですね。
 
原 : ファッションではないですが、例えば、車のダッシュボードに使われる革シボ(※ 表面にシワ模様加工をしたもの)は、プラスチックを革の風合いにするために、エッチングと呼ばれる、強酸性の化学薬品を使う技術で作られています。
 
それを、3Dでデータを作って、レーザーや切削加工で作るという技術を作ったんです。最初は革をスキャンして作っていたんですが、リアルにすればするほど、革製のダッシュボードには見えなくなる。デジタルでモデリングした方が、本物に近いということが分かりました。
 
天津さんの仰る通り、リアルなだけでは済まされないということを感じていて、3Dも含めて、デジタルでの表現の難しさを実感しています。
AIとかディープラーニングなど、人工知能が進化しているとは言っても、そこの按排は人間が決めなくてはいけないので、人間の仕事はやはり必要だと思っています。
 
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林: お二人の対談は今日が初めてということなので、「A01 ver. Head Dress」のコラボレーションがどうやって生まれたのかを聞かせてもらえますか?
 
天津: 「ウェディング」というテーマに対し、クラシックな表現方法ではなく、立体で作りたいという想いがあったんです。HANAE MORIのウェディングは、既に強いイメージがあると思うので、僕が手掛けることで何が変わるのかな、と。
 
僕のオリジナルの蝶々と葉をモチーフにしたデザインを元に、「デジタルデザインワーク」と「3Dプリンター出力」というテクノロジーを使って、ヘッドドレスを作りました。
 
林: やりたいことがあって、それをカタチ化してくれるパートナーを探すうちに、ケイズデザインラボに出会った、ということですか?
 
天津: そうです。原さんには、このコラボレーションの前にもお会いしたことがあったんですが、作りたいイメージを相談して、お願いすることになりました。
 
林: テクノロジー側からは、「感覚的な要望を、数値化してほしい」ということも言われたのではと思いますが、実際にはどのようなやり取りをしたのですか?
 
天津: 僕は、アナログな伝え方しかできないので、デッサンを見せて、「こういうテクノロジーが向いている」とアドバイスをもらいながら進めました。
 
林: これは、ケイズデザインラボのスタッフが手掛けたのですか?
 
原: はい。これを担当したのは、美術大学で講師も務める、造形力のあるスタッフです。どんなデータで、どういう3Dプリントをすれば良いかという選択が重要なので、エンジニアであるだけではなく、クリエイターが表現したいことを感覚的に理解できる人でないと難しい。だからこそ、知識と経験とノウハウが必要だと思います。
 
林: やはり「ファッションとテクノロジー」、「アートとテクノロジー」の融合を起こすためには、両方に興味がある人が増える必要がある、と。
 
原: そうですね。
 
天津: 僕も同意です。例えば、ニットのオーダーをするとき、同じ指示をしても上がり方が全く違うので、中間に誰が入るかでデジタルはすごく変わるのだろうと思います。
 
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★ ★ ★ 
<質疑応答>
参加者A: 3Dテクノロジーの活用で、経済合理性の可能性のあるものは?
 
原: 3Dテクノロジーについては、よく経済合理性の話を耳にしますが、ポイントは「今までできなかったことができるかどうか」ということだと思います。義肢でも、3Dプリンターでしか表現できないような、ファッショナブルなモノも作られていますし。
3Dプリンターで作られた人工骨は、ビタミン剤なども練り込んで作ることができるので、埋め込んだ後に自分の本当の骨になるスピードが、従来の人工骨よりも遥かに早いです。
 
特に日本が陥りがちな問題でもあるのですが、こういったモノがどんどん開発される中で問題になるのは、コストや効率性重視になってしまうこと。でも、本来は、「できなかったことができるようになるということを、どう発見していくか」ということの方が重要なはずです。そこに重心を置いていかないと、3Dテクノロジーを新しいモノに活用していくことは難しいと、僕は思っています。
 
天津: 経済合理性という視点で言うと、価格が高いことで、販売に至らなくなってしまうケースもありますよね。そういう意味では、オートクチュールに近い気もします。好きな人は、価格がいくら高くても買うでしょうし、逆に、大量生産をして価格を抑えても、思うように売れなかったり…。
 
原: テクノロジーではないとできないことを見出すことも必要ですが、その進化のスピードを見越したビジネスを考えていく必要もあるのかな、と思っています。
 
参加者B: ファッションの新たな可能性を引き出した、あるいは、引き出す可能性があるという事例を教えてください。天津さんは、「できなかったことができるようになる」という視点で、服作りにどんなことが考えられるか、教えてください。
 
天津: 「A01 ver. Head Dress」もそうですが、金型から作るというアナログな方法でも、ある程度はできたと思うんです。でも、「できないであろう、と思われていたことができる」ということが、一番良いことだと思います。
 
ファッションショーでは、「あれは、一体どうなっているのかな?」と興味を持ってもらえるようなことを伝えたいという想いがあるので、デジタルをツールの1つとして使っています。なので、デジタルにこだわっているというわけではないのですが、今はデジタルがしっくり来る、という感じです。
 
参加者C: 小売りの在り方は、今後どういう風に変化していくと思いますか?
 
原 : Amazonのように、リアル店舗の位置付けが変わってきていることは、ヒントになると思います。データ化したものを3Dプリンターで出力したとき、イメージ通りに出てくるかというと、意外とそうでもない。出力された見本品を見たり、3Dプリンターを体験した上でデータを購入するということもあると思いますが、体験とどのように融合させるのかは、これからの流通に求められることではないかな、と思います。
 
参加者D: 「これは、人間じゃないとできない」というモノはありますか?
 
天津: 音楽と一緒かな、と思います。元々は、音楽もライブで聴くことから始まり、「音」を持ち帰ることはできなかった。それが、CDが普及して、オンラインでデータが買えるようになった、という現在の状況があると思うんです。
そういう意味で、データを購入して、3Dプリンターで出力するような時代が来る、ということを考えると、どんな付加価値を与えられるかな、と思います。
 
ネットショッピングでもそうですが、想像で購入したモノの返品率はすごく高い。それは、そこに付加価値や、人と人とのコミュニケーションが無いから。そういう意味でも、技術はコミュニケーションで埋められている部分があるように感じています。
 
原: CADは、寸法を提示して書くモノなので、誰がやっても均一の設計になる、つまりは標準化ツールなんです。本当は、「この人じゃないと、このデータは作れない」というツールも必要になると同時に、これからは、デジタルを駆使する職人やクリエイターが重要視されると思います。
 
使う人によって結果が異なるツールは、大量生産の時代にはすごく困ったと思うんです。でも、これからはストーリー性の時代。最後に、誰がどういう筆を付けたデータかということが、きっと付加価値になる。そうした付加価値が、データの価値を変えるんじゃないかな、と僕は思うんです。
 
天津: デジタルツールを使うにしても、僕が使わないとできない表現方法がある、というカタチになれば、それは面白いですね。
 
原: そうですね。これからが、そうしたストーリー性が重要になると思っています。
あとは、デジタルを使う職人やクリエイターのポジションも含めて、価値を認めていくということも必要になって来るんじゃないかな、と僕は思っています。
 
林: 原さん、天津さん、ありがとうございました。

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