未来を試す

第5回 「みらいファッションラボ」イベントレポート 中編

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登壇者:
久保 友香さん(東京大学大学院 情報理工学系研究科 特任研究員)
進藤 郁子さん(株式会社資生堂 ヘアメイクアップアーティスト)
北川 竜也さん(株式会社三越伊勢丹ホールディングス 情報戦略本部)
林 信行さん(ITジャーナリスト兼コンサルタント ifs未来研究所 外部研究員)

 
レポート前編はこちらから
 
★ ★ ★ 
林: それでは、進藤さんお願いします。
 
進藤郁子(以下、進藤): 株式会社資生堂 ヘアメイクアップアーティストの進藤郁子です。私は、テクノロジーやバーチャルとは真逆の、ヘアメイクという感覚の世界に身を置き、「こんなにテクノロジーが進んだら、私の仕事が無くなっちゃうんじゃないか」という側にいます。
 
まずは、私の仕事内容をお話します。資生堂に所属する約40名のヘアメイクアップアーティストの仕事は、「クリエイション活動」、「美容情報開発」、「美容技術教育」という、「3つのセッション」が大きな柱です。
 
私は、「クリエイション活動」として、自社の宣伝広告のヘアメイクをしたり、東京、ニューヨーク、パリのコレクションにて、モデルさんたちにヘアメイクを行っています。他にも、ヘアメイクの大会に出場したり、メディアに出て、トレンド情報やヘアメイクの方法をお伝えしたりもします。
 
そして、みなさんの役に立つ「美容情報開発」として、ファッショントレンド分析をした上でヘアとメイクのスタイルを作り、そのハウツーと併せて、半年後のトレンド情報を年に2回社外に発信しています。また、私の所属する部署では、商品開発に役立ててもらう目的で1年半後のトレンドを分析予測する「ビューティートレンド」も行っています。
 
今までのファッショントレンドは、インターカラーが発表され、コレクションを行ない、雑誌に掲載されるという、企業やデザイナー発信のトレンドの作られ方をしていました。でも、ここ数年、街頭や若い方から発信されるトレンドが出てきているので、そうしたことにも分析するようにしています。
 
その他に、実際に店頭で販売される商品のカラークリエーションや美容ソフト開発を行ないます。昨年の9月には、資生堂ヘア&メーキャップアーティストがバックステージから発信する、“スピーディー&テクニックフリー”なアイテムとして、「PLAYLIST」というブランド開発に携わりました。
 
販売は、オンラインストアとザ・ギンザのみなのですが、「アーティストキット」というスペシャルキットでは、一人ひとりの顔立ちに合わせて、資生堂に所属するアーティストが、「あなただけのメイクアッププラン」を作成します。
約40名の中からアーティストを選択し、顔写真をアップロードした上で、3つの質問に回答することで、メイクアッププランと使用アイテムの入ったスペシャルキットをお届けするシステムです。
 
そして、「美容技術教育」。美容師さんやビューティーコンサルタント(美容部員)向けのセミナーを開催したり、お客様の前でデモンストレーションを実施しています。
また、SABFA(Shiseido Academy of Beauty & Fashion)という、美容師資格を持つ方のみを対象とした学校での指導を行っています。資生堂のメイクアップアーティストたちが講師の中心となり、教育に携わっています。
 
進藤さん
 
林: 久保さんのお話を聞いて、何かインスピレーションが生まれたりしましたか?
 
進藤: ビューティークリエーション部では、何十年もの間、渋谷と原宿と銀座で、約300名の方を街頭撮影してきたのですが、先ほど久保さんが仰っていた「プラスチックコスメ」のような、二重まぶた糊やカラーコンタクトをする方が多いことを実感しています。
ニューヨークやパリ、中国でも撮影をしているのですが、こんなにもメイクもヘアもばっちりな、まるで美容院帰りのような状態で街を歩いているのは、日本だけ。一般の方々も高いヘアメイク技術を持っているにもかかわらず、テクノロジーでますます「盛る」ことを追求する、日本人の美への探究心はすごいな、と改めて感じました。
 
久保: 今は、ナチュラルメイクが多いですよね。
 
進藤: そうですね。雑誌は特にナチュラルメイクになっていると思います。最近では、街頭でもまつ毛もあまり上げなかったり、つけまつ毛を使用した目元をポイントにしたメイクが年々減りつつあります。一方で、海外ではまだまだそうしたメイクが主流です。
 
久保: ナチュラル志向は、このまま続くんでしょうかね? 「盛り系」のビジネスの方と話をしていると、みんな気にしているのですが…。
 
進藤: 日本人特有の考え方なのかもしれませんが、「本当はやっているんだけど、頑張っていると思われたくない」という感情がありますよね。でも、数年前には、ハイライトとシェーディングで顔の骨格を立てていくような、海外発信のメイク方法「コントゥアリング」が流行したりと、盛りたいんだか盛りたくないんだか、ちょっと分からないところもあって。あと数年は、ナチュラルが続くのではないかな、と思っています。
 
久保: いわゆる「ナチュラル盛り」ですよね。
 
進藤: そうですね。ギャル時代の盛りではなくて。
 
久保: 見た目がナチュラルになっているだけで、人工的な作業は多いのですね。
 
進藤: あとは、「元々こういう顔の人」と見られたい人が多くなっているのかな、とも思います。まつ毛エクステや、眉毛をカラーリングすること、タトゥーなどもそうですが、「この盛った顔でありたい」という願望が、年々強くなってきているように感じます。
 
久保: 技術の発展は、まさにその方向だと思います。技術者は常に、自然な人工物の開発を目指していると思います。
 
林: 日本は特殊とおっしゃっていましたが、日本以外の国々は同じ傾向にありますか?
 
進藤: 日本人の方は、トレンドや周りの目を気にしながら、ヘアメイクしている方が多いです。海外では、オフィスにはナチュラルで出勤するけど、ディナーに行くときには頑張るとか、シーンに合わせてヘアメイクをする方が多い傾向にありますね。
 
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<レポート後編に続く>

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