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【うろうろアリでいこう!】Story2 「うろうろアリ」との出会い

うろうろアリでいこう!_logo

今から3年前まで、
僕は家族とともにアメリカの西海岸に住んでいました。
サンフランシスコ近郊にあるバークレーという街。
ヒッピー文化発祥の地であり、
自由と自然と平和を愛する
独自の先進的な価値観とライフスタイルが息づく街です。
 
そこで僕は、築100年以上にはなろうかという
古い一軒家の1階部分を間借りしていました。
美しい裏庭を持つ居心地の良い空間をとても気に入っていたのですが、
年代物の家ゆえに不具合に事欠かず、
大雨の際などは、必ずどこからか雨漏りするのが厄介でした。
171020_うろうろアリ_画像
10月末のハロウィンが終わったある日のこと。
小学生の娘が、トリック・オア・トリートで集めた
バケツいっぱいのお菓子をテラコッタの床に並べ、
丁寧に品定めをしていました。
 
急遽、出かける用事ができ、
封を開けたお菓子をそのままに外出。
大して気にとめることもなく普段通りに帰宅しました。
そして僕らは驚くべき光景を目にしたのです。
 
黒褐色の帯。
微妙にもぞもぞ動く帯。
アリ、
アリ、アリ、
アリ、アリ、アリ、
アリ、アリ、アリ、アリ、
アリの隊列ではありませんか!
古い木の窓枠の隅の穴から湧き出でた黒褐色の帯。
娘が開け散らかし床の上に放置したクッキーに連なっています。
あまりの整然としたさまに、
しばし言葉を失い、じっと見入ってしまいました。
クッキーに一直線に向かうアリ。
小さな欠片をテキパキと運び戻るアリ。
ひとかけらも残さず巣に持ち帰るぞという
気迫を感じる力強い行列です。
 
ふと、気がつきました。
隊列から離れて、うろうろとさまようアリがいるのです。
仲間が熱心に働いているときにいったい何をやってんだか・・・。
そうこうしているうちに、かのアリさん。
テーブルの脚を駆け上り、
何度もあちこち行き来しているうちに、
ついに、チョコレートの山に遭遇!
新しい、夢のような餌場を見つけたのです。
 
一見サボっていそうなアリが新しい価値を見出してくる。
隊列のスピードについていけなかったのかもしれない。
隊列からはぐれ、道を誤ったのかもしれない。
餌を運ぶというミッションから言えば、
このアリは失格です。
でもそんなアリが、今よりもっと素晴らしい餌場を発見したのです。
面白いと思いました。
うろうろしているだけのアリ。
この「うろうろアリ」こそが、
今の社会にも必要なのではないか。
その瞬間、僕の中でパズルのピースが
カチッとはまった気がしました。
 
動物生態学やアリの社会性について研究している
進化生物学者・長谷川英祐先生によると、
休んでばかりで働かないアリがいる巣の方が、
全員が目一杯働くアリの巣よりもリスクに強く、
実は長続きするのだそうです。
 
さらには、しっかり者のアリばかりがいるよりも、
間違いをおかす、うっかり者のアリがいるほうが、
その学習効果によって組織としての全体効率は上がるのだとか。
 
また、大きなコロニーに属するアリの方が、
小さなコロニーのアリよりも一匹一匹の体のつくりが雑で、
取り替えが効く存在になっていくのだそうです。
単に目の前の効率性や生産性、規模の大きさだけでは到達し得ない領域が
アリの世界にもあるのですね。
 
グローバル企業という大組織とともに
新たなビジネスモデルの構築に取り組んできた僕は、
ひとりひとりの社員は非常に優秀で、
極めて効率的に組織運営されているにも関わらず、
既存の枠を越えられない、新たな価値を生み出せない、
数多くの事例を見てきました。
 
社会にイノベーティブな変化や価値をもたらすには
組織とそこに所属する個人の関係を
大胆に見直す必要性がある。
 
この切り札となるのが「うろうろアリ」の存在ではないか。
これまで常識であったような物事さえ猛スピードで変化し、
同時に不確実性が高まる現代。
人間の社会や組織、集団において、
この「うろうろアリ」の存在がいかに重要かと考えるのです。
 
次回以降、経営学や心理学の視点から
それらを具体的に見ていこうと思います。
 
出典『働かないアリに意義がある』長谷川英祐(KADOKAWA)2016年
 
★「うろうろアリでいこう!」の連載記事は、こちらからご覧頂けます。
 

唐川 靖弘プロフィール
外資系コンサル、広告代理店戦略プランニングディレクターを経て、2012年から米国コーネル大学ジョンソン経営大学院 Center for Sustainable Global Enterprise マネージングディレクターとして、多国籍企業による新規ビジネス開発プロジェクト・新市場開拓プロジェクトをリード。
同時に、「うろうろアリ」を育成することをモットーとし、自身の会社EdgeBridge LLCを基点に、ifs未来研究所(伊藤忠ファッションシステム)の外部研究員、ファッション系広告代理店戦略顧問、大手企業人材育成プログラムディレクター、大学の客員講師としても活動。1975年広島県生まれ。
Cornell University MBA (経営学修士)。INSEAD Executive Master in Coaching and Consulting for Change(2019年修了予定)。
160610_唐川さん

©2017 Yasuhiro Karakawa/EdgeBridge

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