未来を試す

【うろうろアリでいこう!】Story 14 深い人間理解と「やってみなはれ」

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うろうろアリ育成プロジェクト、
核心に迫っていきます。
 
個人として組織として、いかに
うろうろアリの力を引き出し
活かし育てていくか・・・
読者の皆さんの関心も
ここにあることと思います。
時代が大きく変わっていく中、「社会に
価値ある革新的な変化をもたらすためには
個人と組織の関係を大胆に見直す必要がある」
と先に述べました。このことについても
併せて考えていこうと思います。
 
うろうろアリの10箇条にも掲げた通り、
うろうろアリは孤独を愛し味方とし、
新しいことに果敢にチャレンジする存在です。
ゆえに、組織の中では、上になびかない
「生意気」な存在とみなされることも
多々あります。
うろうろアリの宿命のようなものでしょう。
要するに、組織においてうろうろアリを
育て増やすことは容易なことではありません。
しかし、うろうろアリを単なる変わり者扱いし
目先の効率性に目を奪われ、
はたらきアリで組織を固めてしまっては、
その組織の長期的な成長は望めません。
蟻の世界でも、
うろうろアリがいなくなった蟻の巣が、
いずれ新たな餌場をなくし滅びていくように、
人間社会でも、うろうろアリが定着しない組織は、
長期的にみれば新しい価値作り=イノベーションを
実現することができず、衰退していくことに
他ならないのです。
 
わかった、うろうろアリの必要性は理解した、
でもどうやったらうろうろアリを
組織に内包し育て活躍させていくのか?
それが分からないという
経営層やマネージャー層の皆さん。
または、自分はうろうろアリではと
うすうす気付いているけど、
どうやったらやりたいことを
かたちにできるのか、
組織の中での立ち位置がわからない、
という未来のうろうろアリの皆さん。
ここから一緒に、組織における
「うろうろ」の生き方・活かし方を
考えていきましょう。
 
お話したい点が大きく二つあります。
 
まず初めに挙げたいのが
「プロジェクト思考に基づく
実験的な実践」の重要性です。
この場合のプロジェクトとは、
小さい単位や短いサイクルで、
これまでにない
チャレンジや試みをなすことで、
新たな商品やサービス・事業などの
プロトタイプとなるようなものです。
革新的な試みだけが
対象となるわけではありません。
日々のちょっとした気づきや改善など、
毎日の仕事でも全てが
プロジェクトになり得ます。
大切なのは、考え無しに現状踏襲で
ただ進むのではないということです。
 
つまり、うろうろアリがうろうろして
気づいた芽には、とにかくまず挑んでみる。
ただし、組織全体で挑むには
リスクもあります。
かといって簡単に却下するのではなく、
まずは期限を決めて小規模で
実験や検証をしてみるのです。
まさに、サントリー創業者鳥井信治郎の名言
「やってみなはれ。やらな分からしまへんで」
の精神ですね。
鳥井信治郎は、未知の分野に挑戦しようとして
周囲から反対を受けるたび、
この言葉を発して決して諦めなかったといいます。
 
こうして、制度や仕組みの力ではなく、
具体的なプロジェクトなど実践を重ねる中で、
メンバーのマインドセットや
行動そのものを変えていく。
そうして初めて、新たな価値を
生み続けようとする精神が
組織風土として根付き、
持続的な力の源泉になることが
出来るのだと思います。
ただし、このような「やってみなはれ」
プロジェクトの場合、組織の三大蟻地獄の
項目で述べたうちの二つの地獄
「完璧主義地獄」と「短期成果地獄」に
陥る可能性があるので、
その点には注意が必要です。
 
そしてもうひとつ、僕が提案するのが、
組織でうろうろアリを増やし育てる方法を
7つのPで体系化した、名付けて、
“Path to Playful Ants”です。
Pathは小道、うろうろするための
通り道、ということですね。
直感や好奇心に基づいて
うろうろすることにも一理あるのですが、
組織や個別のプロジェクトの中では、
より実践的に機能するための肝心な回路が
いくつかあるのではないかと考えており、
それをPathという言葉でまとめてみたものです。
 
7つのPをそれぞれ説明していく前に、
前提となる重要な考え方を
共有したいと思います。
例えば、Story13で述べた
スカンク・ワークスなど、
組織の中にイノベーションをもたらす
プロジェクトを行う際、
その根幹となるものです。
 
それは、プロジェクトの中に、
そのプロジェクトの骨格を成す
太いパイプラインとして
「3つのインサイト」を通すこと。
インサイトとは、簡単に言えば、
対象となるものに対する洞察、
深い理解ともいうべきものです。
 
まず、これまでにない革新的な
商品・サービス・事業の創造や、
既存事業の大胆な変革はもちろんのこと、
いかなるイノベーションの場合であっても、
必ず考えなければならない2つのインサイト
として、「顧客インサイト」と
「ビジネスインサイト」が挙げられます。
 
顧客インサイトは、文字通り、
ターゲットとなる顧客の嗜好や
行動に対する深い理解。
ビジネスインサイトは、
持続的に成立する
ビジネスモデルとするために
クリアしなければならない、
様々な要件ともいうべきものです。
 
教科書通りにやれば、
バリエーションはあるにしても、
このふたつのインサイトをパイプラインに
検討を進めていけばいいわけです。
しかし、僕がグローバル企業と
様々な新市場開拓プロジェクトを
進めていくうちに、特に、
チームの誰ひとりとして経験がないような
全く未知の未来の領域へ
チャレンジする場合には、
このふたつのインサイトだけでは
不十分であることを
強く認識するようになったのです。
 
組織の三大蟻地獄のひとつ
「役割仮面地獄」で述べたように、
何かの目標に向かって集団で
動いていこうとすると、
役割や機能といった仮面の元に、
ひとりひとりが持つ優れた個性や能力を
封じ込めてしまいがちになります。
あるいは、多様性が高い組織であれば特に、
共通認識を持ちやすいよう
物事をロジカルに説明しようとするがあまり、
無限大に面白いアイディアでも、
最大公約数的に小さくまとまってしまう
恐れも出てきます。
 
これらを避けるためには、
チームの中におきる様々な軋轢や
コンフリクトを当たり前のものとして捉え、
メンバーひとりひとりに対する
深い人間理解に基づいた
チーム編成・運営を行うことが必要です。
それぞれのメンバーが持つ、
多種多様な思考や感情を
いかに最大の力として
引き出し発揮しあえるかを考える。
これが極めて重要ということなのです。
 
言葉を変えれば、
プロジェクトの成功要件を
顧客視点やビジネス視点といった
外的視点で周到に検討したとしても、
それを推進していく人々やチームのこと、
いわば内的な要因を同じくらい
周到にケアしていなければ、
プロジェクトは早晩崩壊する・・・
ということです。
その極めて重要な内的要因を
「ヒューマンインサイト」と名付け、
3つめのパイプラインに位置づけます。
 
この「ヒューマンインサイト」、
真正面から取り組もうとすると、
面倒ですし手間もかかります。
しかし、それがあって初めて、
一人ひとりの個の持つ力が
最大限に引き出され、
これまでにない価値が創られる。
つまり、うろうろアリという
視点から考えても、
この「ヒューマンインサイト」が
太く強く組織やプロジェクトの骨格を
成すことで、個人としては、
自分の限界を超える領域にまで
うろうろと踏み込んでチャレンジ
出来るようになりますし、
組織としても、うろうろアリを
最大限にうろうろさせ、
新たな餌場=新たな価値を
創造し続ける、ということに
つながります。
 
以上、うろうろアリを
活かし育てるための
「プロジェクト思考に
基づく実験的な実践」と
「ヒューマンインサイト」の
重要性について説明してきましたが、
次回は、
より理解を深めていただくため、
具体的な事例として、
僕がアフリカのスラムで経験した過酷な
プロジェクトについてご紹介します。
 
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★「うろうろアリでいこう!」の連載記事は、こちらからご覧頂けます。

唐川 靖弘プロフィール
外資系コンサル、広告代理店戦略プランニングディレクターを経て、2012年から米国コーネル大学ジョンソン経営大学院 Center for Sustainable Global Enterprise マネージングディレクターとして、多国籍企業による新規ビジネス開発プロジェクト・新市場開拓プロジェクトをリード。
同時に、「うろうろアリ」を育成することをモットーとし、自身の会社EdgeBridge LLCを基点に、ifs未来研究所(伊藤忠ファッションシステム)の外部研究員、ファッション系広告代理店戦略顧問、大手企業人材育成プログラムディレクター、大学の客員講師としても活動。1975年広島県生まれ。
Cornell University MBA (経営学修士)。INSEAD Executive Master in Coaching and Consulting for Change(2019年修了予定)。
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©2018 Yasuhiro Karakawa/EdgeBridge

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