未来のおしゃべり会

【10月29日 おしゃべり会・第2回】面白いって何だろう? 糸井重里が考える「面白い」とは

_DSC3265

川島蓉子と社長の未来のおしゃべり会
ゲスト:糸井重里さん(株式会社東京糸井重里事務所)
開催日:2015年10月29日(木)

◀◀第1回記事はこちらから
  
★ ★ ★
川島蓉子(以下、川島): 糸井さんが、面白いって思うことって何なんですか? というか、面白いって何なんでしょう?
 
糸井重里(以下、糸井): 面白いって主観ですからね。大前提として、自分が面白いって思うかどうか。だけど、面白いの要素を探ることはできる。おそらくひとつは「共感性」で、もうひとつは「意外性」。
 
いま僕が夢中になりつつあるのがラグビーなんですが、全然わからないかなと思ったら、意外とわかる。でもよくわからない。そこがものすごく面白くて(笑)。思ったよりも共感が多いんですよ。その時の「あ、いける」っていう感覚って、子どもって初めてのことが出来るようになったり、わかった時に笑うでしょ? あれに近い。
 
そういう「初めてできた!」「わかった!」ということに毎日出会えるといいなって。ラグビーを見ている時の自分が、まさしくそうなんです。
 
川島: 暮らしの中に次々出てくるんですか?
 
糸井: 探しているつもりはないんですが、人よりも退屈していることに対する感受性が強いんです。ああ退屈だって思う心がすごく強い。みんなが退屈していないのに、退屈だなって言う。映画館の中で注意されたこともあります。後ろの席の人に「あんまり動かないでください」って。
 
川島: つまり、けっこう欲張りなんですね。
 
糸井: 欲張りじゃないんです! 欲張りじゃないんですけど、居心地が悪い。すべてのことを面白がりたいっていうほどポジティブじゃなくて、面白くなければこの場にいたくないっていう気持ちが自分のベースにあるんです。いまのこの場所でも面白くしないと自分が退屈しちゃうので一生懸命ですし、大変なんですよ、忙しくて(笑)。誰も見てないところでも退屈してますし。
 
一同: (笑)
 
_DSC3356

糸井: いまでいうとラグビーを知れば知るほど面白いんです。行くも行かないも自分の自由、つまらなかったとしても誰にも迷惑をかけないわけだし、そこで何か発見できたらうれしいじゃないですか。それは仕事でも一緒です。
 
川島: 仕事と仕事じゃないことの境界はないんですか?
 
糸井: ありません。今の仕事は、直接的に自分や社内のメンバー、関係する人たちの生き死ににかかわると思ってやってます。
ここまでできてるからうまくいってるなっていう考え方はできないんです。うまくいってる時にはうまくいかない可能性がある。だから、いいとか悪いという範疇を超えてすべてに一生懸命ですね。
 
川島: 解き方はいろいろあっていいし、それを面白がってやっていけたらもっといい。じゃあ、「しといて」と言って、そこまでできていないことってあるじゃないですか。そういう時はどうします? 会社ってそういうことがあるじゃないですか。
 
糸井: そういう時は「案の定」って思います。いつできるんだろうなーって。あるいはその仕事をその人に任せたのが、もともと間違っていたのかなって思ったり、一回全部やめようってすることもある。
 
解ける問題を考え直すこともあります。でも、できてないっていうのは、そんなにないですよ。出来る問題として設定されてるから。面白がってやってくれればいい。
 
ただ、仕事なのでそんなに面白いものばっかりじゃないですよね。アイデアが「価値」を生み出さなければならないって思った時、ちょっとした苦しさがあるわけで。「面白い=価値」だし「美しい=面白い」。やっぱり真顔になってしまう面もあるわけです。
 
そんな時、解決しやすい問題を先に考えて、すっと逃げてみたりすることもあります。難しい問題を先送りにすると、いまなら解決できるっていう時が、ふっとやってくるんです。
 
川島: そこはギューッと考えて、ちょっと辛い思いもして、いつか解決していけばいいんですものね。でも、解決できるっていう時は予測できないものですか?
 
糸井: 無理矢理に締め切りがあったときには出しますけど、その時に考えていたアイデアが一番じゃないって思ったら、「いまは締め切りだから仕方なく出すけどあとで変える可能性がある」って自分の中では思ってます。保留しておくというか、寝かせておくというか。そういうものだらけです。
 
川島: そういうことってすごくいっぱいありますよね。きちんとスケジューリングさせて、同じように回転させようとする企業が多い気がします。
 
糸井: 工業社会の時代のやり方はそれがよかった。それは否定できないことで、僕は工業製品をユーザとして使ってますし、すごいなって思うんですけど、会社の中でのきちんきちんじゃない。
 
きちんきちんをディフェンスだと考えたらオフェンスがなかったら、その会社はキープできなかったはずで。そういう意味では、経営者の立場の方であれば、誰もが本当はわかっていることなんじゃないかと思う。
 
フローとストックってあるけど、どっちでもないっていう状態のものもあるじゃないですか。宙に漂っているみたいなこと。
 
川島: この前、事前の打ち合せで面白かったのは、糸井事務所ではいろいろプロダクトをつくってますが、すごくたくさん売れるものとちょっと売れるものがある。それがいっぱい並列して同時に成立する会社を作っていきたいっていうお話を聞いて驚いたんです。壮大な実験ですよね。
 
_DSC3543

糸井: ちょっと口はばったい言い方ですが、僕らはクリエイティブで飯を食っていくのが夢ですから、そうしていかないと成り立たないんですよね。
 
思いっきり冒険で突っ込んでいったのだけれど一銭にもならないっていうのもある。でも、全然いいよと。その両方をやりたいのが人間だから。失敗した中にも次の何かがある。
 
一人でやっていた頃は、クリエイティブの供給源、仕入れ先について考える必要はなかった。人間だったら思うようなことをちゃんと思いつけばいいと思っていたんです。
 
でも、流行について書くライターさんだったら、その供給源が必要ですよね。僕は当時、そういうのがダメだと思っていたんです。
 
ただ、面白いことを考えている人っていうのは、全部がある意味供給源だと思うようになって、仕入れを確保するっていう仕事はものすごくコストのいる仕事だけど大事なこと。
 
毛糸の会社をやってる人にとっては、仕入れは毛糸なんですが、僕らはクリエイティブ全般の会社です。ある作家がうちで展覧会をやった、その作家の友だちがいいねって言ってくれたら、仕入れ先がひとつ増える。でも、あそこで展覧会をやるのはどうかなっていう人がいたら仕入れられない。そういう時には、何故仕入れられないかを考える。時期の問題なのか、自分たちに何か誤解があったのではないかとかをゆっくり考える。
 
市場を考えることと、仕入れ先を考えること、その両方が非常にコストのいる話だと思ってます。
 
一番の供給源は頭の中にあって、でたらめに飛び交っているものですよね。さっき、面白いということの要素に共感性と意外性と言いましたが、「偶然性」っていうものもありますね。偶然は自分を変えてくれるもの。自分のいままでのルーティンを変えてくれるものだから、それは神様に絶えず会っているようなもの。
 
受け止める自分がいつでもキープできていないとダメですよね。
 
川島: いろんなものが日々あって、自分が開かれていれば入ってくるけど、その中でこれはいいけどこれはダメだっていうことがありますね。
 
糸井: ありますね。それがよくないって思った理由を自分で考えたいですね。でも、よくないけれど力があるものって実際にありますから。
 
だいたい世の中がガラッと変わる時には、ちょっと下品だけど力のある人たちが変えていくんです。
 
例えば、うまいものの話で言えば、ひと昔前だったら、うまいものを一番よく知っていて信用がおけたのは雑誌社の人だった。雑誌社の人たちは、仕事も仕事だし、おつき合いも含めて相当いいものを追究していったと思うんです。でも、いまその人たちがひいきにしていたお店は大規模化していったり、淘汰されてしまっている。
 
そして、グルメはランキングになっちゃったんですよね。また、金はあるけどどう使ったらいいのかわからないっていう、羽振りのいい若者がいて、そういう人たちがいわゆる古典的な美味いものを出す店に来て「この店貸し切りにできないの?」とか「裏メニュー出してよ」と言う。それに応じられれば大規模化して生き残れるし、そうでない店は淘汰されていく。ランキングの世界で重要視されるのはコストパフォーマンスで、情報が重要だから、ブランド食材みたいな話が点数に追加される。みんなはラーメンじゃなくて情報を食ってる。そういう時代のランキングが次のお客さんを迎え入れるわけなので、完全に変わってしまうんです。
 
そこで、「品がない」とか「前の時代はよかった」っていうのは簡単なんです。でも、ちょっと下品で金を持ってる人が次の時代を作るわけだから、嫌だけどパワーがあるように見えるものは研究の対象にしないと、淘汰される老舗になってしまうわけです。
 
_DSC3690

川島: 嫌だけど研究対象の人とは付き合うっていうことなんですか?
 
糸井: 付き合わないんです、これが(笑)。面白いとは思うんですけど、彼らが持ってる価値観って何が源泉なんだろうなっていうことを勉強します。ざっくり言うと永ちゃん(矢沢永吉)なんですよ。若くして儲かった人たちがやりたがっていることって、フェラーリに乗って、足の長いおねえちゃんと一緒に居て、ヒルズにマンションを買うことなんですよ。そこが分かっていればわかる。
 
いつでも次の時代の礎になったようなものって、前の人から下品に見えて、なおかつ金だけで何かをやってるように見える。でも、それを軽蔑するんじゃなくて人はそういうものだ、歴史はそういうものだという受け止め方をしないと、単なるスノビズムに陥ってしまう。
 
俺はどうするかっていうと、町人として近所で人気のある人になりたいわけです。
 
やっぱり、おはようございますってニコニコいいあえるような町内を持ってるかどうかは大切。みんなに人気がなくてもいいから、近所で人気のある人になりたいんです。成仏したいんです(笑)。

  

第3回▶▶ ブランドとは ライフのヒストリーである

すべての記事を見る

ifs未来研究所について

〒107-0061
東京都港区北青山 2-3-1 CIプラザ2F
未来研サロン WORK WORK SHOP

Tel: 03-3497-3000
Fax: 03-3497-4555

お問い合わせはこちら

Twitter Auto Publish Powered By : XYZScripts.com