未来のおしゃべり会

【12月4日 おしゃべり会・第3回】会社の経営において「愛し過ぎ」から「愛」に変えるのが、すごくつらい。

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川島蓉子と社長の未来のおしゃべり会
ゲスト:寺尾玄さん(バルミューダ株式会社)
テーマ:ビジネスには、カッコいい感性が必要だ。
開催日時:2015年12月4日(金)
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第3回: 会社の経営において「愛し過ぎ」から「愛」に変えるのが、すごくつらい。
 
川島蓉子(以下、川島): 次に燃えるものがあるということでしたが、それは何ですか?
 
寺尾玄(以下、寺尾): そこは言えません(笑)。今回キッチンに入って、すごく発見があった。家電っていろんな種類がありますが、だいたいは使ったら終わり。
例えば、テレビを使うのって点けている時で、消したら終わりじゃないですか。でも、キッチン家電というのは、使っているのは作っている時なんです。
 
川島: もう少し詳しく教えてください。
 
寺尾: トースターを使う時は、焼いている時ですよね? それでチーンと鳴って終わったら、その後もう一回「食べる」という楽しみがあるわけなんです。キッチンで使う道具というのは、「その後の楽しみのためにある道具」。
 
しかも道具として、驚きや楽しさを体験できるという良さがある。ここは、技術が介入できるところでもあって。「もっと絶対良くなるんじゃないの?」と、一生懸命頑張れば頑張るほど、皆さんに喜んでいただける。
 
なので、先ほどの質問に答えると、私の中ではキッチンツールが今、非常に盛り上がっていて、燃えています。
 
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川島: 次なるキッチンツールは何か? みたいなところですね。寺尾さんの言葉から情熱が強く伝わってくるのは、寺尾さんご自身が食べることが大好きだからなんですよね。
 
寺尾: はい、大好きです。
 
川島: それは強いですよね。デザイナーにリアリティがあると、信頼できます。
 
以前、キッチン家電のワークショップをしたことがあって。参加者は男性も多いんですが、「普段の暮らしについてディスカッションしましょう」と言ったら、「僕は忙しくて、一切料理をしない」という答えが出て。そういう人が作る家電って言われても、どうなんだろう? と思ってしまったことがあります。
 
寺尾: だから、マーケティングリサーチ頼みになっちゃうんですかね。
 
川島: リサーチしなくても、というのは言い過ぎかもしれませんが、その人のリアリティが製品の中に盛り込まれていれば、いい製品ってできるような気がする。だから、寺尾さんがトーストの次に好きな何か」かもしれないですね。そこはあまり深くツッコミませんが。その製品はいつ頃登場する予定ですか?
 
寺尾: 来年の半ばを目指して動いていますが、秋頃になっちゃいますかね。さっき会社を出る時、「開発遅れてます」「なんだと!?」という話をしてきたばかりなので。
 
川島: いいもので、不便だけれど豊かなものが出て来るというのは、今の日本にフィットする価値軸の一つだな、という気が私はします。では、バルミューダ株式会社という会社の社長として、今社員が50人もいて、その社長のゴールというか、どんな風になるのが夢ですか?
 
寺尾: 実はここ3週間くらい、それについて深~く考えちゃっているところで、まだ答えが出ていなくて。前は明確にあったんですよ。我々は、「クリエイティブとテクノロジーの会社」で「家電メーカー」ではありません、と思っていて。「クリエイティブの魂で見たモノをテクノロジーの力で実現して、世界の役に立つ」ということだったんです。
 
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川島: カッコイイですね。
 
寺尾: 「世界の役に立つ」は変わっていません。じゃあ、どう役立つかということで、クリエイティブとテクノロジーなんですけれど、もう少し狭めた方がいいのかな、とか考えているところです。
 
でも、バルミューダを創業して、仮にも家電メーカーと言われるものになりましたが、そんなことになるなんて思ってもみなかったですよ。
 
川島: そうなんですね。
 
寺尾: 創業する前はミュージシャンをやっていたんですが、自分がまさか扇風機を作るだなんて……(笑)。
 
川島: 人生はわからないものですね。
 
寺尾: わからないですね。ただ、一貫して狙っているのは、「褒められたい」んですよ。そういう思いがすっごい強くて。
 
川島: それは、誰に褒められたいのですか?
 
寺尾: みんなに、です(笑)。常にどうやったら褒められるのかな、と考えています。
音楽をやっていた時には、クリエイティブ×サウンドが自分の仕事だった。しかし、それは夢破れたんです。
それで、次に何をしようと思った時に、クリエイティブ×テクノロジーになった。そこで世界の役に立つ、そして褒められると。このゴールだけはどうにも動きようがないんですね。
 
川島: その時、社員はどこにいるんですか? 社員にも褒められたい? 社員を褒めたい?
 
寺尾: それは褒めたくない。社員はやっぱり、世界から褒められるべきなんです。
 
川島: またカッコいいことを言いましたね。
 
寺尾: 例えば、会社に何人もプログラマーがいるんですが、プログラムの一行って、世界に対して何の役にも立たない。セットになったコードを書いたとしても、そのコードだけでは役に立たないんですよ。プログラムは、マイコンが搭載されていて、そのマイコンが命令するモーターやヒーターがあって、一個の機械になっていて作動した時だけ役に立つ。
 
会社の役割というのは、それぞれのスキルを持った人がいて、でもそのスキルだけでは役に立たないのを、まとめあげてパッケージにして、社会のメリットに変換する。
いわば、「まとめ」と「トランスレート」なんじゃないかな、と思う
んです。プログラム一行では役に立たないけれど、トースターの中では役立つ。
 
つまり、私が思っている社員と会社の関係というのは、会社は「それぞれの人々と社会とのパイプ役」なんです。そのパイプの効率がいい場合もあるし、詰まっている場合もある。この「通り」をいかに良くするかが経営の仕事で、社員に対してできる最大のことなんだろうなと思っています。
 
川島: 経営者は、そのパイプの詰まりを良くするってことなんですね。じゃあ、バルミューダにとって、「通り」がいい状況というのは、どういうことなんですか?
 
寺尾: 会社というのは、集団。社員の集まりですよね。その人々が、一生懸命仕事をする。その仕事の成果が最大になっている時が、通りがいい時ですね。
 
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川島: その時のバルミューダらしさはなんですか?
 
寺尾: らしさ。それこそ常に考えているところで。「バルミューダらしさ」ということを、私個人が気にし過ぎていたような気もしています。自分一人で創業して、いつの間にか家電メーカーになっていて、50人の会社になっていて、50人の集団なのに、私が一人で作ったものであって、法的には「法人」という人格を持たされていて。
 
私、ほとんど人生を会社に捧げているんですよ。それで捧げ切った時に、果たしてさっきのパイプ役として、最大効果を生んでいるのかなあと考えたりもする。だけど、近すぎるとマズいことになる。
 
川島: 何がマズいんですか?
 
寺尾: 愛し過ぎちゃうんですよ。
 
川島: そうですね……愛し過ぎちゃう。見えなくなっちゃうことがあるんですね。
 
寺尾: だから、ある程度、見えるところまで引かないといけないというのが、今の私の悩みです。「愛し過ぎ」から「愛」に変えるのが、すごくつらい(笑)。
 
川島: (笑)。でもそこをちょっとやっていただくと、より良い会社になるんじゃないですか?
 
寺尾: いや、絶対に良くなるんです。全部自分で抱え込んでいると、会社が自分の域を出ないし、もっとパフォーマンス出るだろうなと思っているところで、いろいろ考えて、考え抜いたあげく、「あ、これ一番悪いの、俺だわ」って気がついたんです。
 
川島: 考え抜いて、ようやくそこに行ったんですね。
 
寺尾: そうです。13年かかりました(笑)。
 
川島: そうですね。本当に正直で偉いですね。あとはできるかどうかですね。これからバルミューダがどうなっていくか、とても楽しみです。
 
寺尾: デザインの話という建前だったのに、こんな経営の話で良かったんですかね。
 
川島: これは「おしゃべり会」ですから。人が仕事と関わるってそういうことだと思います。
個人に立ち戻ったって似たようなもので、自分を愛さないと仕事にはならないけれど、愛し過ぎちゃうとロクな仕事にはならない。私は物書きだから自分の文章についても、全く共通で、その辛さはわかります。
 
バルミューダは、社員を50人も抱えているんだから、「通りを良くする」って簡単なことじゃないし、一人一人が「愛」を持って仕事をしてくれれば、ベストだと思うんですよね。でもそれは、とても難しいこと。バルミューダの今後に期待したいと思います。寺尾社長、ありがとうございました。
  
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寺尾さんとおしゃべりして ~川島所長のひとこと
 
控室ですっかり話が盛り上がり、その勢いのまま、お客様の前に登場してしまった「おしゃべり会」でした。その中身は、文字通りの情熱満載! 寺尾さんの持っている情と熱が、周囲を動かしてモノを創り出し、人々に伝わっていくのだと腑に落ちました。
 
暑苦しいほどの情熱って、今時かっこ悪いという人もいるけれど、私はこういう情熱は大好き! 聴衆の方々を見ていると、皆さんも魅了されていました。それはなぜなのか?
 
寺尾さんの剥き出しの情熱には、相手を思いやる気持ちが込められているから。そして、独りよがりの押しつけになっていないから。つい応援したくなってしまうのです。
 
そして何より、生み出されたトースターが、賢く愛らしく働いてくれるのは大きい。愛される寺尾社長のもと、バルミューダがどう歩みを進めていくかが楽しみです。
 
ifs未来研究所 所長 川島蓉子
 
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