未来のおしゃべり会

【12月7日おしゃべり会番外編・第1回】アフターインターネット時代の小売業に求められるものとは?

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川島蓉子と社長の未来のおしゃべり会・番外編
ゲスト:大西洋さん(三越伊勢丹ホールディングス 代表取締役社長)
    増田宗昭さん(カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 代表取締役社長兼CEO)

テーマ:みらいの百貨店、みらいのビジネス
開催日:2015年12月7日(月)
会場:代官山 蔦屋書店 ラウンジ「Anjin

ifs未来研究所の所長・川島蓉子が、「この人は絶対、面白そうだからお話を聞いてみたい!」と思う人を招いてトークをする「おしゃべり会」。
 
今回のゲストは、とてもビッグなお二人。三越伊勢丹ホールディングス 代表取締役社長の大西洋さんと、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 代表取締役社長兼CEOの増田宗昭さん。
 
実はもともと、お二人と所長の三人で会談をする予定でした。この鼎談が実現するきっかけとなったのは、「公開をしよう」という増田さんのひと声。そして、この会談が公開で行われることになったのです。
 
今回のテーマは、「みらいの百貨店、みらいのビジネス」
気さくなお二人は「どんな質問でも大丈夫」とのことですが、所長も少々緊張気味だったようです。一体、どんな話が飛び出すのでしょうか。では、トークの始まりです。

大西洋さんプロフィール
三越伊勢丹大西社長
おおにし・ひろし/1955年生まれ。慶応義塾大学卒後、79年伊勢丹(現・三越伊勢丹)入社。紳士統括部長などを経て、2008年に常務執行役員、2010年伊勢丹社長。11年三越伊勢丹社長。三越伊勢丹ホールディングスでは10年取締役、12年2月社長に就任した。
 
増田宗昭さんプロフィール
CCC増田社長
ますだ・むねあき/1951年生まれ、大阪府枚方市出身。同志社大学を卒業後、株式会社鈴屋に入社。軽井沢ベルコモンズの開発などに携わる。83年同社を退社し、「蔦屋書店(現・TSUTAYA枚方駅前本店)」を創業。85年カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(CCC)設立。
 
★ ★ ★ 
 
第1回: アフターインターネット時代の小売業に求められるものとは?
 
川島蓉子(以下、川島): 今日は、とても素敵な会社のリーダーをされている、ビッグなお二人を前に緊張しています。まず、「今日の装いのポイント」を聞いてみたいです。
 
大西洋(以下、大西): 今日はこういう場でお話をさせていただくということで、靴だけはいい靴を履いて行かないとマズいな、と思いまして。注目されるほどいい靴じゃないですけれど、ちょっと気にしましたね。
 
川島: ちなみに、どこのブランドの?
 
大西: シルヴァノ・ラッタンジです。言わなくても、川島さんならわかるでしょう。
 
川島: はい。でも皆さんにお伝えしないと。では、増田さんは?
 
増田宗昭(以下、増田): 僕は、丸首のTシャツと、Gパンと運動靴というのが、仕事をするときのファッションで、どなたに会うのも同じ格好なのですが、こういうちゃんとした場では、だいたい黒い服を着るようにしています。なぜ黒かというと、黒で揃えておけば安上がりだから。靴もズボンも、とっかえひっかえできるので、だいたい黒です。
 
川島: 今日増田さんは、素敵なグレーのジャケットをお召しですが。
 
増田: これは、エルメスです(笑)。
 
川島: やっぱり(笑)。社長たちのこだわりが見えたところで、次の質問にいきますね。「社長として、今日決断したこと」を教えてください。
 
増田: 決断は、瞬間瞬間でいっぱいしています。僕は会議をするとき、「決めることがない会議はダメだ」と常に言っていて、今日だけでもすでに10個以上は決めているかな。
 
大西: 「今日決めた」ということではなく、「今日、自分の意を強くした」ということからお話します。日中2時間くらい、雑誌の取材が入っていまして、そこで、今の課題とか話しているうちに愚痴になってしまいまして。自分の会社のスピード感も然り。
 
今、増田さんがおっしゃいましたが、「決めないこと」もそうです。2か月前に投げたことが戻って来ないこともあります。でも、じゃあ会社全体がそうかと言うと、今日も来ていますが若い世代は違う。やっぱり若返りをはかっていくしかないな、と意を強くしました。
 
川島: 若返りというのは、若い世代に思い切ってやらせてみるとか、権限を与えるとか、そういうことですか?
 
大西: 中間管理職、特に50歳を越えた人がマインドチェンジをするのは、なかなか難しい。だから、若い人たちに新しいモチベーションを与えて、その人たちがこの会社を強くしていくしかないな、ということです。
 
川島: その時、中間管理職はどうしていればいいんでしょう?
 
大西: 邪魔をしなければいい。
 
川島: なるほど(笑)。私も50歳を超えていますので、今日の教訓でした。
では、お二人の馴れ初めを教えてください。どんなきっかけで知り合って、どんな第一印象を持たれたのでしょうか。
 
増田: 数年前の春だと思います。僕がアポイントメントをお願いして、「Tポイントの採用をご検討ください」って、シンプルに営業に行ったのです。少し余談になりますが、前の武藤社長の時にも、何度も何度も営業にうかがったのですが、まったく取り合ってもらえず、壁が高かった。
 
でも、ウチは「NOと言われた時からが営業だ!」という会社なので、また改めて「行ってみよう」と思ってうかがったのです。その時の印象は忘れもしません。
 
川島: どう違ったんですか?
 
増田: 「あ、なんか、今回は違う」というのが、一回目の印象。僕らの話が伝わっている感じがしたのです。普通は、氷の壁にボールを投げている感じなのだけれど、それでも構わないというつもりで話をしていて。でも、大西さんは、受け止めてくださっている感じでした。
 
大西: まず驚いたのは、プレゼンテーションです。今まで見たことのないもので、分析の数字とグラフが、パワーポイントでピシッピシッと出てくる。それにびっくりしましたね。
 
増田: 僕らは「どこでも営業」と言ってるんですが、プロジェクターもスクリーンも、自分たちで持って行くんですね。それに驚かれたのかもしれません。公園でも道端でも、それらをバーッと広げて営業し始めますから。
 
川島: 私も以前一度だけ、増田さんのプレゼンテーションを生で拝見したことがあります。もちろんパワーポイントや中身もそうですが、何よりすごいのは、相手との呼吸の読み方ですね。
この人が今、どんな情報を欲しがっているのか、何を期待されていて、何がハマっていないのかといったことを、現場のライブの中で全部想定されていて、きちんと盛り上げる。「男と男の勝負を見ている家政婦」みたいな気分で、すごく楽しかったです。
 
大西: 初めて目にする、正確な分析力と企画力ですよね。「この会社と組まないで、当社(三越伊勢丹)の将来はあるのか」と。この会社と組まなきゃダメだ、ということではなくて、こういう今まで一緒にやったことのない会社と組むことが大事なんだ、と思ったのです。
 
でも、所管部の役員や担当者は、何と言うだろう? と。そうしたら、案の定、「(三越伊勢丹グループ百貨店の)エムアイカードと、(CCCの)Tポイントが組むっていうのは、ちょっと無いですよね」って。予想通りでした。
 
正直に言いますと、私はそういう時に、頭ごなしに否定をするのではなくキチッと検討する、少なくとも今までやっていないことをやるというのがいい、という発想を持てる役員が、次の社長になると思うんです。
 
こうした経緯で、CCCさんと三越伊勢丹で、いろんな形で組ませていただくことになったわけですよ。
 
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川島: 相変わらずお二人ともキビシイ社長で、私は部下になりたくないなあ、と思うんですが、今回は何を両社で始められるんでしょうか?
 
大西: たくさんあります。増田さんもいろいろなことを考えていらっしゃるし、私も考えています。まずはTポイントと、当社のエムアイカードポイントのチェンジ。小売業というのは、マーケティングと企画に尽きます。「マーケティング」と「人」と「企画」。そういう面で、CCCさんは当社が持っていないものを持っていらっしゃる。
 
川島: 「マーケティング」と「人」と「企画」の中で、何が三越伊勢丹さんにとって、一番「ない」ものだと思いますか?
 
大西: 「企画」ですね。いろんな場所でいろんな情報を掴む、つまり、いい意味で遊んでいないと情報が入ってこない。そして、たくさん入って来る情報の中で良し悪しを見極めて、それを具体化するというプロセスが、当社にはない。
 
川島: 増田さんは、大西さんと一緒に組んでどんなことをやっていく予定なのですか?
 
増田: 大西さんにお話したことは二つあります。まず一つは、「僕らCCCは、企画会社です。三越伊勢丹さんが、世界で一番生活提案力のある百貨店になるお手伝いをさせてください」。
二つめは、「世界で一番データベースマーケティングを活用している百貨店になられるお手伝いをさせてください」。この二つだけです。
 
川島: 今、言葉が出て来ている「企画」とか、「生活提案力」って、よく使う言葉ですけれど、きっとそれぞれ思い描く幅は、結構違うと思います。もう少し噛み砕いて…「企画」って何でしょうか?
 
大西: 我々は百貨店です。当然、原点は「お客様に対して」です。でも、自ら新しいものを発信し続けないと、これからの世の中はダメなんです。そのためには、「企画」、「プランニング」が必要。
「お客様はどういう方で、その方たちに何を発信していくか」を企画することは、本来、当社の一番強いところだったのですが、世の中がスピードアップをして、もうついていけない状態になってしまったのです。
 
川島: いつ頃からそう感じていらっしゃいましたか?
 
大西: 社長になる前からです。企画力があれば、新しい提案が出て、それが評価されて、結果的にお客様が満足する。当社はそういう事例がないから、「企画力が足りない」と言っているんです。
 
増田: 謙遜していらっしゃるんですよね。新宿伊勢丹さんの「ファッションミュージアム」という切り口などは、素晴らしい企画だと僕は思います。ただ、大西さんは「今のままじゃダメだ」と危惧されているのではないでしょうか。
 
僕は、企画とは、「顧客価値」だと思います。それはサービスであれ、商品であれ、生活のイメージであれ、伊勢丹や三越に行くと「ワオ!」って思う、その「ワオ!」を作るのが企画です。
 
今はアフターインターネットの時代──モノはネットで選べるし、安く買えるし、という時代に、百貨を並べて、「モノがありますよ」では、売れないと思う。
 
それに一番早く気付かれたのが、たぶん新宿伊勢丹さんだと思う。なので、現状の企画力に加えて、データベースを使ったり、あるいは本の力を使ったりしたら、もっとすごい百貨店になる、というのが提案のポイントです。
 
また、三越伊勢丹さんにないものを僕らが持っているかもしれませんが、逆に僕らが持っていないものを三越伊勢丹さんが持っているものもたくさんある。
だから、僕らも三越伊勢丹さんから学びたいこと、大西さんから学びたいことがたくさんあるので、単にビジネスだけの話ではなく、人的交流もやりましょう、という話をしていたのです。
 
川島: では、具体的に「何から始める」かは、決まっているんですか?
 
大西: 特にこれ、というのはないですけれど、会社はもうすぐ作ります。まずは、マーケティング。CCCさんが持っている約5,000万人、当社が持っている約280万人。単なる数の問題ではなくて、どれだけ細やかにライフスタイルを理解できて、その人たちにアクションできるか、ということまでやりたいですよね。
 
増田: ファッションでも車でも旅行でもそうだけど、貧しい時代は単一的な価値提案を大量にすれば、お客様はついて来てくれた。だけど、今はこれだけ日本が高度成長して、実際に1,500兆円も富が蓄積された。
そして、団塊の世代はもうみんな60代、いろんな人生を経験している。また、今の若い子たちは、アフターインターネットで全然違う生活をしている。
 
そうなると、ひとつの生活提案じゃ全然間に合わないんです。エルメスが好きな人もいれば、ユニクロが好きな方もいるし、両方を使い分けている人ももちろんいる。いわゆる、グラデーションができている時代。
そういう人たちに「ワオ!」と言ってもらうには、その人たちそれぞれに提案をしていかなければならない。さすれば、「この人が●●である」ということを見つけなければいけないから、データがものすごく重要ということなんです。
 
川島: 増田さんの話は、ずっと一貫していますね。ビッグデータありきでも、インターネットありきでも、リアル現場ありきでもなくて、「生活提案」を若い時からやっていらっしゃる。遡れば70年代ですよね。
 
でも、私から見たら「生活提案=ライフスタイル」なんです。もちろん言葉としては、マーケティング上、たくさん使うんですが「実際、生活提案って何?」と言われると、まだまだきちんと認識していない点が多いような気がしています。お二人に、「生活提案ってこんなもの」というのを定義していただきたいです。
 
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大西: 大前提でいくと、個人のライフスタイルというのは、本当にさまざまなことに関わっています。朝起きてから夜寝るまでの一日のライフスタイルの中で、モノとかコトでなく、たまたまモノであったり、たまたまコトであったり。
 
そういうコンテンツを自分たちがどれだけ持って、蓄積して、それをお客様に提案して、その人にとって新しい経験をしてもらえる環境や空間を、どれくらい作れるか。その一つ一つが、「生活提案」になっていくのだと思いますし、我々の大きな課題でもあります。
 
川島: 増田さんにとっての「生活提案」とは?
 
増田: 例えば、「Airbnb」はご存知ですか? 今話題になっている、いわゆるシェアハウスなのですが、あれは掘り下げていくと、一種のライフスタイルになるのだと僕は思うんです。
 
全部の人にとっていいと思われているわけではないけれど、あるクラス、あるスタイルの人にとっては「いい」ことになる。だから一言で言うと、「生活提案」というのは決してひとつのものではなくて、多様化した価値観に対して、一歩先、半歩先をおすすめすること。
 
川島: 「提案」と言うよりは、「おすすめ」なんですね。半歩先というのは、どうやって見つければいいんですか? ものすごく難しいと思うんですが。
 
増田: それは人によって、違うからなあ。
 
大西: やっぱりその人にとって、初めての経験というのはマストですよね。見たことがないとか、「ハッ」とするということ。
 
増田: 例えば、「虎屋の羊羹」をお中元とかお歳暮であげたいと思っていたけれど、結構高い。でも、そういう憧れみたいなものに向かっていく過程ってすごく楽しいですよね。がんばったご褒美で、「俺も虎屋の羊羹をお茶菓子に出せるようになった!」、という。
 
そういうのも、ある種の「生活提案」だと思う。だから、それは人によってきっと違って、ファミリーマートのスイーツを彼女のマンションで食べるのも、いいですしね(笑)。
 
川島: 前に糸井重里さんと対談をして、興味深かったことがあります。
糸井さんに、「面白さって何ですか?」と聞いたら、「意外性と共感性が一緒にあることなんです」というお話をされたんです。
 
「新しい」とか「意外」という驚きは確かにあっていいんですけれど、でもそればっかりがお店に埋まっていると疲れてしまうんですよね。だから、「共感性」というものもあって欲しいな、と思っています。
 
大西: なるほど。自分の内面に持っているテイストにフィットして「共感」を持ちつつ、でもこれまで自分が感じたことがない「意外性」がある、という意味ですよね。あんまり共感しちゃうと、ビックリとか驚きというのは、なかなか感じられませんから。
 
増田: 今の時代って、スマホで何でも買えちゃうじゃない? 「アリババ」(編注:中国のインターネット通販大手)の2014年の決算が78億ドルですからね。そんな時代に、リアルな店舗で小売業をやるというのは、どういうことなのかを考えなくてはならない。データベースマーケティングは、そのひとつの手法でもあると思う。
 
そして、「自分で作って、自分で売る」というビジネスも強い。虎屋さんやユニクロさんのように。昔から小売業はモノを置いて並べて、お客さんに見せて売ってきた。
 
でも、アフターインターネットの時代になるとそういうビジネスモデルが難しくなって、小売店は限りなくメーカーに近づいていく。そういうことを一緒にお手伝いしたいな、と。
 
川島: 作る方に踏み込んでいくということなんですね。
  
第2回▶▶ 今後の商業施設に大事なものは、「環境空間」と「分類」と「コンテンツ」、そして「人」。

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