未来のおしゃべり会

【12月7日おしゃべり会番外編・第2回】今後の商業施設に大事なものは、「環境空間」と「分類」と「コンテンツ」、そして「人」。

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川島蓉子と社長の未来のおしゃべり会・番外編
ゲスト:大西洋さん(三越伊勢丹ホールディングス 代表取締役社長)
    増田宗昭さん(カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 代表取締役社長兼CEO)

テーマ:みらいの百貨店、みらいのビジネス
開催日:2015年12月7日(月)
会場:代官山 蔦屋書店 ラウンジ「Anjin

◀◀第1回記事はこちらから
 

★ ★ ★ 
 
第2回: 今後の商業施設に大事なものは、「環境空間」と「分類」と「コンテンツ」、そして「人」。
 
川島蓉子(以下、川島): 小売業がメーカー機能を持たなければダメだというお話でしたが、CCCさんと三越伊勢丹さんとの二社で一緒に何かモノを作って、一緒にお店を開く計画はありますか?
 
大西洋(以下、大西):  FTA(自由貿易協定)の事例については、当社も研究しています。先ほど増田さんがおっしゃったように、同質化自体が小売業をダメにしているわけですから、自分たちできちんとしたコンセプトがあって、顧客対象がはっきりしたモノを作っていかなければなりません。
 
そういった成功例はウチでも出始めています。一番成功しているのは、婦人靴。浅草の靴屋さんの工場と組んで、新宿のナショナルブランドの中でも、一番になっています。でも、これは当たり前のこと。
 
だって、自分たちが店頭に一番近いところにいるからです。まだまだ不十分かもしれませんが、お客様の声が一番に入るはずなんです。
そのニーズを掴んで、モノづくりをしていけば、一気にコストは減りますし、価値と価格のバランスや、絶対的な価値の高いものを提案できるので、利益が残って、消化率も高い。

 
ただ、最初から最後まで自分たちでやらなければならないので、難易度は高いです。婦人靴の他にも、レディースパンツなどで成果が出てきています。
 
川島: つまり、何らかをモノづくりに組み込んでやってみて、それをキチンとデータベースマーケティングにかけて、精度も高く、かつ世界観がしっかりと築かれているモノをこの二社でおやりになると。それは、小売店としてやるのですか? それともブランドとして?
 
大西: これからの商業施設というのは、「環境空間」と「分類」と「コンテンツ」、全部が優れたものじゃないとダメだと思います。「接客」も、もちろんです。モノづくりはコンテンツですよね。環境空間とか、大きい概念でのコンテンツ作りというのは、当社が得意なところ。増田さんのところも大得意。その得意分野を生かして、一緒に何かできると思います。
 
川島: では、リアル店舗も考えていらっしゃるんですね。
 
増田宗昭(以下、増田): もう今は、モノの時代じゃなくなっちゃったから、そこに行きたいという空間や商法、サービスとか、出会いとか、そういうものを期待される場でないと人は集まらない。
 
また、お客様が多様化して商品も多様化したら、それぞれの現場で意思決定をしてオペレーションすることがすごく重要になる。
高度成長の時代は、チェーンオペレーションでマニュアル化されたものを全国共通でやっていたかもしれないけれど、今は店によって全部変えていかなきゃならない。そうした時に、現場で意思決定できるような組織運営でないと、上手くいかないと思う。
 
例えば、ファミリーマートもウチも、フランチャイズという名前でやっているけれど、これは即ち、現場に意思決定の権限がある。何を仕入れるか、どんな人を採用するか、どんな店にするか。それは、分散型の意思決定がされる。
 
だけど、普通の小さなお店と違うのは、全部データベースのインフラの上で、オペレーションをしたり、物流インフラがしっかりしている中で個店経営をしていること。そういうビジネスモデルが功を奏して、コンビニエンスストアのビジネスモデルは大きくなっていると思う。
 
つまり、大型店であっても、その店の店長さんなり売り場に立っている人が、「工場で今、生産されているのは何か」とか、「この商品は先週どうだったか」という情報をすべて見ることができる。そういう小売業になっていくべきだと思う。そのためには、データベースがないとできない。三越伊勢丹さんとは、「そういうことを一緒にやりましょうよ」と話しています。
 
川島: 「リアル店舗の意味」というのは、増田さんから何度もお話を聞いていますが、もう少し具体的に、「未来の小売業って、どんなもの?」ということを語っていただけますか?
 
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大西: 先ほどの話と少し重複するかもしれませんが、「アリババ」の11月11日(編注:中国の「独身の日」。1を独身者に見立てて、未婚者が自分のために買い物をする日として定着している)の売り上げって、当社の年間の売り上げなんです(笑)。今はそういう時代で、さらにこれからは加速していく。そうすると、リアルな店舗(小売業)の「意義」や「意味」が、ものすごく変わってくるんじゃないかと思う。
 
その中で感じられないものは何かというと、「環境空間=空気観」や「コンテンツ」の組み合わせ。その組み合わせをする時に、新しい「分類」を作っていかなければなりません。その「分類作り」が、ひとつのキーになると思います。
 
今だと小売業は、婦人、子どもという分類になっていますが、そうじゃない、新しい分類が人を集客していく時代になると思います。
ですが、絶対になくならないのは「人」だと思いますね。お客様と、私たちつまり小売業の販売員の接点はなくならないと思います。
 
川島: リアルな接客、ですね。
 
大西: そう。ネットでは味わえないようなことを、リアルな人間がどうやって築いていくか、ということだと思います。
 
川島: 分類を変えるということは、いわゆる百貨店の王道である、婦人服や紳士服など、そういう分類自体を見直すと。それは画期的で、楽しみですね。
 
増田: もっと言えば、例えば、今みなさんがいる代官山 蔦屋書店の下(の階)には、車の本があるのですが、たぶん車の本でこれだけ集まっているところって、他にはないと思う。そう言うと、車の本なら何でもあると思われるかもしれないけど、そうじゃないんです。
 
全部網羅的に揃えるのではなく、「フェラーリだったら、このフェラーリはいいけどあっちはダメ」という目利きが必要。それは車のことを知っている人でなければできない。それはアートも同じです。
 
今度、代官山 蔦屋書店と同じくらいの大きさの「世界一のアートの本屋」を作ろうと思っているんですが、そこでまさにさっきおっしゃった「分類」が重要になっていて。
 
川島: すごく大事だと思います。でも、「目利き」って簡単に育たないじゃないですか。
 
増田: だから、三越伊勢丹さんと組むんですよ(笑)
 
川島: それはそうですが(笑)。三越伊勢丹さんには目利きはたくさんいらっしゃいますか?
 
大西: いや(笑)。昔は、当社にも目利きのバイヤーって結構いたんですよ。かなり厳しい業務技能を学ばされて、発注を含めてね。もちろん今でもいますけれど、「自分の担当カテゴリーの中での目利き」のバイヤーなんですよね。
今、増田さんがおっしゃった目利きというのは、ものすごく視野の広い目利きなので。そういう人材じゃないと、おそらくこれはできない。
 
増田: そういう人は、普通の大企業とか大きな会社の枠組みでは生きていけないんですよ。
 
川島: どうしてですか?
 
増田: 例えば、リシャール・ミル(編注:フランスの時計メーカーの創業者。「時計のF1」と呼ばれる程のこだわり抜いた時計を作る)っているでしょう。彼は、稼いだお金で「ル・マン クラシック」という、クラシックカーのイベントのスポンサーをやっているんですよ。
 
時計屋の彼が目指しているのは、そういうライフスタイルなんです。「クラシックカーを愛でて、友だちを大事にして、昔のモノを大切にする。その世界観の延長線上で自分はいい時計を作る」という彼の価値観を共有するために、クラシックカーレースのスポンサーをしている。
 
つまり、彼が売っているのは時計じゃない。ライフスタイルを売っているんですね。その領域に行こうと思うと、グッドウッド(編注:年一回、イギリスのグッドウッドで開催されるモータースポーツのイベント)に行ったり、世界中の車のライフスタイルにかかわるイベントに行ったり、時計の新しいショーとかに行って、ありとあらゆるものを「見て」、「聞いて」、コレクターの人と「話す」、という情報量が絶対にいるわけです。
 
その結果として、時計のいいアイデアが湧いてくるのだと思う。じゃあそういうことを百貨店の時計売り場の人の何人ができるか、というとなかなか難しい。でも、それをやるから売り場に夢があるのだと思う。
 
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川島: 庶民には、なかなか難しいですね。でも、納得です。やりたいと思うことは、そこまで食い込んでいかなければ得られないのですね。
 
増田: 雑誌の編集者たちは、みんなそれをやっている。ウチの出版グループの人たちも、給料は安いのだけど、取材費があるから、各所のイベントに行っている。そういうことをやっている人は、目利きができるようになるんです。
 
出版ビジネスだけで考えると、なかなか利益が出ないものですが、百貨店の皆さんにはできないような行動を取れるし、情報を持っているので、そういう人たちと三越伊勢丹さんと僕らがくっついたら面白いことができるんじゃないかな、と思っているんです。
 
大西: 今、当社の若い社員にも言っていることですが、自分で外へ出て、遊んで、いろんなものを経験して、インプットをたくさんして、それを自分が持っている力と組み合わせて、アウトプットができないと、これからは本当に無理だと思うんです。だから、そういう人材を育成していかなければならない。そうなると、もう若い人に期待するしかないですよね。
 
川島: 両社長に言いたいことがあります。社長からお話を聞くと、だいたいの方が、「豊かな経験をして発想を広げて、どんどん提案しなさい」「若い人の提案をいくらでも聞く」とおっしゃいます。
 
でも、実際に社員の見方からすると、忙しすぎてそんな時間がない、とか、他に言いつけられている用事がたくさんあるとか、お金が足りないとか……。
 
増田: それを変えるのが、経営だよ。
 
川島: それを変えて、裁量を与えたり余裕を与えることが、「社長の責任」である、と。なるほど、いい会社ですね、CCCさん。では、三越伊勢丹さんは?
 
大西: 今の若い社員、20代、30代の人たちは、以前に比べると、「いろんな人と会う」ということをやっているように思います。なので、数年後、彼らがマネージメントの立場になるようになったら、企業は変わってくるのかなと思う。今は、絶対それが必要なんです。
 
増田: ウチは経験がなかろうがなんだろうが、まずチャレンジ。それで絶対育つから。僕は信じています。
 
僕の原体験があるんですが、40年くらい前に鈴屋(編注:服飾品の企画製造販売会社)の京都店の店長をしていた時に、ある日食堂で印象的な会話を聞いたんです。販売の女の子たちが、「冬なのに、お客様に『水着ないですか?』って言われたの」と。僕はその時ピンときて、「そのお客様は、冬休みにハワイに行くんだ」って思ったんです。販売員の子には、冬にハワイに行くというイメージができなかったんですね。
 
だから、冬場に水着を買う人はいないと思い込んでしまう。でも、それは自分だけの価値観で、お客様のことが見えているようでまったく見えていないんですよ。
 
川島: それは、いつの時代も課題かもしれませんね。
  
第3回▶▶ 三越伊勢丹、CCCの経営者として、今伝えたいこと。

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