未来のおしゃべり会

【12月7日おしゃべり会番外編・第3回】三越伊勢丹、CCCの経営者として、今伝えたいこと。

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川島蓉子と社長の未来のおしゃべり会・番外編
ゲスト:大西洋さん(三越伊勢丹ホールディングス 代表取締役社長)
    増田宗昭さん(カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 代表取締役社長兼CEO)

テーマ:みらいの百貨店、みらいのビジネス
開催日:2015年12月7日(月)
会場:代官山 蔦屋書店 ラウンジ「Anjin

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第3回: 三越伊勢丹、CCCの経営者として、今伝えたいこと。
 
川島蓉子(以下、川島): お二人の話は、ひとつもブレるところがなく、とても本質的。ですが、ここで敢えて言いたいことがあります。このような場というのはすごく珍しい機会で、直接お二人と会話できれば腑に落ちるのですが、「トップの想いというのは、予想以上に伝わっていない」と思いますが、いかがでしょうか。
 
大西洋(以下、大西): 当たり。
 
川島: ですよね(笑)。それを伝えることができたら、もっと会社がスムーズになると思いますが、どうしていったらいいのでしょうか。
 
大西: それは、まさしくおっしゃる通り。自分は年に2〜3回は役員に同じような話をしているのですが、先日、決算発表のレポートを読んでいた際、その他の方に伝わっていないのだと痛感して、反省していたんです。
これは自分の責任だと思いますが、きちんと伝える場を増やして具現化していくことが必要だなと。
 
私は店頭が好きなので、もちろん店頭で社員と話はしますが、やはり時間は限られてしまう。会社を動かしていくためには、「全員が」とまではいかないかもしれませんが、現場の人たちが同じ方向を向いて行かないとダメなんです。そのためには、中間管理職のマインドチェンジもマスト。これは課題ですね。
 
川島: 増田さんどうでしょう。伝わっているようで伝わっていない。
 
増田宗昭(以下、増田): そんなもの、伝わるわけがない。だって、目の前にお客さんがいて頑張っている人が、いちいち社長の言うことを気にしていたらダメなんだと思う。だけど、必要な人にはやっぱり経営の考え方を伝えなきゃいけない。
 
そういう意味で言うと、会社って大企業病になっていってしまうのは当然で、僕はそれを悪いことだとは思わない。成長して、大きくなって、リッチになって、有名になったら「大企業病」になるに決まってるんだから、それをいかに戻す努力を経営陣がするか、を考えていきたい。
 
川島: では、戻る努力をどんな風になさっているんですか?
 
増田: 情報が必要な人にはとことん、伝えていくこと。そして、経営陣が、「今月何をするか」、「来月何をするか」ということを、具体的にコミットしていくことでしょうか。
 
大西: 私が一番辛いのは、「三越伊勢丹ほどの会社が」と言われること。何をもって「大企業」と言うのか、ですよね。売り上げと利益でいうと、当社は別に大企業ではないわけです。また、三越には340年の歴史があるから大企業かというと、違いますよね。
 
要は、社会的に大企業と言われることで、自分たちも勘違いしてしまっている部分があるような気がします。大企業じゃないのに、大企業病になっているんじゃないかと。
 
きれいごとかもしれませんが、経営者としてどんな企業にしたいか、と聞かれたら、いつもこう答えます。「従業員全員が、この会社にいてよかったと誇りをもてる会社」と。
 
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川島: それは、増田さんも一致していますね。社員への愛情が一番。
では、お互いの会社に対して「もう少しこうなって欲しい」というところを教えてください。
 
大西: なんでしょうね。増田さんのリーダーシップがものすごいので、従業員の方がそれについていくのが大変だと思う。トップがこれだけ強いリーダーシップで進んで行くときに、中間でバランスを取って行く人が非常に重要だと思います。言い方はものすごく僭越ですが、企業としての課題はそこにおありになるのかな、という風に想像します。
 
川島: なるほど。増田さんは?
 
増田: 考えてたんだけれど、ないんだよな。
 
川島: ホントに?
 
増田: いや、本当にない。もちろん細かいことを言えば、いっぱいあるんだけどね。例えば、「地方のお店はあのままでいいんですか?」とか、「組織的にどうなんですか?」とか。
 
大西: 「組織的に問題がある」って言って欲しいですね(笑)。
 
川島: どの会社も課題はあるから社長は大変なんだな、と思います。
 
では、最後の質問をしたいと思います。
お二人とも際限なくやりたいことが繰り出される、それは悪く言うと「欲が強い」と思うんです。それは、現状に満足しないという意味でいい社長だと私は思うんですが、そのお二人の「欲のゴール」はどこにあるのでしょうか。
 
増田: ライフスタイルを提案することを極めたい。
大企業でライフスタイルを極めるって、ものすごく難しいことです。だから、それを極めたい。スティーブ・ジョブズが亡くなる前に言っていた、こんな言葉があったからです。
 
『自分は、ビジネス界では極めて、富で言うと世界最高の時価総額の会社を作った。だけど、自分は幸せじゃない。』
 
何が幸せじゃなかったかというと、家族の問題や趣味とか友達とか人間関係とか、そういうことをみんなは大事にして欲しいって言ってるんです。
だから、僕はそこを極めてから死にたい。僕の一番大切なものは、カンパニー、つまり、会社の「仲間」とライフスタイルを提案することだから。
 
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大西: 欲のゴールはないと思いますが、強いて言うとするならば、今、当社は「百貨店」だと思われています。歴史があって、おもてなしがあって、新宿はファッションの伊勢丹で、三越は歴史があって……。この評価が変わることでしょうか。
 
川島: それは、どんな風に変わるということですか?
 
大西: 歴史や伝統ということは、評価とあまり関係がないわけです。ものすごく流行っているレストランというのは、本当に時代の先端を行っている人たちが評価をしている。そういう評価を受けるような店にしたい。
 
百貨店というと、「マスのボリュームで」、「いっぱいお客様が入ること」で、どうも評価されがちです。そうではなくて、スペシャルなモノがあって、スペシャルな人たちに来ていただき、「この店は新しい」とか、「この企業は新しいことをやり続けている」という評価をもらうときが、自分としてはゴールだと思います。でもこれは、かなり難しいかもしれませんね。
 
川島: いやいや、ぜひ実現していただきたいですね。なるほど、お二人の考えがよくわかりました。やっぱり一時間じゃ足りませんでしたね。
 

<質疑応答>
 
男性: スペシャルということで、富裕層の方へのサービスをどういう風に作っていかれる予定なのか、お二人にお聞きしたいと思います。
 
大西: 元々百貨店というのは、一人のお客様に対して、今でいう「お得意様営業担当」という、担当者が付いていました。そのお客様が日常のお野菜を買うのも、高い宝飾品を買うのも、場合によっては車も買うのにもと、お客様のライフスタイル全般にちゃんとかかわっていたのです。それが、いつの間にか弱まってきています。
 
しかし、今後はそうした一人一人のお客様に対して、モノだけではない、老後のことや旅行、財産形成といったすべてにおいて、何らかの形で個別にかかわっていかないと、と思っています。具体的には、シニアに向けた医療モールとか、いろんなことを新規事業として考えているところです。
 
増田: 僕個人の経験で言うと、数年前に某百貨店の外商さんを紹介されたことがあります。ちょっと変わった人でしたが、その人が本当に全部やってくれる。極端なことを言うと、「明日、朝ごはんにナントカ食べたいんだよね」と言うと、朝ご飯を買って来てくれるとかね。
 
僕はアートの世界を全然知らなかったんですが、ある日、その外商さんが、僕に魯山人を薦めてきたんです。すごく高級だし、躊躇したんですけど、「この人が薦めるんだから、いいのかもしれない?」と思って、買ったんですよ。それで家に置いてみたら、いいんですよ。元気出て。そこで、「アートってええな」と思い始めた。
 
結局、日本の僕らのような人たちは、日経新聞を読んで、お金の稼ぎ方は詳しいけれど、時間とお金の使い方を知らない。そこを果たしてくれるのが、百貨店の外商さんなんだと思います。
 
でも、今、外商さんたちは、頑張って稼いでいる人たちをキャッチアップできてないでしょう。つまり、百貨店というのはもうモノを売っている場合じゃなくて、別荘も売ったらいいし、ゴルフの会員権も薦めたらいい。
だけど、ゴルフの会員権を売ったらダメなんですよ。その人にふさわしいゴルフ場をお薦めしてあげる。そこの目利きなんです。
 
男性: 今、外商の目利きの方を育てるということをされているんですか?
 
大西: お客様の方がいいライフスタイルをされていますが、社員がそれを知らないとダメだと思います。当社では、表彰制度を作りまして、表彰された人は来年から、例えばパリに行って、5つ星、6つ星のホテルに泊まり、三ツ星のレストランに行き、いろんな美術館に行くということを考えています。その感覚を身につけないと、きっと「お客様に提案」なんてできないと思いますから。少しずつ制度を整えているところです。
 
増田: 例えば、ウチが準備している世界一のアート書店に出向してもらって、アートの勉強をしてもらうとかね。あるいは買い付けに行くときに一緒に行ってもらうとか。とにかく世界一の情報に触れないと、提案はできない。
 
川島: それはそうですよね。自分が体験していないものをやれと言われても、なかなか難しいですよね。大西さん、増田さん、本日は貴重なお時間をありがとうございました。
  

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川島所長のひとこと
 
そもそものきっかけは、大西さんとお話していて「CCCとの新しい取り組みについて書いてみたい」とお願いしたこと。
快くお引き受けいただき、もちろん増田さんも「オーケー!」となって、しかも公開対談に。好奇心ばかりが先走って無理難題をお願いしてしまう川島サザエ蓉子(私の綽名はサザエです)にとって、夢のような共演でした。
 
新しいことに対して貪欲に挑戦し続けているお二人が、掛け合いで話すうち、どんどんエネルギッシュになり、勢いのある対話になりました。
 
しかも、若手の部下の方をたくさん連れてきていらっしゃる。若い人の挑戦を期待しているという熱い思いがバシバシ伝わってくるとともに、会社とは経営トップの思いが伝わっていくことが難しいものと、改めて実感しました。
 
そして、大西さんと増田さん、少し「マッチョ」なくらい強い経営トップが、今という時代には大事なのかも、と心動いたおしゃべり会でした。
 
ifs未来研究所 所長 川島蓉子
 
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