未来のおしゃべり会

【ifs未来研究所 3周年記念イベント】ひとひと話② 「現代の下駄を考える」 トークレポート

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未来研究「未来のここち」―未来のファッション
ひとひと話② 「現代の下駄を考える」
松村 光氏(株式会社ヒカルマツムラデザイン)

  
★ ★ ★ 
 
●なぜ、「下駄」の研究を?
 
川島蓉子(以下、川島):松村さんと知り合ったのは、「イッセイ ミヤケのルール」という本を書いたことがきっかけです。
インタビュアーとしてお会いし、「ファッションはデザインではない」と言う松村さんと、「ファッションはデザインだ」という私で、議論をするところから始まりました。
松村さんのモノに対するこだわりは面白いと思い、「ファッション」をテーマにしたこのプロジェクトに関わってもらっています。
 
そんな中で、「未来のファッション」から、「現代の下駄を考える」というところに、1年掛けて変わってきました。なぜ、下駄に行き着いたのですか?
 
松村光(以下、松村): 特に下駄に対して思い入れがあったという訳ではないんですけど、日頃から服やバッグを作ることが多いので、気にはなっていたんです。「なんで下駄は四角いんだろう」ということが、ずっと引っかかっていて。
 
僕は、「人が作らないようなモノを作りたい」のが信念で、人が考えないようなモノを生み出したいんです。僕がよく考えるのが、もし明治維新がなくて、日本人が自分たちの文化を育てていたとしたら、今のファッションはどうなっていただろうか、ということ。
 
日本人は勤勉で考えることが好きだから、すごい素材や機能を靴に求めたんじゃないかと思うんです。それは「ハイテクスニーカー」ではなくて、「ハイテク下駄」になっていたんだろうな、というところからイメージが湧きました。
 
下駄3
 
川島: 下駄を研究したら、それが未来につながるのではないかと。
 
松村: そうですね。なぜ、ハイテクスニーカーにはならないかというと、欧米と日本の文化や風習の違いにあります。欧米は、靴も服も、人間の身体にぴったり沿わせる造りですよね。布を切り刻んだりしながら、いかに美しいフォルムを作るかというのが西洋の造りなんです。一方で、日本の服作りは、着物も履物もそうですが、とにかく四角いんです。
 
人の身体がどうのではなくて、布が四角いから四角だし、木が四角いから四角にする。だから日本人は、履きやすい靴を作るために、足の形に合わせようなんてことをあまり考えていなかった。日本の文化の哲学は何か、ということに行き着いちゃうんですけれど、基本、人に合わせるのではなくて、合理性やシステムを求める。そういうところにこだわっちゃうのが、日本人だと思うんです。
 
●「未来のデザインのヒント」があるところ
 
川島: 松村さんは、日本の履物や下駄について、徹底的に研究したんですよね。本日は、会場にもお越し頂いていますが、元学芸員の市田京子さんのご支援を得て、特別に広島県福山市にある「松永はきもの資料館」からお借りした下駄も展示しています。
 
下駄展示4
 
松村: 下駄の研究だからと、まずは下駄屋さんに行ったんですが、小煩くて嫌になっちゃったんです。もう少しゆっくりと見れるところを探した中で、日本で唯一の、履物専門の博物館が広島県にあることを知りました。
 
そこに行ったらもう、びっくりしちゃって、とにかくいろんな人に「松永はきもの資料館」を紹介したいと思いました。こういう文化があったことが忘れられ、資料も活かされていないことを勿体無いと感じました。
 
日本の古いモノを知ることで、新しいデザインや未来のデザインのヒントが生まれるということはあると思うんです。だから、歴史を知ることは大切だと思うんですが、知れば知るほど、伝統をぶち壊せ、ではなく、古い伝統を守りたくなるとも。
 
川島: そんなことないと思うけどなぁ。
 
松村: でも、日本のファッションの中で、ヨーロッパのように、現代に生活に浸透して、今でも息づいているものって少ないじゃないですか。日本の伝統の場合、下駄についても「ここ変えたら下駄じゃない」とか言われちゃったりして、結構面倒臭い。だから、ヨーロッパは、伝統を守っている風に見せて、ぶち壊しながら出していくのが上手いんだと思います。
 
下駄2
 
●「下駄」を現代の生活にフィットさせるには
 
松村: 今回のプロジェクトで、現代の生活にフィットする下駄を作るとしたら、やっぱり走れなければダメだと思ったんです。それで、「走れる下駄」を作ろうと、「GETA RUNNER」というネーミングをして、いざ下駄を買ってきて走ってみたら、そのまま走れちゃったんですよ(笑)
 
そこで結構悩んだんですが、まず重要なことは、下駄といえば「鼻緒」だということ。でも、靴下を履いたまま履けないと、現代の生活には馴染まない。だから、靴下を履いたままでも履けるように、踵をホールドできるようにしました。
 
もう1つ重要なことは、「下駄には左右がない」ということ。だから、脱ぎっぱなしになって右か左か分からなくなっても、どっちでも履ける。一方でヨーロッパの靴は、足の形に合わせているから、どうしても左右ができちゃう。デザインのポイントのひとつは、「左右がない」サンダルはどうなるかということでもあったんです。
 
下駄展示2
 
川島: いずれは製品化したいと思っているんですが、今回のプロトタイプは最終デザインではなく、あくまでも途上のモノですよね。サイズ展開はどのようにしたんですか?
 
松村: 実際に売るとしたら、アッパーの部分はそれぞれの人の足に合わせてカスタマイズしようと考えています。今回は、みなさんに履いてもらえるように4サイズ作りました。マジックテープを使って、ある程度調整できるようになっています。
 
下駄試着
 
●下駄を超えた下駄を作る
 
松村: このプロジェクトをきっかけに、下駄や日本の履物について調べてみて、「現代風に考えるとこうだよね」ということを定義することによって、新しいデザインの方向性が見えてくると思いました。
 
川島: つまり、いろいろな意見が出てきていいじゃないか、と。伝統を変えちゃいけないと思う人もいるけれど、面白いからもっと変えたいと思う人もいますよね。何を良しとして、何を良しとしないかが、すごく難しい。
 
松村: これからの課題だと思うんですが、下駄を超えた下駄を作らなければ、現代の生活にはフィットしないと思うんです。日本文化って、今はガラパゴスと言われたりもしますが、江戸時代までは独自の発展をしてきた。そこにヒントがたくさんあると思うので、伝統を下手に守ろうとせず、「現代の生活にも馴染む下駄」を作りたいんです。
 
川島: 1年後くらいにまた経過報告をする時には、製品化しているといいですね。そして、日本人だけじゃなくて、他の国の人たちにも履いて欲しいと思っています。乞うご期待です。
 
下駄5
 
◀◀展示の様子はこちらからご覧頂けます。
 

松村 光氏プロフィール
1964年東京都生まれ。1987年武蔵野美術大学を卒業後、91年まで同大学助手を務めてから渡仏。
1993年パリオートクチュール組合学校を卒業し、同年三宅デザイン事務所入社。
2006年松村光デザイン事務所(2012年ヒカルマツムラデザインに社名変更)設立し、2007年にHIKARU MATSUMURA THE UNIQUE-BAGを立ち上げる。
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