未来のおしゃべり会

【7月19日おしゃべり会・第2回】縦割りの組織は、自ら崩壊し変わっていく

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未来のおしゃべり会
●ゲスト:安森 健さん(隠居・元 株式会社ロフト 代表取締役社長)
柿木原 政広さん(株式会社10 代表・アートディレクター)
●テーマ:みらいの小売業・みらいのデザイン
●開催日:2016年7月19日(火)

◀◀第1回記事はこちらから
 
★ ★ ★ 
 
第2回 縦割りの組織は、自ら崩壊し変わっていく
 
川島: 縦割りの組織を壊すということについて、もう少しお話伺いたいのですが。
 
安森: 組織では昭和55年の体制、つまり男社会で縦社会、というのが続いているのだと思う。それが壊れてきているというのは、二つ理由があると思う。ひとつは、お客さんが販売員以上の知識を持ち、中途半端を許してくれない時代になったわけよ。
 
もうひとつは、企業内に、パソコンが一人一台ずつ与えられる。これが組織に変革をもたらした。だって、組織の上に立つ人は情報を独占したいでしょう。でもパソコンが登場したことによって、情報が均等に全部共有できる。そうなると必然的にフラットにならざるを得ない。
 
その二つが相まって、重くなった組織が自分たちの重量に耐えられなくなって壊れていっているのが今だと僕は思っているわけ。だから、誰かいち早くこの動きを救った人が勝ちよ。組織が壊れていくことについて、いろんな人が警鐘を鳴らしているけど、実際の会社の組織は変わっていない。
 
川島: 変わっていないところが大半ですね。
 
安森: いやあ、メーカーなんて全然変わっていないですね。
 
柿木原: それって、フラットな小売りと考えて、例えばAmazonみたいな方が機能を発揮しやすいとうことですか?
 
安森: 一つはAmazonのように、本当にフラットな組織というか、あるいは、楽天のように他人様の力を借りてあたかも一つの組織のように見せる。その典型が僕はコンビニだと思っている。
 
同じ小売りをやっていたとしても、GMS(General Merchandise Store=総合スーパー)は2兆円売っても赤字になってしまうのに、コンビニは2兆円の売り上げで6千億の利益を出す。
 
それは何が違うかというと、全部、人様に仕事をさせていること。店の投資も、商品の仕入れも、アルバイトの手配まで、全部オーナーにやらせておいて、アガリ(売り上げ)だけ持っていくわけで。これ考えたヤツはすごいよね。
 
僕は今まで小売りを50年やっているけれど、すごいと思う人物が三人いる。一人は中内功(ダイエーの創業者)。もう一人は岡田卓也(イオン名誉会長)。彼はショッピングセンターという形態を作りあげた。もう一人が鈴木敏文(セブン&アイ・ホールディングス代表取締役会長。日本初のコンビニエンスストア「セブンイレブン」を作った人物)。
 
小売りというのは自分でやったら儲からない、だけど、あたかも儲かるように見える仕組みを作った。もしコンビニの店長が2億売ったとしても、あがりがだいたい35%とすると、粗利が7000万、そのうちの3000万を本部が黙って持っていく。残りの4000万の中から、アルバイト費から光熱費からロスから、店主が受け持つって、こんなひどい商売ないよね。
 
川島: 今の話は、儲かるかという文脈で言うと腑に落ちるところもありますが、働いている人が幸せであるとか、働いている人がちょっと誇りを持てるとか、そういうことって今の時代も大事な気がしています。どうですか?
 
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安森: さっき話したショップマスター制度では、働く人間が自分のところの商品のお客様を把握できる。お客様が商品を通じてお金を払ってくれることで、反応がわかるし自分が与えていることの喜びを享受できる。僕は小売りの原点って、そうだと思うわけ。
 
もっと言うと、いまはなくなっちゃったけど、地場の魚屋さんだよね。7万円持って仕入れに行って、それが8万5千円で売れたら貯金をして、また7万円持って仕入れに行く。お客様の顔が見えない商売って、僕はもうダメなような気がする。
 
川島: 商店の商いが大切。
 
安森: 一番大事なのは、小売りの役割って何だろう? といったときに、お客さまの暮らしに対して、安心感とか豊かさとか、金銭ではない価値を提供していかなければならないことだと僕は思うね。
 
川島: それが、リアル店舗の役割。
 
安森: うん、僕はね、ロフトのときにそれを言ってたんです。ロフトって、「25歳の都市生活のOLの暮らしを豊かに」ということを謳っていたんだけど、こんなのは実態が無い。
 
店の原則っていうのが三つあって。一つは、自分で仕入れて自分で売りきるという組織風土を作るということ。もう一つはノーアパレル・ノーフードに徹する。要するにボディファッションと食い物はやらないってこと。
 
川島: なぜですか?
 
安森: いや、自信がないから。僕は自信ないものはやらない。だってロフトの食い物なんて想像つかないでしょ? それからもう一つは、誇れる会社にしたいということ。それはお客様に対してもそうだし、従業員にも誇れる会社にしたい。
 
そこで、品揃えの基準をどうしたかと言うと、非常にシンプル。「1000円札一枚のしあわせを」とした。
 
川島: わかりやすいですね!
 
安森: 1000円札一枚で、自分の暮らしが、少しは明るくなったり豊かになったりする品揃えをするのが、お前らの役目、と言うのが僕の仕事。実際にやるのはバイヤーと販売の仕事。
 
川島: 今でも古くないですね、その三カ条。
 
柿木原: 小売って、自分たちで作っているわけじゃないですよね。何をやっているの? と言われたときに、下手すれば不動産業になってしまうときもある。そういう流れの中で、自分たちが誇りに思えることを見つけるとなると、今言ったようなわかりやすい価値、「1000円でしあわせを、俺はあげられているだろうか」というのは、すごく重要な気がします。
 
川島: 1000円のしあわせって、人によって違うじゃないですか。お客様の顔を見て、話して、この人にとっての1000円のしあわせはこちらでは?とお薦めしてくれるのが、小売り業なんですね。
 
安森: 社長だった時に、よくウチのバイヤーと店長に「社長が選んだものは売れないね」って言われて。社長がダメ出した製品を積極的に取り入れる(笑)、そんなバカな会社があったんだねえ。
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川島: ステキですね。それで自信を持って各バイヤーは仕入れに行ったんですね。
 
安森: うん。その代わりバイヤーは日本全国走り回ってたよね。
 
川島: やはりバイヤーは現場に行っていたんですね。
 
安森: ひとつは、商品は早い者勝ちだから。要するに他所の売り場と類似した商品を置いても構わない。ただし、文房具が化粧品をやっちゃいけないというルールはあった。でも極端なことを言うと、メイクのバイヤーが、ヘアケアや化粧雑貨に手を出しても構わない。そのルールの中で、早く取り入れた者が勝ち。
 
川島: バイヤーさん同士ってあまり情報交換しないじゃないですか。
 
安森: うん、しない。
 
川島: もっとすればいいのにって思います。例えば、自分の取引先を違う分野の人に紹介するとか。それがあったら、お客さまにとってメリットが大きいと思うんですが。
 
安森: 思うでしょ。でも、オープンなシステムっていうのは作ってもダメなの。まずは自分たち自ら歩くというのが大前提で、違う売り場で同じ商品を見かけるっていうこともあって、そうなるとバイヤー同士で何故その商品を? ということになる。一触即発だよな。
 
川島: その場合は、どうするんですか?
 
安森: いや、俺らは関係ない。そのために商品部長がいるんだから。僕はどうも渋谷店のあそこで大喧嘩やっているみたいだぞ、ちゃんと仕切れよと部長に言うだけ。
 
川島: すごい社長ですね。
 
安森: ところで社長、なんで知ってるんですか? となる。
 
川島: 何故ですか?
 
安森: そりゃもちろん、現場の要に聞くんだよ(笑)
さっきもお話したように、組織なんて100%縦割り。企画書だって実現可能性50%くらいのレベルのを持ってくるんだから、部下だって信用できない。
 
だから、社長が「こうしなさい」と言ったことだって、実際の現場に降りてみたら「やってみたら?」くらいの話になる。そうすると、現場のそれぞれの店に何人か要みたいなのがいて、「社長、こういう風に伝わっているけれど大丈夫なの?」って言ってくれる。
 
今のロフトでは、それをやってくれていた人たちがみんな店長になっちゃったから機能してないんだよな。だから、そういう現場の情報は上には伝わってないと思う。
 
川島: でも、今の経営陣たちがまた要の人を現場に作っておけばよいのでは?
 
安森: それを作るかどうかは、トップの考え方次第だからね。
 
川島: 安森さんはそういうことが大事だと思っていたんですね。
 
安森: もちろん大事だと思っているし、好きだったからね。
 
柿木原: 要はどうやって作るんですか?
 
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安森: あのね、一番仕事の出来るヤツに頼むの。店に行ったら最初にそいつのところに行く。そして、これから店長のところに行くけれど、この店、なんか問題あるんじゃないの? と情報を聞く。あんまり情報が出てこなかったとしても、その時の言い回しとかでわかる。
 
川島: なるほどね。そこでもう察するわけですね。
 
安森: その察し方は、もう感覚とか感性の域だろうな。僕と一緒にいた専務とか常務は、店に入って社長が最初に近づいて行った人が、この店の情報の要だな、ってわかったらしいよ。でもね、そういうことをしないと、現場の雰囲気ってわからないよ。
 
川島: そうですね。現場をわかるってものすごく大事ですね。
 
安森: だって、現場しかないじゃない。小売りというのは、仕入れの現場と売る現場しかない。そして、仕入れの現場は、価値判断がはっきりしている。でも本当のことを言うと、バイヤーが変わると、取引先も変わる。それが人間関係だから。
 
それを修正していくのが、管理職の役割。毎日僕のところには売り上げとか利益のデータがあがってくるんだけど、僕はイレギュラーな情報だけを見てたんです。極端に発注量が多いとか、極端に粗利益が高いとか低いとか、あるいは極端に値下げがあったとか。毎日聞くのはそれだけ。
 
川島: 何をきっかけにそうされたんですか?
 
安森: 通常の業務は管理する人がいるんだから。イレギュラーな情報を見るとこの店がどういう環境におかれているかがわかる。さっき新宿ロフトの23億円の赤字の話をしたけれど、その年はもっとひどくて既存店舗、25億円に対して経常利益は前年7億のマイナス。
 
本当は、2年前からそのことを警告していた。どの店でも、客数が前年割れしていますよと。客数が97%くらいで、客単価は100~98%くらいだと。その異変には2年前から気が付いていたわけよ。
 
ところが新店が調子いいから、「まあ、ええやないか」と思っていて。そのイレギュラーにちゃんと対応していたら、こんな結果にならなかった。
 
川島: 兆しは既にあって、社長としても薄々気付いていらっしゃった。でも、客数だけで評価するんですね。売り上げとかを見るわけじゃない。
 
安森: だって、お客さんの支持があるかないかが、一番大事だから。自分が何を最大限努力するかというと、自分の売り場のお客さんを、どうやったら前年より一人でも多く自分の売り場へ持ってこられるかということ。
 
それが主任なり、係長なり、課長の仕事。品揃えはバイヤーの仕事、品揃えが決まったら客単価が決まるから。それを売り場の人に問うたってしょうがないでしょう。
 
川島: なるほど、ちょっと目からウロコです。では、今日はおしゃべり会なので、私たちだけじゃなくて、皆さんからも、いろいろ聞いてみていいですか?
 
安森: どうぞどうぞ、全部オープンで大丈夫です。

  
第3回▶▶ これからの時代のメーカーのありかた

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