未来のおしゃべり会

【第3回・おしゃべり会】これからの時代のメーカーのありかた

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未来のおしゃべり会
●ゲスト:安森 健さん(隠居・元 株式会社ロフト 代表取締役社長)
柿木原 政広さん(株式会社10 代表・アートディレクター)
●テーマ:みらいの小売業・みらいのデザイン
●開催日:2016年7月19日(火)

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第3回 これからの時代のメーカーのありかた
 
<質疑応答>
 
質問(男性): 少し前にアパレルに関しての報告書が経済産業省から出ていましたが、縫製工場などはバブルの頃と比べて25%くらいに下がってしまっていて、生地屋さんとかも大変苦しい状況にあります。ロフトではアパレルはやらなかった、ということですが、この数字をどういう風にご覧になられていましたか?
 
安森: 皆さんがどういう風に自分たちの立ち位置を考えていらっしゃるかわからないけれど、日本の経済全体が死んでいくことだけは間違いない。それは、就労人口が少なくなっていくこと、アパレルも含めて必要としない世代がどんどん増えていくから。そうすると、自分たちの事業の生き残りをかけて、サバイバルゲームをするしかない。
 
小売業でいえば、いかに相手を潰すかということ。私が会社に入って、百貨店の最盛期は売り上げが9兆円あったの。それが、今は6兆円ですよ。その3分の1はどこに消えたか。256店舗あったのが、今は200店舗で、56店舗しか減っていないんだけれど。要は相手のシェアをどう食うか。これは小売りの戦い。
 
メーカーの戦いというのはそうじゃないと思う。どれだけの事実を製品に転化できるか。それは、付加価値を高めるという言葉になるかもしれないけれど、安かろう良かろうという時代はもう終わっているんです。ユニクロを例にすると、本当にいい商品をあの値段でというのはすごいことだけれども、みんなが着ちゃうともう飽き飽きするわけよ。
 
だからもっと品質の高い、技術レベルの高い商品を、どうやって、自分のところの工場から作れるかということに、シフトをかけるべきだと思う。ただし、価格は今ものすごくシビア。僕は価格について、高付加価値高価格はあり得ないと思うんだよね。
 
川島: 高付加価値適正価格ということでしょうか。
 
安森: そうだね。だから、メーカーはそれをどうやって合意ができるか。
 
柿木原: ちなみにそのときに、デザインの関与というのは、どういう関わり方になってきますか?
 
安森: ひとつは、ブランドというのもデザインの大きな柱ですよね。自分でブランドを作るときにデザインは大きな役割が果たせると思う。もう一つは、視点を変えた時に、どう印象を変えていくかもデザインの力が必要なのだと思う。
 
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質問(下着メーカー勤務 女性): 先ほど、メーカーはやはり技術の勝負だとおっしゃっていましたが、まさしくそういうところを痛感しております。これからも、愛される商品を提供していきたいと思っております。
 
安森: 僕からの提案だけれどね、今、下着を見せる方向にいっているでしょう。すごく嬉しいんだけれど(笑)。でもね、本当は日常使う商品というのは、高品質低価格ってできないのかな、と思う。私のカミさんも還暦を迎えてからは、そういう下着をつけなくなった。
 
10年後には、65歳以上が今は4人に1人だけれど、3人に1人という時代が来るから、この人たちのニーズに合ったもの。僕はそこをもっと研究すれば、もっと面白いものができるような気がする。宣伝を見ていても、やっぱり若い人たちばっかりじゃない。
 
女性: おっしゃる通り、奥様の世代以上の方の要望に、どう応えていくかというのが一つの課題です。それと、私たちはどうやって若い世代に魅力を感じてもらうか、本当にたくさんのメーカーが出て来ているので。日々話し合っています。
 
川島: 下着関連とか、化粧品関連のバイヤーさんって、圧倒的に男性が多いじゃないですか。あれ、とっても不思議です。もっと女性が増えていい領域ですよね。
 
安森: そう思う。僕はむしろ、女性が多い方がいいんだろうな、と思っている。使い方がわからない人が、バイヤーとしていること自体に、メーカーも含めて問題提起しなきゃならないわけじゃん?
 
川島: 例えば、男性にマスカラのことってどのくらいわかるんだろう? って思っちゃったりするんですよね。
 
安森: キッチン用品もそうだよね。男が多い。
 
女性: でも今、女性のバイヤーが何人かいる百貨店も出てきて、だいぶ変わって来たとは思います。
 
川島: そうですか。ありがとうございます。
 
安森: 真面目に考えなきゃダメだよね。だってこれから、生産性を上げましょうって、さっき言ったみたいに就労人口が少なくなって行って、パイが小さくなっていくんだから。
 
そのときに、今まで以上にパイをキープ、現状維持、小売りでいうと個人消費250兆円をキープするためにどうしたらいいかといったら、今、家庭にいる主婦たちをどうやって働き手に移すかということなの。僕は、それしかないような気がする。
 
だからそういう意味でいうと、女性のパワーというのは、もっと必要になるにもかかわらず、ずーっと男社会。
 
だから55年体制変わるよ、と言ったのはそういうこと。いち早くそれに手を付けた西武百貨店はコケちゃったのよ。早すぎて。だから小売店もそうだけれど、各メーカーさんが考えなきゃいけないのは、働き手の働き甲斐を、どうやって与えていくか、ってことですよ。
 
そりゃ同じ企業の中に10年もいれば、仕事の仕方くらいはわかるから、大きなミスはしないわけよ。そうしたら任せりゃいいのに、依然として任せきれていないというのが、今の社会の仕組みなんです。僕はそういう風に思う。
 
何で女性の味方かというと、僕がロフトにいたときに、残ってもらいたいと思っていた男性社員の半分は百貨店に戻った。だけど、「社長、気にすることないじゃない。私たちがいるから」と言ってくれたのが、女性たちだった。だから僕は、女性の力って信頼しているわけ。
 
川島: なんか、力強い言葉を最後にいただいて。
 
安森: 本当はこういう話を聞かせたいのは、社長連中だな。
 
川島: 私もそう思いました。じゃあ、みんな社長で今度やりましょうか。おしゃべり会なので、私もひと言、言いたいこと言わせていただくと…
 
今、女性を応援、みたいなことばかり私は言っていますけれど、一方で感じるのは、女の人も例えば役員になっていいだろうと言われたときに、断る女性が多いこと。
 
だから、どちらのせいとも言えないところもあって、やらせてあげようと思って上の方が言うけれど、それを引き受けて前に進まない女性も一方でいるし。でも場が少ないこともまた事実。世界的にもこんなに遅れている国はないような気がします。
 
何が言いたいかというと、チャンスがあったらちょっとやってみよう、というのもいいかなと思っていて。だから、私も役員を引き受けました。なぜ引き受けたかというと、こんなヘンテコリンな役員が世の中に一人くらいいても、それを見て笑ってくれる女性の方たちがいたらいいかな、と思ったからなんです。
 
安森: 私が筑波店の店長をやった時に、堤会長が歓迎してくれたの。なんで歓迎したかと言うと、「ああ、ハシボウから店長になる時代か」と言って。
 
川島: ハシボウって何ですか?
 
安森: 聞いた話だと、僕が入社した42年は堤会長が「去年は優秀なヤツばかりとった。今年は成績優秀なやつから3分の1取りなさい。一芸に秀でたヤツから3分の1取りなさい。箸にも棒にも掛からぬヤツから3分の1取りなさい」と言ったんだそうです。その中で最初に店長になって、堤会長のところに挨拶に行ったのが、なんと「ハシボウ」の僕で。
 
川島: でも、今はハシボウが重要な時代なのかもしれませんね。
 
ケータリング

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川島所長のひとこと
 
安森さんとのご縁は、未来研の参謀である柿木原さんの紹介から。穏やかでありながらズバリと言い切るお話ぶり、やわらかい笑顔の合間にのぞく厳しい眼差し――新しいことを切り拓いてきた方ならではの豪胆さと繊細さ、度量の大きさと厳しさが同居している方と、のっけから惹き込まれてしまいました。
 
おしゃべり会は、その安森さんの楽しい話が豊かに広がっていって、柿木原さんと私は聞き手役に――小売の未来に留まらず、仕事の仕方、働き方にまで及ぶ幅広いお話は、“隠居”とご本人が付した肩書の通り、経験に裏付けられた本音が次々と。
笑いに充ちたお話に花が咲きました。
 
ifs未来研究所 所長 川島蓉子
 
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