未来のおしゃべり会

【3月24日 おしゃべり会・第3回】失敗を恐れない心は、40歳を超えたときに芽生えた。

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未来のおしゃべり会 ―ビジネスには、カッコいい感性が必要だ。
●ゲスト:孫 泰蔵さん(Mistletoe株式会社 代表取締役社長兼CEO)
●テーマ:未来の働きかた~社長はいらなくなる!?
●開催日:2017年3月24日(金)

 
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第3回:失敗を恐れない心は、40歳を超えたときに芽生えた。
 
川島: 最後に聞いておきたいことがあります。失敗を評価するというところが引っかかっているのですが、失敗をいっぱいいっぱいして、ずっと失敗していたらどうするんですか。
 
孫: いいんじゃないですか、ずっと失敗していても。
 
川島: 成功しなくてもいいんですか?
 
孫: 成功の定義って何なんだという話ですよね、結局は。
 
川島: それこそ、失敗の定義って何なんですかと聞きたいです(笑)。
 
孫: 僕は、失敗や成功の定義は分かりません。やりたいと思ってチャレンジしていれば、それ以上に何か必要なのかと。何かをやりたいって思ったときに、失敗するかもしれないからやらないっていうレベルで選んでいるのかと。
 
僕なんて、街を作りたいという途方もないことをやりたいって思っているんですよ。途方もないのは自分でもわかっていますが、でもやりたいと思っているからやる。
 
自分が生きている間に実現しなくても、その思いが良ければ誰かが受け継いでくれるかもしれないし、自分が生きている間に失敗して実現しなくても、それに向かってやっていることに自分自身では意義を見出しています。
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川島: 孫さんは若いころからそういう風にやりたいことをやり続けて来られたのですか?
 
孫: いえ、違いました。40歳になるくらいまでは、自分のやりたいことは抑えていて、確実に利益の出る技術モデルを組み立てるようなことをやっていました。でも、40歳になったときに、もう良かろうと思って(笑)。
 
川島: 何かきっかけはあったんですか?
 
孫: 気が付いたら、朝から晩まで会議ばっかりだったんですよ。経営会議、戦略会議、事業連絡会、進捗報告会。俺は会議やるために仕事始めたんじゃねえぞと、あるとき思いまして。もう止めようと思って、役職から降りていったんですね。
 
それはよかったんですが、次に何がやりたいかが分からなくて、遅れてきた第二思春期みたいにかなり悶々としたんです。結果、儲かる儲からないとか、責任が取れる取れないという尺度ではなく、自分がやりたいことをやるしかないと決めて。
 
今45歳なんですが、それから5年くらいかけてやっとやりたいことが見えてきたところです。ですから、今偉そうにお話したことは、実際はまだできてなくて、これからやろうとしていることなんです。
 
川島: 途上ではあるけれども、向かう方向は思春期を脱したということですね。
私ばかり特権を奪って、孫さんにいろいろと聞いてしまっていますので、この辺りでみなさんの質問を受けてみたいと思います。
  
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<質疑応答>
質問1: 孫さんにお伺いしたいのですが、仕事への愛着についてお聞かせ頂きたいです。仕事への愛着、愛情という点で思い入れがあれば。
 
孫: 仕事って何だろう、というのがありますよね。先日、ショッキングなことがありました。専業主婦の方に、お仕事は何をされているんですかと聞いたら、特に何もやっていません、とおっしゃっていたんです。そんな訳ありませんよね。
専業主婦って、家事って大変な仕事です。だけど、その方はお金を稼ぐ仕事をしていないということで、無職と表現された。それはとてもいかんと思いましてね。大事な仕事にお金は関係ありません。
 
川島: どの仕事にも愛着を持っていらっしゃるのでしょうか。
 
孫: 愛着がないことは、やらないようにしています。そう言うと、そんなこと言ったってやらなきゃいけないことがあると言う方が多いと思います。でも、徹底的に考えてください。本当にやらなきゃいけないのかと。
 
しかも、自分がやらなきゃいけないのか、誰か他の人もやらなきゃいけないのか。プロジェクトの途中で、チームのモチベーションが失速するときがあると思うんですが、それは愛着が持てなくなった状態なんだと思うんですよね。
 
そのときは、このプロジェクトは本当に寝食を忘れる程にやりたいものなの? 無理するくらいだったらやめたら?と言います。それは、社長としてではなくて、外部の人間として、やめる決断を後押しします。
 
皆が愛着のあることしかやらないようにすれば、日本はもっとハッピーになれるんじゃないかと思います。
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質問2: いくら孫さんであっても、新しいことに取り組む際、経験はゼロからだと思うんですが、実際にプロジェクトが形になるまでのプロセスの中で、もし勝ちパターンみたいなものがあれば、お話を聞きたいです。
 
孫: パターン認識というのは、人工知能が最も得意とするところです。いわゆるロジックです。今は、第3次AIブームらしいんですが、第2次までと何が違うのかと言うと、ディープラーニング。
 
ロジックがない、アルゴリズムが組めないタイプのパターン認識ができるという人工知能が出てきているので、衝撃を受けています。しかし、いずれにせよ究極的に言えばパターン認識です。
 
それはいずれAIにとって代わられる可能性の高い部分です。逆に言うと、僕が今やっていることは、AIにできないこと、さらには僕にしかできない仕事だと思っています。他の人でもできることは他の人がやった方が良い、そう考えて仕事を選んでいる。それは、パターンはないんです。
 
質問の答えになりますが、成功の方程式みたいなのは、ありません。強いて言うなら、ひたすらやってみて、やっぱり諦めないことくらいしか共通項として言えることがない。ダメかどうか決めないで、みんなにダメと言われて、みんなにやり尽くしたよと言われても、自分が納得したいからやってみる。
 
そのプロセスの中、途中過程で出会う人とか、辛かったことや面白かったこと。成果は出ていなくとも、それらがその人の中の引き出しみたいになって溜まっていって、自分たちなりのユニークなやり方みたいなのが出てくるのではないかと思います。
 
川島: さっきは失敗や成功という基準はないというお話だったので、失敗と聞けないんですが、孫さんご自身がひたすらやってみて、やっぱり役に立つことがあったという具体的な何か、一つエピソードを教えていただけると。
 
孫: あまりそういうことを意識していない。失敗という概念はなくて、でも明らかに上手くいかない、お金がなくなったから続けられなくて一時中断することはありました。時間が経ってそれを再開して、経済的な意味で言うと成功した、黒字になったというのはいっぱいある。
 
今自分がやっている黒字になっている事業は全部そのパターンだと思います。一時中断して、3年、5年経ったとか。何年越しというのばかりです。
 
川島: 一時中断して、本当にダメになったのもあるんですか。
 
孫: 山のように(笑)。うまくいったケースの何十倍もあります。
 
質問3: 孫さんのような方でもいいですし、もしくはトークの中で出てきた4Cのような素養を持った人を育てていくとしたら、どういうことが必要になってくるのだと思われますか? または御社の中で、それを念頭に置いて実際にやっているプロジェクトがあったら教えてください。
 
孫: きっと、いろんな方法があると思うんですけど、今は「環境デザイン」をキーワードにしています。トレーニングプログラムやカリキュラムのようなものは一切ありませんが、クリエイティビティを育む環境をどう作れるかは常に意識しています。
 
昔、「スタートアップ支援プログラム」という、起業した人たちのアイデアを持ち込んでもらって、事業計画は見ずに本人の人物とアイデアだけを見て、面白いと思ったら500万円をその場で決めて出すという企画をやっていました。
 
最初の頃は、起業家のたまごのような人たちをトレーニングしようと思い、先輩起業家を呼んできて、創業の時の失敗談や成功談、ティップスやノウハウを話してもらう。それを、毎週水曜日の夕方5時から無償で行いました。
それから、「デモデー」を開催し、投資家を集めて、一人5分ずつのスピーチをしてもらい、札を上げたところをマッチングするということもやっていました。
 
後になって、参加者に何が一番役に立ったかと聞いたら、先輩起業家の話の後のピザパーティだと言われて(笑)。そのパーティの場が一番リラックスしているし、活発な意見交換ができる場になっていたんです。
 
出資しているスタートアップの人達には、毎回必ず来るように言っていたので、顔を合わせるうちに、いつの間にかそこに集める起業家同士が仲良くなっていました。僕らは何も教えていませんが、その会をやっていただけで、全員のレベルがめきめき上がってきました。
 
川島: さっきのお話にもあった、ミートアップですね。
 
孫: まさに、そうです。同じ苦労をしている仲間だから、共感、同情できて、お互い心から支え合うような環境が作れました。そうやって環境ができると、みんな勝手に学び合って、高め合っていったんです。このような環境をデザインすることを、色々なところに応用していくといいと思っています。
 
営業の人たちの提案力を上げたいとか、デザイナーのクリエイティビティや技術力を上げたいとか、もっと研究開発をやっていくようにしたいとかあるとするならば、そういうのに相応しい環境をどうやって作ったらいいかな、という風に考えるといいと思います。
 
川島: 孫さん、ありがとうございました。
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川島所長のひとこと
 
孫さんとの出会いは、知り合いのジャーナリストである林信行さんからの紹介でした。アグレッシブな活動をなさっている方だから、おしゃれに興味がなくて、マッチョな方なんだろうと勝手に想像していたのですが、見事に裏切られました。とてもチャーミングで、さりげなくおしゃれに気を使っていて――何よりお話の内容がわかりやすいのです。
 
AIが進化する中、人はどう生きていくのか、どう働いていくのかについては、暗い未来が語られがちですが、孫さんは、そこに希望や明るさを作っていくことを考えています。だから気持ちが元気になってくる。今回のおしゃべり会もそんな場になりました。
 
ifs未来研究所 所長 川島蓉子
 
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