未来のおしゃべり会

【10月17日 おしゃべり会レポート・第3回】新しい関係性を見つけ、繋いでいく

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未来のおしゃべり会 ~暮らしにまつわるデザインの話~
●日時:2017年10月17日(火)18:00~20:00
●ゲスト:佐藤卓さん(佐藤卓デザイン事務所 グラフィックデザイナー)

第1回記事はこちらから
第2回記事はこちらから
 
★ ★ ★
 
第3回: 新しい関係性を見つけ、繋いでいく
 
佐藤: きっと、経験をすることで頭の中に「点」ができるようなもので、歳を重ねるにつれて、どんどん「点」でいっぱいになる。そうすると、点と点が結ばれやすくなって、物事を多様な関係性で考えられるようになる。「こっちに行ける」、「こっちにも行ける」、「これとこれを繋いだら、今まで誰もやったことがないことができるかもしれない」、と。
 
川島: それがどんどん面白くなっていくということに、いつ頃気が付いたんですか? 今、卓さんがお話してくれた、「点」の比喩はとてもわかりやすかったです。
 
佐藤: 「この関係性は、まだ誰も繋いだことがないかも」なんて思ったら、面白くて。「新しいことをやる」んじゃなくて、「新しい関係性を見つける」んです。
 
川島: それは、他の人が見つけていない可能性が高いから、ワクワクするんですよね。
 
佐藤: ワクワクする。だから、1つ1つの「点」は、新しくもなんともない。だけど、繋いだことがない。そういう風に考えると、歳を取るのも悪くないな、と思うんです。自分でもわからないんですが、面白いと思っちゃうんですよね。
 
川島: なんでも?
 
佐藤: 面白くない物事が、何ひとつない。だって、すべてに関して素人だから。例えば、水の展覧会を開こうと思っても、実は水のことを何を知らなかったということに気が付けるんです。
 
川島: なるほど。
 
佐藤: そうすると、いろんなことがわかってきて、「水って面白いな」って。きっと、すべての物事は、入っていくと面白いと思う。
 
川島: それは、デザインに限らず、仕事も暮らしもということですか?
 
佐藤: すべて。それをテーマに展覧会をやったらどうだろうな?と。
 
川島: 11月から、卓さんがディレクターを務める展覧会が始まりますよね。
 
佐藤: はい。銀座にあるポーラ ミュージアム アネックスで、『「ケの美」展』という展覧会を、2017年11月17日(金)から12月24日(日)に開催します。
 
今回の展覧会は、オルビス株式会社の30周年を記念したものなのですが、日常をテーマに商品を送り出している会社であるということと、「ケの美」という音の面白さから、タイトルを決めました。
 
川島: ここでは、どのような展示を見ることができるんですか?
 
佐藤: ジャンルを超えた、14名の作家の方に集まって頂き、ご自身の考える「ケの美」について、文章を添えて作品を展示してもらいました。参加作家のみなさんの日用品を収めた写真も、写真家の広川泰士さんに撮り下ろしてもらったものです。
 
日本人の伝統的な世界観である「ハレ」と「ケ」という概念は江戸時代からあったけれど、対の概念として提唱をしたのは、民俗学者である柳田國男です。「晴れ着」というように、「ハレ」は非日常、「ケ」は日常を差し、「ハレ」と「ケ」がはっきり分かれていた。
 
一方、現代社会では、一人の人が一日の中で、「ハレ」の時間も「ケ」の時間も過ごしたりと、境界線がよくわからなくなっています。華やかな「ハレ」ばかりが注目されがちだけど、「ケ」を、ちょっと考えてみるきっかけになればと、この展覧会の開催を決めました。
 
「ケ」が充実すると、特別で有り難い「ハレ」が更に素敵な時間になると思うんです。そして、「ケ」というあたりまえの中にある美は、人によって全然違っていて、それがまた面白いんです。
 
川島: 確かに、そうかもしれない。
 
佐藤: 『「ケの美」展』では、『みんなのケ』という、参加型展示もあります。「朝食」、「場所」、「漢字」という3つのテーマで、ご自分が「日常」だと思う写真を撮影して、特設サイトから投稿してもらう、という形式です。みなさんの投稿写真で、『みんなのケ』が構成されるので、ぜひご参加ください。
 
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縄文時代の人たちは、生き延びる術を知っていた?
 
川島: 最後の質問をさせてください。世の中、景気は決して良くない。特に大量生産・大量消費の時代が終わったことは、みんななんとなく分かっているけれど、その歯車はまだ変わることができない感じがします。
 
その中で、企業の人は一生懸命やっているけれど、成果が見えない。時代が変わる予感はあるけれど、どう変えればいいのかわからない。どうしたらいいんだろう?、と思っている人が、たくさんいると思うんです。卓さんは、どう考えていますか?
 
佐藤: 一番の大きな問題は、いつの間にか、経済が生きる指標として最優先されてきてしまったこと。私も、大量生産のデザインにも関わっているし、否定している訳ではありませんが、経済と文化は、常に両輪で進んでいく必要があります。
 
だから、企業にしても、「良い状態」をどういう風にイメージするのか。右肩上がりで延々と行くということは、宇宙の摂理としてあり得ないわけです。本当はみんなわかっているはずなのに、そこには触れずに右肩上がりを目指す、というビジョンを変えないといけない。
 
川島: どう変えるんですか?
 
佐藤: 例えば、あるところを維持することとか。もちろん、資本主義社会では難しいこともわかっています。でも、「企業にとって、良い状態を保つ」ということがどういうことなのか、各企業が考えていかないといけない。それには、様々な方法があると思うけれど、とにかく右肩上がりを目指すというビジョンには、限界が来ちゃうと思います。
 
川島: 先ほど、「経済と文化」と言っていましたが、企業の文化というのはどういうものですか?
 
佐藤: 基本的に、企業には文化的な側面があるんですよね。どんな会社にも。
 
川島: どういうことですか?
 
佐藤: 生活を豊かにしてくれる。モノを提供してくれる。それがとても体にいいとか、美味しいとか。それによって、人々の生きるモチベーションを上げてくれたり、そういう側面もあります。
 
川島: それも文化ですよね。
 
佐藤: そう。実は、文化の側面が無いってあり得ない。だけど、経済的な側面ばかりが優先されてしまって、文化があまり重要視されてこなかった。つまり、「豊かさとは何か」ということだと思うんですが、その観点で、縄文時代に興味があります。
 
川島: なんで、縄文時代なんですか?
 
佐藤: 面白いんですよ。縄文時代は、1万年以上続いたんです。縄文時代を専門とする考古学者の、小林達雄さんと仲良くさせて頂いて、縄文時代の勉強をしているんですが、世界の歴史の中で、縄文時代はちょっと前までまるで劣等生扱いだったそうです。「1万年、進化もせずに何やってたんだよ」って。
 
でも、今や「縄文時代を生きた人々は、生き延びる術を知っていたんじゃないか」と、世界中の人類学者が、日本の縄文時代に強い興味を抱いているようです。
 
川島: 持続できた、ということでね。
 
佐藤: 縄文時代には、1万年以上もの間、実は持続可能な社会が営まれていた。デザインという視点で見ても、炎が燃え盛るような形状をした、火焔型土器は面白いです。
 
世界の器の歴史の中で、不安定で使いにくいデザインに進化した器って、縄文土器しかないんです。使いやすく、持ちやすくというのは、モダンデザインの考え方。ところが、縄文時代の器は、モダンデザインとは違う概念で進化を遂げた歴史があって、とても興味深い。
 
川島: 卓さんの目がキラキラしてる(笑)。
 
佐藤: 縄文時代が終わりを迎えた紀元前4世紀頃から西暦2017年まで、約2300年しか経っていない。縄文土器や土偶も、ものすごい創造力と造形力で、きっとみんな楽しかったんだと思います。縄文時代の話を始めると、本当に止まらなくなっちゃう(笑)。
 
川島: これは「おしゃべり会」なので、みなさんにも卓さんとおしゃべりして頂きたいと思います。質問のある方、いらっしゃいますか?
 
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質疑応答
A: 「働き方改革」が叫ばれ、効率を上げて、勤務時間を短縮することが求められていますが、それによって、デザインはどう変わっていくとお考えですか?
 
佐藤: クリエイティブの世界って、時間を掛けてやりたい人もいるんですよ。私のように、アイデアを考えているのが面白くてしょうがないという人もいるし、必ずしも業務時間内にアイデアが出るわけでもない。もちろん、心身に問題が起きないように配慮する必要はあるけれど、やりたい人の想いを理解してほしいと、クリエイターとして思います。
 
あとは、若いときに基礎をどれだけ身につけるかも重要。私も、ある意味では、“やらされ”ていたんだけど、コンピューターがない時代には、ピンセットで文字を置いたり、0.1㎜の点や丸を移動させて、貼り付けるという作業を、何日も何日もずっとやり続けた。確かに大変だったけれど、そのスキルは今でも活きていて、ものすごく感謝しています。
 
辛くても、やるべきときにはやったほうがいいことってあるんです。そういうことに対する理解が無くなりつつあることが悲しい。クリエイティブの世界を、もうちょっと社会にわかってもらいたいし、我々も言っていかないといけない。
 
川島: そうですね。クリエイティブという世界が、別物だと思われないようにしていかないと。デザインに限らず、仕事もアイデアですから。
 
佐藤: アイデアの無い世界なんて無い。創造性の無い世界なんて、あり得ないですよ。「今日、何を食べよう」と考えることだって、アイデアだし。
 
川島: そりゃそうだ。すべてがデザインを呼んでいくわけですからね。
 
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B: 自我の強い人との関わり方やバランスについて、どのように捉えていらっしゃいますか?
 
佐藤: 小さい頃から、強い人と戦う気は無くて、どんどんお譲りしてきたように思います。そうしていると、確かに「自分のやりたいことが、何も言えないなあ」と思ったこともあって、ちょっと悩んだりもしました。「自分の考えたことを誰にも言えずに、仕事をしていかないといけないのかな」、「自分の性格に、問題があるのかも」、と。
 
でも、やっぱり自分を変えることはできなくて、強い方がいるならお手伝いをさせて頂いたりしながら、「受け入れながら、自分の中で噛み砕いてお返ししていく」というスタンスでいます。
自分の意見を押すのではなくて、まずはお聞きして、それが良ければ活かすことに徹するし、もしチャンスがあれば、自分の意見も言ってみようかな、と。とはいえ、特に20代後半頃、ちょっと悩んだ時期もありました。
 
川島:  20代後半?
 
佐藤: 本当にそれでいいのかな、って。例えば、美術大学には自己表現をしたい人たちが集まっているので、みんな自我が強い。「これが俺の作品だ!」ってできない自分に、コンプレックスを感じたりもしました。何をやっても続かないし、ダメなんじゃないかって。
 
川島: 卓さんがそう思っていたなんて、意外。
 
佐藤: でも、「もしかしたら、デザインができるかもしれないな」と、その道に行ってみたら、「あれ? もしかしたら、音楽よりもこっちの方が向いてるかな?」という風に思えて。
 
みんな、それぞれの生き方があると思うので、自我が強いとか弱い人がダメということではなく、「こういう生き方でも生きていける」、「それでもいいんじゃない?」ということを、本に書きました。少しでも、お力になれれば。
 
川島: 今、悩みはないんですか? 卓さんは悩みなんてないだろう、と思うんですが。
 
佐藤: いやもう、難しいことだらけで。「ええ?」って思うようなやったことがないことや、「どうしたらいいのか、全くわからない」というのが、一番の喜び。つまり、「悩み」が喜び(笑)。
「こうするとできるな」と思うことはもうつまらなくて、やってみないとわからないことが面白いです。
 
川島: ワクワクしますよね。
 
佐藤: 仕事は、やる前に組み立てて、その通りに進めないと許されない。でも、実は物事って、やってみないとわからないんですよね。やっている途中に気付くこともあるし、それがもっといいことだったら、本当はそちらに方向転換できるような世の中になるべきだと思います。
 
川島: そういう、ちょっといい知恵を活かすというのはありますよね。
 
佐藤: ありますよね。「なんか、こっちの方がいいんじゃないか」って。こういう言い方をすると怒られるかもしれないけれど、女性の方が感覚的だと思います。女性は、「でも、私ヤダもーん」とか言えそうだけれど、男はなかなか言えないんですよ(笑)。
 
川島: なんでですか?
 
佐藤: それはたぶん、脳の構造とかね。なぜか、男は結論をすぐ求める。そう思うと、女性と男性は違う思考を持っているので、お互いに争ってもしょうがないと思える。
 
川島: そもそも、こだわるところが違うし。
 
佐藤: 今、女性が元気で強いと言われているのは、感覚的な世の中になってきていて、感覚的な良さが活かされる時代になりつつあるからだと思います。それは、男性もちょっと考えなきゃいけない。
 
川島: ホントですね。みんなが、もっと感覚を働かせていいんですよね。
 
佐藤: もちろん。それをどうやって組み立てるかというのは、どちらかというと男子が得意かもしれないのでね、男子の能力もぜひ生かして頂きたいと。
仕事をどう組み立てるかということは、どちらかというと男性が得意かもしれないし。これからの男性も、ぜひよろしくお願いします(笑)。
 
川島: 楽しい話は尽きないのですが、おしゃべりは一段落したいと思います。卓さん、楽しいお話をありがとうございました。
 
<終わり>
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